「素振り」は腰を痛める? 守りたい子どもの「腰」

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2023年05月31日 18:20  ベースボールキング

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少年野球の現場を取材していると、子どもの肘、肩に対する指導者のケア意識が一昔前よりも高まっているように感じます。とても良い傾向だと思いますが、肘、肩だけでなく腰にも注意がです。骨や筋力の弱い小学生は腰を痛めやすく、小学生時代に腰を痛めると高校、大学などで悪化する可能性もあります。ではどんなことに注意することが必要でしょうか? 東京経済大学 全学共通教育センター 特任講師の押川智貴先生にお話を聞きました。



【素振りは子どもの腰に悪い?】
一昔前までは、グラウンドに行くと監督に掌を見られ、家で素振りをしているかチェックされるのは当たり前の光景でした。ですが、最近では素振りを禁止にしているチームも多くなってきました。指導者に理由を尋ねると「素振りは子どもの腰に悪い」「腰椎分離症に繋がるから」という答えが返ってきます。
素振りは子どもの腰に悪いのでしょうか?

「小学生時代から素振りが積極的に実施すべき練習であると考えることはちょっと問題だと思います。毎日素振りをやり続けることによって、いずれそれが腰痛を引き起こす原因になる、個人的にはそう思います」

そう話してくれたのは東京経済大学 全学共通教育センター 特任講師の押川智貴先生。

一言で「腰痛」と言っても、腰痛にも様々なものがあり、野球選手がなりやすい腰痛は以下の3つなのだそうです。
…粘峇慇瓩原因の腰痛(重症化すると腰椎分離症)
椎間板が原因の腰痛(重症化すると腰椎椎間板ヘルニア)
6敍が原因の腰痛

「腰椎分離症」という言葉を耳にしたことがある方も多いかもしれませんが、どんな怪我なのでしょうか?
これは簡単に言えば背骨の疲労骨折です。この「腰椎分離症」になると一定期間の強い腰痛に悩まされるだけでなく、放置して完治させないと椎間板への負担が高まりやすくなり、椎間板が後ろに飛び出す「椎間板ヘルニア」になる場合もあります。椎間板ヘルニアになると、神経を圧迫し、痺れや鈍痛、急に動いたときに鋭い痛みがあり、日常生活もままならず、野球を続けるどころではなくなってしまいます。また、腰椎が滑るように前にずれて、神経が圧迫されやすくなることで、慢性的な痺れや鈍痛に悩まされ続けることもあります。

「野球の動きの中で、特に腰に良くないのはピッチングとバッティングです。骨が弱い小学生にそれらの過度な反復練習をさせることが、腰を痛める一番の原因になってきます」

押川先生もこう警鐘を鳴らします。
なかでも「腰をまわせ!」という指導が一番の問題なのだと押川先生は言います。

「腰は構造上回りにくく、ひねることで負担が高まります。ですので『腰を回せ』という指示は、腰痛を誘発させます」
子どもは大人に「腰を回せ」と言われると、本来回らない、ひねれない腰を一生懸命に回そう、ひねろうとします。それが腰を痛める原因の一つなのだそうです。

素振りに関しては、「毎日100回振る」など、数多く振ることを目標、日課にしている子は特に注意が必要です。

「素振りもたとえば10回だったら振った後にしっかりと止まれると思いますが、数が多くなると、疲労からバットを振った後にしっかり止まることができず、フォロースルーの後にそのまま振りっぱなしになってしまいます。そうなると『回らない腰』に大きな負担をかけてしまいます」

ピッチャーは下半身に疲れが溜まってくると、それでも強いボールを投げようとして無理に腕を振ろうとすることでフォームのバランスが崩れます。それが肘や肩に負担をかけることになり怪我に繋がります。バッティングの腰も同じということですね。


【素振りをするより「何か」を打つ】
「素振りはダメだけど、シャトルやスポンジボールを打つことはOK」

そんな話を聞くこともありますが、正確に言えば、素振りとボールよりも大幅に軽いモノを打つスイングで全く同じスイングをした際に、腰への負担に大きな差があるとは言い切れないそうです。

「でも、素振りでは『振る切る』ことに意識がいきがちだった子が、ボールやシャトルをインパクトして打球がどう飛んだか分かるような練習にしてあげることで、インパクトに意識がいくようになり、フォロースルーをそこまで気にしなくなります。それが結果的に腰への負担を軽減することに繋がる可能性はあります。
また、闇雲に振る素振りよりも何かを打つ練習のほうが、どう振ったらどう飛んでいくというのが分かるため、子ども達も楽しいですよね。その二つのことから『素振りよりも何かを打った方が良い』というのは、間違いではないと言えます」

ちなみに、素振りよりもタイや叩きの方がフォロースルーで腰が回り過ぎないために「腰への負担軽減」という意味では更に望ましいそうです。

小学生年代においては、ピッチングもバッティングも、過度な量をやらせると体の色んな部分に負担が出てきます。何事も「適度な量」というものを考えることが大事になってきます。

「成長のスピードも体力も子どもによって差がありますから、一律に同じ量の練習を課すのは危険です。子どもによっては、バッティングにしろピッチングにしろ途中でフォームが変わってくる、崩れてくる子も出てくると思います。それを指導者の方はしっかり見てあげて、子どもの出すサインに敏感になって欲しいと思います。この子、ちょっとフォームが変わってきたなと思ったら、そこで止めるようにしてあげてください」


【成長期に無理は禁物! 急がば回れ】
子どもがちょっとでも「腰が痛い」と訴えてきたら、慎重に見てあげなければいけません。
痛みがある間は、病院での受診はもちろんですが、チームに相談して練習を休ませる、軽めのメニューにしてもらうなどしてもらいましょう。

「主力選手に休まれては困る!」
「大事な大会なのだから休まれるのは困る!」

そういう指導者、保護者もいるかもしれません。しかし、そういった人達は、その子が将来、野球ができなくなってしまっても何の責任もとってくれません。
勇気を持って休むこと、休ませることも必要です。

「選手の実名は出せないのですが」と断ったうえで、押川先生はこんな話をしてくれました。

「高校生の頃に腰椎分離症になってしまい、完治させるために1年近くの期間を費やした選手が、結果として第一線で活躍しているという例を複数聞いています。前述した通り、腰椎分離症を完治させないと、その後の人生で他の腰痛に悩まされる可能性もありますので、選手の将来を見据える場合には完治させるべきだと思います。」

腰が痛くなったタイミングできちんと治療をしたこと。目先のことだけにとらわれず自分の将来を考えることができたこと。チームに理解があったこと。それにより、才能を大きく開花させることができたという好例といえるのではないでしょうか。

果たして、体に痛みがある小学生に無理をさせる必要があるでしょうか?
将来は強豪校に進学したい、甲子園に出たい、プロ野球選手になりたい。
そう思うのであればあるほど、成長期に無理をさせないことが大事です。
急がば回れです。(取材:永松欣也)

押川智貴プロフィール
高校まで選手として、大学時代は学生トレーナーとして野球に携わる。学士・修士・博士(スポーツ科学)の学位を早稲田大学にて取得し、早稲田大学スポーツ科学学術院 助教を経て現職。主な研究テーマは腰痛予防で、野球選手に起こる怪我を予防するための身体機能を解明する研究を行っている。

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  • 体に悪いのであればそれを禁止するのは、子どもや選手にとってはよい傾向だと言えようexclamation ��2うさぎ跳びとかもダメだよねexclamation ��2聞いたところ、力士の体もガタガタらしいexclamation ��2精神主義は身も心も滅ぼすexclamation ��2
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