OB星野伸之から見た、吉田正尚が抜けたオリックス打線の新たな強み 中嶋聡監督は「もっとも苦労している年」

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2023年06月08日 11:11  webスポルティーバ

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星野伸之インタビュー 前編

オリックス野手陣について

 6月7日時点でパ・リーグトップに立つオリックス。昨シーズンまで打線の中心だった吉田正尚(レッドソックス)が抜けても好調な要因とは? 新加入した森友哉の攻守に渡る活躍、打線の状態、中嶋聡監督の選手起用や采配などについて、オリックスOBの星野伸之氏に聞いた。




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――今シーズンからオリックスでプレーする、森友哉選手のリード面はいかがですか?

星野伸之(以下:星野) 中嶋聡監督のもとで「捕手としてもっと成長したい」
と移籍してきましたが、しっかりバッターを見て裏をかくようなリードもしています。バッティングも大きな期待をかけられているなかでよくやっていると思います(打率.282、7本塁打)。
 
 別のチームに移籍すればサインも変わりますし、ピッチャーのサインも全部覚えなきゃいけない。さらに、ピッチャーの性格も含めていろいろなことを把握しなければいけません。西武のスコアラーとはミーティングも違う部分も多いでしょうし、大変だと思いますよ。

――同じキャッチャーの、若月健矢選手の存在がいい刺激になっている?

星野 そうだと思います。西武の時は完全にレギュラーだったので、どれだけ疲れていても「自分がマスクをつけなきゃ」という感じだったと思います。でも、今シーズンは若月も頑張っているので非常に刺激があるんじゃないですか。

 森はファウルチップが直撃して右足部骨挫傷になった時も「出られます」と言っていたみたいですが、それぐらい気持ちが充実している証拠ですし、いろいろなことを貪欲に吸収しようとしていますね。西武在籍時もピッチャー陣がよかったので、それを引っ張ってきた自信もあるだろうし、経験がミックスされている感じなんじゃないでしょうか。

――キャッチャーとしての森選手と若月選手の違いは?

星野 どのコースを使うか、変化球が多い・少ないといった部分での違いはあまり感じませんが、構えはけっこう違います。森のほうが体が小さいので的が小さいのに対し、若月はガバっと足を開くので的が大きい。僕は的が小さいほうが投げやすかったですが、どちらが投げやすいのかはピッチャーによって違うと思います。

 あと、これはオリックスのチームとしての攻め方になるのですが、通常であれば「そろそろフォークを投げるかな」というところで、その日のピッチャーの真っ直ぐが走っていればポンっと真っ直ぐを投げさせることもある。

 まずはデータありきで、そこにバッテリーの感覚を加えてリードしているのは、森と若月に共通していることです。チームとして「こう投げなさい」はなく、バッターを見ながら「感覚でいきなさい」という感じなのかな、と思います。

――昨シーズン、オリックスのバッテリーは変化球を挟まずに真っ直ぐでどんどん攻めるシーンも見られました。うまくハマれば球数が減らせる効果もありそうですね。

星野 中嶋監督はフォアボールを出すのを一番嫌いますしね。若いピッチャーを起用した時には、おそらく「打たれてもいいよ」と思っているはずです。でも、フォアボールを出すと、次の日にすぐに出場登録を抹消することもある(笑)。

 それは怒っているというよりも、本人のため、チームのためにということでしょうけどね。「もう1回しっかりストライクを投げてこい」といった、考えさせる時間を与えることも含めた判断だと思うので。

――四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスから育成で入った、ルーキーの外野手・茶野篤政選手はどう見ていますか? 安打数はチームトップの56本で、走攻守で存在感を見せています。

星野 不振の期間もありましたけど、最近また当たりが戻ってきました。疲れが溜まって動きが鈍くなってきたらスタメンを外すかもしれませんが、ガッツもあるし、足も速いし、思いきりのよさもある選手です。同じ外野手の福田周平にとってはかなり刺激になっているでしょう。

 福田はレギュラーを獲ったかなと思ったら今シーズンは調子が悪く、野口智哉がそこに入ったり。野口は紅林弘太郎が二軍調整中の時にショートを守って、すごくいい肩を見せました。でも、確実性では紅林なのかなと。彼が一軍に昇格してからチームが落ち着いた感があります。現在首位打者(打率.333)の頓宮裕真もクリーンナップでいい働きを見せていて、中川圭太や(マーウィン・)ゴンザレスは複数ポジションを守れますし、みんなでカバーし合っている。

 昨シーズンまでは、相手ピッチャーに「ランナーがいる状態で吉田正尚に回してはいけない」というプレッシャーがかかっているところで、他のバッターが打たせてもらっていたところもあったのですが、今年は違います。「吉田が抜けたらダメ」と言われたくない気持ちが全員にあるんでしょう。逆に今シーズンは「誰をマークすればいいんだ?」という状況が強みになっています。

――今シーズンの中嶋監督の選手起用や采配はどう見ていますか?

星野 吉田という特別な打者が抜けたこともあり、監督に就任して以降、もっとも苦労している年なんじゃないかなと。チーム打率(リーグトップの.258)もいいし、ホームラン(リーグ3位)も出ていますが、打線は水物ですし、ヒットでつないでいくのは難しい。

 しっかり送りバントを決めるとか、フォアボールをもう少し選ぶとか、そういう打線のつながりが必要になってきます。リーグ優勝した時には福田がいい粘りを見せていましたが、長いシーズンにおいては、そういうことがちゃんとできるかどうかがポイントになると思います。

 それと、(5月24日の楽天戦で)紅林がサヨナラホームランを打った時、中嶋監督が手首の使い方をアドバイスしたようですが、本当に細かい部分まで選手をチェックしているなと。紅林は一塁走者を進めたい時などに、インコースの球、緩い球もしっかり右に打てるようになってきました。打率(.248)は低いですが、内容的にはかなり変わってきていると思います。今後は守備だけじゃなく、打撃での貢献が増えていくことを期待しています。

 ピッチャーに関しては、「この真っ直ぐだったらいける」と思えば、ベンチから「真っ直ぐでいけ」と指示を出すぐらい大胆にいかせるとキャンプでも言っていましたね。そういう部分に、キャッチャー出身監督ならではの眼力を感じます。

(中編:山本由伸が今年「捉えられる」理由を星野伸之が分析 リリーフ陣は1、2点差のビハインドで課題も>>)

【プロフィール】

星野伸之(ほしの・のぶゆき)

1983年、旭川工業高校からドラフト5位で阪急ブレーブスに入団。1987年にリーグ1位の6完封を記録して11勝を挙げる活躍。以降1997年まで11年連続で2桁勝利を挙げ、1995年、96年のリーグ制覇にエースとして大きく貢献。2000年にFA権を行使して阪神タイガースに移籍。通算勝利数は176勝、2000三振を奪っている。2002年に現役を引退し、2006年から09年まで阪神の二軍投手コーチを務め、2010年から17年までオリックスで投手コーチを務めた。2018年からは野球解説者などで活躍している。

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