『鬼滅の刃』“彼ら”はその後どんな人生を送ったのか 柱から屋敷の少女たちまで、物語の先が気になるキャラクターたち

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2023年06月12日 12:51  リアルサウンド

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※本稿は『鬼滅の刃』のネタバレを含みます。原作未読の方はご注意ください。


 2020年に原作が完結したあとも、完成度のアニメで世間を騒がせている『鬼滅の刃』。『鬼滅の刃』連載開始以前から、作者である吾峠呼世晴の読み切り漫画を追い続けてきたライターの若林理央が、3回に分けて「特に〇〇だったキャラ」を3人ずつピックアップする。


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 第2回では、「その後が気になるキャラ」を3人選んだ。正直なところ、決戦が終わった段階で生きているキャラクター全員、その後どのようにして生き、死んでいったのか気になる。最終回でだれと結婚したのか判明したキャラもいるが、彼らのなれそめはほぼ語られず、読者の想像にゆだねられた。


 あの後、何が起きて現代につながっていったのだろうか。ここからは原作のネタバレが数多く含まれるため、読む前に注意してほしい。


 死を恐れない鬼殺隊の面々だったが、最終決戦で生き残ったキャラクターは、中心人物の炭治郎、禰󠄀豆子、善逸、伊之助を除けばごくわずかだった。連載当時から本誌(『週刊少年ジャンプ』)で物語を追っていたときは、生き残ると思っていなかったキャラが生き、反対に死ぬはずがないと思っていたキャラが命を落とした意外性に目を奪われた。SNSでは「10代の若いキャラは死なないと思っていた」という声も飛び交い、まさに読者の想像が及ばない展開の連続だった。


 前回、救いのないキャラについて書いたとき、読者の方から「不死川実弥(風柱)のその後が知りたい」と感想をいただいた。私も同じように感じていたので、まずは前回も取り上げた風柱の不死川実弥について書きたいと思う。


■不死川実弥(風柱)


 鬼になった母によって幼い弟妹を殺され、その母を自分が殺したことにより、鬼を激しく憎むようになった実弥。自らの体に傷を増やしながら戦い続け、柱に昇進する。


 彼の願いは鬼を倒すことだけではない。唯一生き残った弟の不死川玄弥に穏やかで幸せな一生を送ってほしい。そのため、本編での描写はないが、玄弥が鬼殺隊に入ったと知った時のショックははかりしれない。鬼殺隊の隊員は、いつ死んでもおかしくないからだ。


 玄弥に鬼殺隊を辞めさせようと弟に冷たくあたる実弥だが、玄弥は玄弥で、柱になって兄の実弥と再会したいという願いがあった。しかし呼吸の使えない彼は、鬼を食べて戦うようになる。


 これまでの少年漫画では、弟をかばって兄が死ぬのが定番だっただろう。『鬼滅の刃』でも、煉獄杏寿郎の戦闘は、上の世代が死に、下の世代が生き残るパターンだった。ところが不死川兄弟の場合、上弦の壱との戦いで生き残ったのは兄の実弥であった。


 唯一の肉親が死んだあと、実弥はどのようにして人生を過ごしたのだろうか。


 隊員は、極限の状態に達すると肌にあざが出現する。このあざは隊員の能力を高めてくれる一方で、あざが出現した者は25歳で死ぬ運命にある。『鬼滅の刃』の生き残ったキャラのうち、あざが出たのは主人公の竈門炭治郎、水柱の冨岡義勇、そして実弥の3名である。


 一方で例外的にあざが出現して25歳を超えても生き続けた剣士がひとりだけいて、鬼の始祖である鬼舞辻無惨が死んだことによってあざは死と無縁になったのではないかという説も飛び交った。


 ただ、そうでないのなら21歳の実弥はあと4年で死ぬ。義勇も同い年なので同様だ。実弥は義勇を嫌っていたが、終盤でふたりが微笑み合う場面があるので和解して、残りの人生を身寄りのないふたりで過ごしたとも考えられる。


 しかし最終回の現代編では、実弥に子孫がいる可能性が生まれた。


 ただ実弥に非常に似た彼がほんとうに子孫なのか、実弥が転生した姿なのかはわからないまま、本作は幕をおろした。性格的に死ぬまでの約4年で女性と出会い子孫を残すのは、それまでの『鬼滅の刃』で培われた不死川実弥像とかけ離れたものであり、個人的には弟の玄弥と共に転生したのではないかと考えている。


 そんな実弥とは異なり、明らかに子孫を残したことが判明しているのが冨岡義勇だ。


■冨岡義勇(水柱)


 義勇も実弥と同じように「生き残ってしまった鬼殺隊の柱」である。とはいえ彼はもう家族を亡くしていて天涯孤独の身なので、死を覚悟していたとはいえ生き残ったことを悔いるような描写はない。ただ戦いの最中に片腕をなくしている。


 彼も21歳、あざのことを考えれば余命は4年程度だ。鬼殺隊でも柱の中でも孤立していた義勇なので、「だれかと家族になり幸せになってほしい」と考えていた読者も多いのではないだろうか。


 ただ、実際に義勇が結婚したとなると相手はだれなのだろうか。人見知りの義勇が自分から声をかけて誰かを妻にするとは思えず、また恋愛結婚も少ない時代なので、産屋敷家がどこかの女性と見合いをさせたのかもしれない。


 連載当時は義勇と、蟲柱の胡蝶しのぶのカップリングが読者人気を得たが、しのぶは上弦の弐との戦闘で命を落としているので結婚相手にはならなかった。また「子孫」ということは、義勇の血縁者の子孫という推測もできるが、彼の唯一の家族だった姉は、この物語が始まるだいぶ前に、義勇をかばって鬼に殺されている。


 最終回に登場している義勇の子孫は義勇の孫かひ孫だろう。ただそうなると、前述した実弥の転生説が急に悲しいものに思えてくる。義勇と仲直りをしてふたりで暮らした「その後」ではなくなるからだ。


 やはり最終回で登場した実弥に似た青年も、実弥の子孫であったように感じられる。


■蝶屋敷と産屋敷の女の子たち


 鬼に家族を殺されて胡蝶しのぶ(蟲柱)の住む蝶屋敷に引き取られ、傷ついた隊士たちの看護をしている小柄な3人娘がいる。高田なほ、寺内きよ、中原すみだ。外見は非常に似ているが血のつながりはない。


 「3人娘」とひとまとめにするのは申し訳ないが、鬼が全滅して傷つく隊士もいなくなったあと、彼女たちがどのようにして蝶屋敷で生計を立てたのかはさだかではない。終盤で後に炭治郎の妻となる栗花落カナヲが、生前のしのぶのように医師のような治療をしている場面があるので、看護師としていっしょに暮らし続けたのかもしれない。ただ最終回に3人の子孫が登場しているので、その後、それぞれ結婚をして子どもが生まれたのは間違いないだろう。


 また、鬼殺隊の司令官のような存在であった産屋敷耀哉(隊員からは「お館様」と呼ばれている)の息子の輝利哉は跡を継ぎ、日本最高齢のおじいさんとして現代まで生きている。


 気になるのは耀哉の娘で輝利哉の妹であるくいなとかなたである。くいなは気が強く、かなたは気が弱いというキャラクター設定をされている。


 彼女たちは無惨を陥れるための父の策略で兄以外の家族を亡くした。鬼のいない世界で、子どもらしさを取り戻して兄と遊ぶ様子が描かれたきり、このふたりは登場しなくなった。兄妹とはいえ五つ子で輝利哉とは同い年なので、最高齢として紹介されていないと言うことは、現代はもう生きていないのだろう。


 多くは描かれなかったとはいえ、この5人の女の子たちのその後人生は幸福なものだったと思いたい。なお、3人娘と同じように蝶屋敷で看護をしていた神崎アオイは、後にメインキャラクターのひとりである嘴平伊之助と結婚している。


■揺れ動く大正、そして昭和


 『鬼滅の刃』の時代設定が大正時代だ。おそらくそれには理由がある。


 明治や昭和は非常に長く、激動の時代で社会も大きく変化した。一方、大正時代は関東大震災が起きるまでは現代に近い、国民が平和を感じていた時代だったという。(※1)


 どの年に最終回を迎えたのか知るヒントをくれるのは産屋敷輝利哉だ。最終回が連載の終わった2020年だと仮定すると、その年に産屋敷輝利哉は日本最高齢だと紹介されている。


 現実では2020年、日本最高齢は117歳だったので、そこから逆算すると輝利哉が生まれたのは1903年、『鬼滅の刃』で無惨が死んだときは8歳だったので、最終決戦は1911年だったように思われる。


 しかし大正が始まるのは1912年からなので、2020年に輝利哉が117歳より年齢がいくつか上であれば公式設定の大正時代と重なる。つまり『鬼滅の刃』は大正初期の物語なのだ。


 大正初期は、1914年から1917年まで第一次世界大戦も起きているが、この大戦は第二次世界大戦と違って日本が戦場になったわけではないので、国民に大きな被害をもたらしていないそうだ。(※1)


 しかし1923年の関東大震災は、鬼と戦った後の彼らの人生に大きな影響を及ぼしただろう。死んだ人物もいるかもしれない。


 関東大震災の約3年後、大正は終わる。正確には1926年12月25日だ。そして昭和になるとまず日中戦争が起きる。その後、第二次世界大戦で日本が惨劇の場となるのは知ってのとおりだろう。


 『鬼滅の刃』の登場人物たちがいつまで生きていたのかはさだかではないが、歴史の渦にのまれたのは間違いない。大正時代初期は、日本で起きた出来事に左右されることなく鬼と鬼殺隊の隊員たちの戦いを描ける、最適な時代だったのだ。


 あざが出現した21歳の実弥、義勇、15歳の炭治郎の寿命が25歳までだとすれば、第二次世界大戦が始まる前に3人とも死亡したと断定できる。なおかつ実弥と義勇は関東大震災をも経験していない可能性が高い。


 残る善逸、伊之助などの人生は、決して並大抵のものではなかったと思うが、子孫を残し、死者は転生して現代に至る。


 歴史を振り返り、それに登場人物たちがどんな影響を受けたのか考えながら『鬼滅の刃』のその後を想像してみると、また新たな見方ができるかもしれない。


■参考文献
※1 『100年前から見た21世紀の日本: 大正人からのメッセージ』(大倉幸宏/新評論)


(文=若林理央)


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