ママ500人に聞いた“パパの育児参加”「できないことより“しない意識の低さ”」に嘆き

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2023年06月26日 06:10  週刊女性PRIME

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※画像はイメージです

 6月5日、一般社団法人日本経済団体連合会は「男性の家事・育児」に関するアンケート調査結果を公表。2022年の男性の育児休業取得率は47.5%で、前年の29.3%から大幅に上昇したことが明らかになった

 一方、女性の育児休業取得率は過去5年間、90%以上で推移。2020年以降はいずれも95%を超え、2022年は96.4%となった。育休取得率上昇の背景としては、2022年4月に個別周知・意向確認が義務化されたことや、10月から「産後パパ育休」が創設されたこと、育児休業の分割取得が可能となったことなどが要因と考えられている。

 男性の育休取得は少子化対策としても喫緊の課題だ。政府は6月13日に「異次元の少子化対策」の具体的な中身を示す「こども未来戦略方針」を正式決定。児童手当の拡充などとともに「共働き・共育ての推進」を盛り込み、2030年には85%の男性が育休を取得することを目標に定めた。

 このように、子育てを取り巻く環境は大きく変わろうとしている一方、家事・育児は女性の仕事だという無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)もいまだ根強く、子育てにおける男女格差は令和になってもなお、社会の根底に潜んでいるようだ。

 そこで今回は、全国の20〜40代のママ500人にアンケートを実施。家事・育児にまつわる男性の参加状況や、子育てに対する不満について寄せられた声を、株式会社子育て支援の代表取締役・熊野英一さんと見ていきたい。

夫は外、妻は家庭、分業スタイルも存在

 まず『夫婦の家事・育児の負担割合』について尋ねた。家事・育児の6割以上を女性が担っているという家庭は全体の88%にも上る。その内訳を女性側の就業状況別に見ると、専業主婦が49%、パートタイムでの就業が29%、フルタイムでの就業が17%となっており、共働き世帯においても女性の家事・育児負担率が高くなっている傾向が明らかになった。

「実際に、子育て中の家庭における夫婦の家事・育児の負担は二極化している傾向があります。男性は外で稼いで、女性は家事・育児に専念するという完全分業スタイルの家庭も依然として多いです。一方で50:50とまではいかずとも、共働きで夫婦共に家事・育児を分担してやっている家庭も増えています。

 ただ、いずれにしても家事・育児の負担が女性のほうに偏りがちになっていることは間違いなく、家のことは女性がやるものという意識が、日本の文化として根強く残っていることの表れだと感じますね」(熊野さん)

 次に『夫の育児参加についての不満』を尋ねたところ、意外にも36%以上の人が「不満はない」と回答。ところがその内実を見ると、「家事も子育てもできる限り一生懸命やろうとしてくれていて、頼もしい」(29歳・専業主婦・愛知県)という肯定的な声もある一方、「収入面で平等ではないから、家事・育児で私の負担が多いのは仕方ないと諦めている」(32歳・パート・東京都)、「普段何もしないのが当たり前になっていて、たまの休日に少し手伝ってくれるだけでも十分ありがたく感じる」(38歳・会社員・京都府)と、「そういうものだ」という諦めの声も少なくない。

「家庭のことはなんとなく女性がすべきだという文化を女性側も無意識に受け入れてしまっているのかもしれません。多少の不満はあっても、夫は外で稼いできて、自分は専業主婦もしくはパートぐらいの補助的な稼ぎで家の仕事をメインにやるという役割分担で成り立っている家庭はやはり多いです。重要なのは、それをきちんと夫婦で話し合い、お互いに合意しているかだと思います」(熊野さん)

 寄せられた不満の声を見ていくと、「子育ては初めてのことばかりで、私も情報を集めたり不安に思ったりしながらどうにかやっている。妻の指示待ちでいいやなんて考え自体がありえないし、もっと父親としての自覚を持ってほしい」(33歳・パート・静岡県)といった意見も。

 夫が家事・育児を“できない”ことへの不満というよりは、“やろうとしない”意識の低さに対する嘆きの声がほとんどだ。

「10年もたたずに、確実に社会は変わっていきます」

「日本では母親が息子に何かと手を焼いてあげることが美徳といった、マザコン文化のようなものが連綿と続いている結果なのかなとも思います。“子ども並みに夫に手がかかる”なんて不満が多いのもまさしくその表れで、女性に甘え慣れしてきた男性たちが、いざ父親になったときに急に積極的に家事・育児に参加できるかというと、なかなか難しかったりもする。子育て支援とともに、“親育て”(ペアレンティング)というのもとても重要です」(熊野さん)

 男性の家事・育児への参加は夫婦の個別の問題だけではなく、社会問題でもある。「夫の会社に育休の文化が根付いておらず、土日もフルで仕事。社会が変わらなければ夫婦そろっての子育ては難しいと思う」(38歳・パート・大阪府)と、夫の会社や働き方に対する“恨み節”も多い。

「男性の育休取得は少子化対策としても重要な問題。ただし、改正された育児・介護休業法が昨年4月から施行され、男性の育児参加への環境も法律も年々アップデートされてきています。また、10代20代への意識調査では、“男女の共働きは当たり前”“家事・育児は夫婦共に行うべき”“自分も育休を取得するつもりだ”という考え方がマジョリティーになっています。あと10年もたたずに、確実に社会は変わっていきますよ」(熊野さん)

 妻からすると、つい愚痴がこぼれてしまいがちな夫の家事・育児参加の実態。夫をどうにか変えようと息巻くのではなく、自分の意識を変えていくことも必要かもしれない。

「誰かに言われたわけではなくても“母親なのだから子育て中は何かとガマンするのは当然だ”と、謎の罪悪感を持ってしまう女性は実は多いんです。自分の自由を縛ってしまう“呪い”のようなものがどこかにあって、それが必要以上に家事・育児を大変にしてしまっているということもありえます。

 一方で、お金を払ってベビーシッターを頼んだり、自治体の託児サービスを利用するなど、自分だけの時間を確保することも、やろうと思えば意外と簡単にできる世の中です。何より夫は敵ではなく、夫婦という子育てチームの重要なパートナー。どういう育児をしたい、どう分担していきたい、いつ休みが欲しいなど、自分の気持ちをきちんと伝え、まず対話をすることが大事だと思います」

 自由な子育てのカギは、自分自身の中にあるのかも。

お話しを聞いたのは……熊野英一●株式会社子育て支援代表取締役。企業主導型保育所、児童館、子育て支援センターの受託運営、アドラー心理学に基づく企業向け研修などを展開。『夫婦の教科書 愛に向き合い、家庭をつくる』(アルテ刊)等、著書多数

(取材・文/吉信 武)

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