元南極シェフが伝授!「1年に1回しか買い物に行けない」からこそ身についた《究極の使い切りワザ》

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2023年06月03日 13:00  週刊女性PRIME

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昭和基地の調理隊員を務めていたころの渡貫淳子さん

「1年に1回しか買い物に行けない場所」

 笑顔で南極の印象を教えてくれたのは、'15年12月から約1年2か月の間、南極にある「昭和基地」の調理隊員を、民間の女性として初めて務めた渡貫淳子さん。

食品ロスゼロへ。極地で学んだ“すべきこと”

 年間約612万トンのフードロスを出し、必要量以上の食があふれている日本とはかけ離れた環境での調理経験は、食に対する考えを大きく変える契機になったと振り返る。

「調理隊員としての最初の仕事は、任期期間に隊員30人が食べる食料の事前発注でした。現地に持っていけるのは、この時の発注分のみ。

 もちろん途中の買い足しは不可能です。用意した食材が任期終了まで足りるか不安になり、少しの食材も無駄にしないという意識が高まりました」(渡貫さん、以下同)

 また、南極では、基本的にゴミは帰国時に持ち帰るというルールがあるため、食材や調理の際の生ゴミが出ない工夫を心がけた。

「キャベツの芯、玉ねぎの茎など野菜の硬い部分も残さずいただきましたし、料理が余ったら別の料理に変化させて、煮汁まですべて使い切るように徹底しました。

 最初は無駄やゴミをなくす目的でしたが、リメイク料理だからこそ出会えた味に感動することも多かったです」

 帰国後も、毎日の暮らしで食品ロスをなくす調理を実践。「この煮汁で〇〇を作ってみようかな」など、すべて食べ切る方法を考えるのも楽しみになっていると話す。

4年前の缶詰も食べて平気なことに驚いた!

 また、食材を使う時だけでなく、買い物や保存の段階から、食品ロスについて考えている。

「消費期限や賞味期限内にきちんと食べ切るために、自分が管理できる量、食べ切れる量を把握して買うことがフードロスをなくす第一歩だと思います」

 一方で、もし賞味期限が切れたとしても“早めに食べれば大丈夫”という寛容な気持ちで過ごすことも大切。

「南極に保管されている缶詰などは、基本的に賞味期限切れ。13年前の缶詰が見つかったこともありました。4年ほど前のものだと“新しい!”と隊員同士で言い合ったり(笑)。

 缶詰は、中の液体が濁っておらず、変なニオイがなければ大丈夫という判断で食べていたので、あまり期限にとらわれなくなりました」

 今は、スーパーの見切り品コーナーを上手に活用し、無理しない範囲で“まだ食べられるのに捨てられてしまうもの”を減らす暮らしを心がけている。

「きちんと食べ切ることは、環境への配慮だけでなく、買ったもののパフォーマンスを最大に活かすという点で節約にもつながると思います!」

南極で得た知恵と工夫が生きる食材使い切りのワザ7

 買い足しができない南極の生活。わずかな食材も無駄にせず、徹底的に食材を使い倒す工夫を重ねてきた渡貫さん。

「“これ何に使えるかな”と考えて、余すことなく食べ切れたら、すごく楽しい。実験のようにいろいろ試してみて」(渡貫さん、以下同)

ワザ1:「今日は買い物しない」と決めて夕飯を作る

 新たに食材を買いに行く前に、冷蔵庫内の食材で、何か一品できないかを考えて献立のメモを。

「メニューが思いつかないときは、ネットで使いたい食材を入力してレシピ検索すると、在庫を消費しやすいです。“今日は買い物はしない”と覚悟を決めて、冷蔵庫の中身を一掃する日をつくると、意外に使える食材が出てきます(笑)

ワザ2:賞味期限は大きく書き記しておく

 たとえ賞味期限が切れた食品もニオイや色の変化がなければ食べるには支障がないということを南極で十分に経験してきた渡貫さん。

「とはいえ、賞味期限前に使うのが一番。特に乾物など賞味期限が長いために見逃しがちなものは、パッと見てわかるよう、袋の表面にペンで記入しています」

ワザ3:スーパーで見切り品からチェックする

「自分が1つ使って、廃棄を1つ減らしたい」という思いから、スーパーに行くと最初に向かうのは“見切り品コーナー”。

「恥ずかしいなと思う人もいるかもしれませんが、食品ロスを減らすための大事な行動だと思います。献立が決まらない時は、見切り品を起点にメニューを考えるのもおすすめです」

ワザ4:肉を冷凍するときは、必ず用途を書く

「“いつか使う”“とりあえず冷凍”と思って漠然と保存したものは、出番なく冷凍庫の底に埋もれてしまいがち。食材を冷凍するときは、必ず使い道を決めて記入することで、意識的に使えるようになります」

 “豚汁用”“○○と煮る”など、具体的に書いておけば、献立を考えるときも役に立つ。

ワザ5:具だけでなく“液体”までも使い倒す

 市販の漬物などに入っている“味つきの液体”も捨てるのはもったいない!

「例えば白菜漬けの液体は、スープを作るときに加えると美味しいです。液の味が濃いめの場合は、別の野菜を入れて浅漬けを作ってみるのもいいですし、ごま油やオリーブオイル、お好みで酢を足せばドレッシングが作れます」

ワザ6:2週間で冷蔵庫内の食材の使い切りを意識

 冷蔵・冷凍庫の中は、常に自分が把握できる程度の量でキープし、2週間以上庫内に“居座る”食品がないように心がける。

「大量にまとめ買いをして上手にスタッキングして使い切る人もいますが、まねするのは難しい。自分でコントロールできる食品の量を知ることは重要です」

 タレやワサビなどの小袋はまとめて置いておく場所を作り、ある程度たまったら使うクセづけを。

ワザ7:葉物の硬い部分は刻んで乾燥させ活用

「キャベツの外葉や芯、ブロッコリーの茎、大根の皮など、野菜の硬い部分は乾燥させれば、風味も食感もよくなるので食べやすくなります」

 乾燥作業は簡単。適当な大きさに切り、ざるなどに広げて2週間ほど室内で干すだけ。常温で1か月ほど保存ができる。

「乾燥させた数種類の野菜をトマト缶と一緒に煮込んでパスタソースやスープにすれば、“野菜くず”が豪華な一品になります」

ゴミを減らす生活ワザ4

 南極では、毎日ゴミの重さを量っていたという渡貫さん。自分が出すゴミの量を目の当たりにし、“明日はもっと減らそう”と思いながら過ごしていたと話す。

「帰国したとき、物があふれ、無自覚に捨てられている日常に違和感を覚えました。ズッキーニやパプリカといった野菜を1つずつ袋に入れて販売するような過剰包装も気になって。

 消費者として、できるだけゴミが出ないもの、長く使えるものを選ぶことを心がけています」

ワザ8:ゴミ袋そのものを小さくする

「袋が大きいと、どんどん入るのでゴミが増えても罪悪感が生まれにくいと思います。袋を小さくするだけで“この中に収まる量にしなければ”という意識づけになります」

ワザ9:ティッシュは使いづらい場所へ移動

 在宅時は、ティッシュの代わりに、基本的に布巾を使用。

「鼻をかむときも、ちょっとしたものを拭くときも布を活用します。家族が使う洗面所のボックスティッシュは使いづらい場所に移動。それだけで、何も言わずとも使用量がぐっと減りました」

ワザ10:プラではなくステンレスを選ぶ

 日常で使うものは、使い捨てではなくなるべく長く使えるものを選択。例えば、水切りカゴはプラスチック製からステンレス製に、乾電池は充電式に替えた。

「長い目で見れば経済的でもあると思います」

 長く家に置くといった視点で考えると、選ぶ時も慎重になり物を大切にできる。

ワザ11:100均はなるべく行かない

 便利なものにあふれているが、安いからといって安易には買わない。

「買うときから、捨てるときのことをイメージして選ぶようにしていると、買うことに慎重になりました。手軽にいろいろなものがそろう“100均”も私向きではないかなと思っています」

3度は使える!? 南極で実践していたリメイクワザ3

「作った料理を最後まで食べ切ってこそ、食品ロスはゼロになります」

 と渡貫さん。南極では、余ったおかずを煮汁に至るまですべて使い切り、新たな一品を生み出してきた。

 その経験から、帰国後も、タケノコの煮物⇒タケノコご飯⇒煮汁はだし巻き卵といった流れで、すべてを消費するのが日常になっている。余った食材同様に、おかずの残りを保存するときも、次の用途を書いて冷凍するのが基本だ。

 とはいえ、うまく食べ切る料理が思いつかないときもある。渡貫さんいわく、迷ったら“最後はスープかカレーに忍ばせればなんとかなる”というのが、南極で学んだリメイク成功の方程式だ。

「焼き餃子だって、皮まで小さく刻んで中華スープに入れてしまえば、意外とリメイクだと気づかれないものです!」

 すでに味つけ、調理してしまったものでも、捨てる前に立ち止まって考えるクセをつけることが大切。そうすることで、思いがけない“わが家の味”を発見するかも。

ワザ12:悪魔のおにぎり

 残り物でもやみつき必至

 天ぷらうどんを作ったときに残った天かすを“何とかして使いたい”と思って、夜食用に考案したのがコレ。

「天丼のタレのような甘じょっぱい味つけとご飯、天かすがマッチして大好評でした。夜食にしてはカロリーが高すぎるにもかかわらず、ついつい食べてしまうということで、隊員たちからは“悪魔のおにぎり”と呼ばれていたほどです」

 帰国後、某コンビニチェーンで商品化され、話題に。

【作り方】

 しょうゆ、みりん、砂糖、だしの素で作ったタレとご飯を混ぜ合わせ、天かすと青さのりを加えればOK

ワザ13:カレー

 汎用性No.1

「リメイクの最終形態は、カレー。どんなおかずを投入して作っても、違和感なく食べられるのは不思議なくらいです」と渡貫さん。

 魚の煮つけといったおかずだけでなく、フルーツの缶詰の液体、福神漬けの液体などの“汁物”も捨てずにイン。

「唯一、失敗したのは、裏ごししたゆで卵の白身です。ルーに白いつぶつぶが浮いて見た目も怪しい感じに。その時ばかりは隊員から“何を入れたの?”と不審がられました(笑)」

ワザ14:ケークサレ

 茶がらだっておいしくなる!

 市販のホットケーキミックスの生地に、余ったおかずを混ぜて焼くだけでオシャレなおやつに!

「南極では、朝作っておやつコーナーに置くと、午前中のうちになくなるほど人気でした。おから、きんぴら、ほうれん草のおひたし、サバの味噌煮、ポテトサラダなど、意外と何でも合います。緑茶を飲んだ後の茶がらを入れるのもおすすめです」

 アルミカップを使ってカップケーキのような形にすれば、より手軽に作れる。

教えてくれたのは……渡貫淳子さん●第57次南極地域観測隊の調理隊員。1993年「エコール 辻 東京」卒業。結婚・出産後も子育てをしながら調理の仕事に携わり、3度目の挑戦で、昭和基地史上2人目、民間人としては初の女性調理隊員となる。任務終了後は、食品ロスなどをテーマに講演活動を行う

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  • 改めて、人を変えるのは環境だよな、と痛感する。環境が変わるからモノの見方が変わって、考え方も変わり、結果アクションも変わる。
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