裁判記録廃棄問題で、頭を下げる最高裁の小野寺真也総務局長(右)ら=25日午後、東京都千代田区 「歴史的に重要な資料という意識が薄かった」。裁判記録の廃棄について、現職の判事からは裁判所全体としての問題点を自省する声が相次いでいる。
あるベテラン判事は、裁判と記録保存の部署が分かれていて情報共有が難しいとした上で、「裁判の終結とともに『終わった事件』と見なされ、記録の保存にまで気が回っていなかったのではないか」と分析。「組織として大切な記録を扱っているという意識がなかった」と話す。
記録廃棄が判明した当初、事件の被害者遺族は経緯についての調査を求めたが、最高裁は調査しない方針を表明。その後、外部の有識者から調査の必要性を指摘され、当時の家裁職員らへの聞き取りを行った。
こうした点について、同判事は「遺族には最初から真摯(しんし)に対応すべきだった。全てが後手に回ってしまった」と反省を口にした。
別の判事は「廃棄されたのは、裁判記録というだけでなく歴史的に重要な資料だった」と悔やむ一方、「記録はプライバシーの塊で、多くは廃棄が必要なため保存の意識を持ちづらい」と明かす。
裁判所では裁判官の独立を重視するあまり、組織としての意識醸成が難しいとも説明。「特別保存のルールがあったのに、機能していなかった。組織力のなさが記録廃棄につながった」と述べた。