検査で異常なしの胃の痛み…機能性ディスペプシアの治療はどうする?【専門医に聞く】

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2023年06月08日 20:50  ウートピ

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胃が痛むのに検査をしても異常が見られない「機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)」という病気で悩む人の声に応えようと、消化器病指導医・専門医で著書に『胃は歳をとらない』(集英社新書)がある三輪洋人医師に連載でお話しを聞いています。

第1回ではこの病気と症状の特徴について、第2回では、原因として胃の上部がふくらまずに内容物が溜まる時間が長いこと、また胃酸が胃を刺激するから痛むことを教えてもらいました。今回は、機能性ディスペプシアは医療機関ではどのように治療するのかについて尋ねます。

機能性ディスペプシアの診断基準は

——機能性ディスペプシアとは、「胃の検査で異常はないけれどつらい症状がある病気」ということでした(第1回参照)。検査で異常が見つからないのであれば、どのようにして診断されるのでしょうか。

三輪医師:医療機関ではまず、つらい症状についてどこがどう不快なのか、いつごろからどの程度起こっているか、食事中や食後に症状はあるのかといった食事との関係、体重減少はあるか、ほかの病気はあるか、薬の服用をしているかなどを尋ねる問診をします。

そして必要に応じて、胃がん、胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍などの病気ではないかについて、内視鏡検査、ピロリ菌感染の検査、また血液検査や超音波検査、腹部CT検査などを行うことがあります。

こうした検査で胃の粘膜に病変がないことが判明したけれど、「つらい症状が週に2〜3回以上の頻度で起こり、これが1〜3カ月以上続いている場合」などに、機能性ディスペプシアと診断されます。

胃もたれや胃痛、少し食事をしただけですぐにおなかがいっぱいになる早期満腹感、おなかが張る腹部膨満(ぼうまん)感、吐き気など、みぞおちを中心に不快な症状が現れた場合は、消化器内科や胃腸科を受診しましょう。

世界初で承認された「胃の運動機能を改善する薬」がある

——医療機関では、どのように治療をするのでしょうか。

三輪医師:薬の選択がポイントとなります。日本では機能性ディスペプシアの治療薬として、2013年から、「アコチアミド(商品名:アコファイド)」という胃の運動機能の改善薬が世界で初めて使用できるようになりました。

アコチアミドには、胃の運動機能を助ける神経伝達物質のアセチルコリンの働きを高める作用があります。同様の薬には、「モサプリドクエン(商品名:ガスモチン)」、「トリメブチンマレイン(商品名:セレキノン)」などがあります。

——その薬を飲むと、胃痛や胃もたれはどのように改善されるのでしょうか。

三輪医師:前回(第2回)、すぐにおなかがいっぱいになる「早期満腹感」という症状は、胃の上部のふくらみが悪くなって起こると言いました。この薬を服用すると、胃の上部がふくらむようになります。

また、胃もたれは胃の蠕動(ぜんどう)運動が低下して食べたものの排出に時間がかかるために生じますが、アセチルコリンの働きでこれがスムーズになります。胃の内容物が十二指腸に排出されやすくなるのです。つまり、胃の運動機能が活発になって、複数の不調を改善することができるわけです。

知覚過敏、逆流性食道炎もある場合の薬は

——それは頼もしいです。ほかにも薬の選択肢はあるのでしょうか。

三輪医師:胃の知覚過敏で胃酸による刺激を痛みと感じる場合は、「胃酸分泌抑制薬」を症状に応じて用います。食後の胸やけや酸っぱいものが込み上げてくる逆流性食道炎の症状がある場合にも使用します。先ほどお話しした胃の運動機能改善薬と併用することが多くなります。

「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」…商品名はネキシウム、パリエット、タケプロンなど
「イオン競合型アシッドブロッカー(P-cab)」…タケキャブ
「H2ブロッカー」…アシノン、プロテカジンなど

——症状によると思いますが、それらの薬は目安としてどのぐらいの期間、服用するのでしょうか。

三輪医師:運動機能改善薬は2週間ほど服用してから効果が現れる傾向にあります。そのため、治療開始から4週間後を目安に治療の効果を診断します。改善が見られたらその薬で治療を続け、改善が見られなければ2次治療として薬を変える、あるいは別の種類の薬を併用する治療に進みます。

この場合、ストレスを緩和する抗不安薬、抗うつ薬などが使われます。また最近、胃の働きを活発にする漢方薬の「六君子湯(りっくんしとう)」が有効であることを示す臨床研究が報告されたことを受けて、この薬を第一選択薬として処方する場合もあります。

機能性ディスペプシアに市販薬はある?

——市販薬で同様の薬はありますか。

三輪医師:H2ブロッカーと六君子湯は市販薬がありますが、それ以外は医療機関で処方される薬のみになります。

胃もたれや早期満腹感は市販薬のみでやり過ごそうという人も多いと思いますが、なかなか改善しないという患者さんは後を絶ちません。一度は医療機関を受診し、適切な薬を試みてください。

聞き手によるまとめ

機能性ディスペプシアと診断されたら、おもに胃の運動機能を改善する薬と、胃酸の分泌を抑える薬を単独か、または併用して服用する、そして4週間継続した後に治療の効果を判定し、改善しない場合は次の治療を行うということです。こうした治療法や薬の情報を知っておき、症状を見つめて早い改善に向かいたいものです。次回・第4回では、機能性ディスペプシアのセルフケアについて尋ねます。

(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)

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