【AI絵師】弱点は細かな修正対応力? 商業での成功は”リテイク”がポイント

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2023年06月16日 15:21  リアルサウンド

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Unsplash Kelly Sikkema


 相変わらずAI絵師に関する議論がTwitter上では盛んである。著名な漫画家やイラストレーターをも巻き込んだ議論になっている。


 記者がリアルサウンドブックに書いた通り、AI絵師の多くはあくまでも承認欲求を満たすために絵をUPしているに過ぎない。Twitterで「AIイラスト」で検索すると、上位に表示されるのは似通った絵柄、似通った世界観の絵が多く、ほとんどが「いいね」目的で流行りを追いかけているだけであろう。プロの市場に与える影響は少なく、それほど気にする必要がないというのが、記者の見解である。


 そもそも、AI絵師の最大の弱点は細かい修正に適応できない点である。例えば、作品を見てみると、明らかに身体のバランスが変だったり、手や足の向きが逆だったり、椅子や机の脚が身体を貫通してしまったりと、制服の着方や机の向きなどおかしな点が目立つ。


 ところが、AI絵師はそういったところをまったく気にしていないのだ。というより、そもそも気づいていないようにも思える。あくまでも全体の見栄えが良ければ、それで良いようなのである。これでは商業としてやっていくには、極めて難しい。編集者から細かいリテイクが希望された場合、それができないのである。そもそも、こうした細部の変な箇所に気づかずにドヤ顔ができてしまうあたり、この人たちはリアルで絵を描いた経験があるのか、と疑ってしまう。


 記者の知人のイラストレーターによれば、「AIを使ってみたが、水着などの単純な服装で、単純な背景の絵くらいしか実用のレベルに達していない。手前に机や物を置いた絵を出力したら、途端に変な絵になり、直しが必要になる」「はっきり言って、細部を手直しする手間を考えたら、ゼロから描いた方が早い」という。その細部の”手直し”こそがイラストの完成度を高めるために不可欠な作業であり、もっとも手間がかかる部分なのだが、理解しているAI絵師は少ないのかもしれない。


 また、何より従来のイラストレーターは「絵を描くことが好き」という人が多い。だから、自分で絵を描きたいのである。こうした自らの手で作品を生み出す楽しみを共有している人は、アマチュアにも多いし、同人作家にも多い。したがって、AI絵師と、従来のイラストレーター(もしくは絵師)は異なる存在と見るべきだろう。


 何度も言うが、記者はAIを否定しているわけではない。漫画家やイラストレーターにもAIを面白いと思っている人は少なくないし、活用しようと試みている人もたくさんいるのだ。しかしそれは、すべての工程をAIに任せるということではない。あくまでもインスピレーションや、ポーズや衣装の参考にする程度である。


 なぜ、すべてAIに描かせることをしないのか。繰り返すようだが、それは自分の手で描いた方が面白い、という価値観をもっているためだ。


 AI絵師の昨今の振る舞いに対しても疑問を呈する声が多い。「このレベルの絵を生み出すことはできますか?」などと、アンチのみならず、プロのイラストレーターを挑発するアカウントさえ見受けられる。


 せめて少しでも、ゼロから絵を生み出す漫画家やイラストレーターをリスペクトする発言があれば、AI絵師のイメージも変わってくるのではないかと思うのだが……いかがだろうか。


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