『ヒカルの碁』でブームも……「週刊碁」休刊から考える”紙”の専門誌の存続問題

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2023年06月26日 07:01  リアルサウンド

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 日本棋院が発行する唯一の週刊囲碁専門紙「週刊碁」が今秋にも休刊されることになった。朝日新聞が報じた。昭和52年(1977)11月に創刊、ピーク時には約20万部を発行していたが、現在は約2万部まで落ち込んでいた。


(参考:【写真】七夕をテーマに描き下ろし! 進藤ヒカル、藤原佐為、塔矢アキラなどのグッズを見る


 さて、囲碁の漫画といえば、『ヒカルの碁』が有名だろう。ほったゆみと小畑健のコンビで「週刊少年ジャンプ」で連載され、アニメ化もされた。小学生の進藤ヒカルが平安時代の天才囲碁棋士・藤原佐為の霊に取り憑かれたことを機に、囲碁の世界に入り、塔矢アキラら数々のライバルと出会いながら“神の一手”を目指すという漫画だ。


 人気が絶頂にあった2000年代前半は、日本棋院が聖地巡礼スポットとなった。修学旅行などで訪れる若者も目立ったとされる。また、江戸時代の天才的な囲碁棋士である本因坊秀策などの知名度も上がり、合わせて囲碁人口も急増した。本作を読んだことをきっかけにプロ囲碁棋士を目指す若者も現れるなど、囲碁文化の発展に貢献したとさされる。


 しかし、一時的に若者の関心を引き付けたものの、娯楽の多様化に伴い、レジャー白書によると2021年の囲碁人口は約150万人まで減少しているという。しばし囲碁と比較される将棋は藤井聡太の出現によって人気を得ている。囲碁にももちろん有名な棋士はいるものの、藤井聡太に比肩するスターの出現が課題といえるだろう。


 専門誌の売上は低調傾向が続いている。特に2022年は専門誌の休刊のオンパレードとなった。代表的なものをあげるだけでも、3月には歌舞伎専門誌の「演劇界」が、7月には柔道専 門誌の「近代柔道」とボクシング専門誌の「ボクシングマガジン」が、12月には美少女ゲームの専門誌の「電撃G's magazine」が相次いで休刊となった。


 コロナ禍真っただ中の2020年〜2021年には「カメラマン」「アサヒカメラ」「日本カメラ」が立て続けに休刊となっている。これはスマートフォンの普及に伴い、一眼レフカメラの売上が急激に落ち込んでいることにも関連しているだろうが、広告出稿の減少も大きなダメージになっているのかもしれない。


 専門誌はコアな層に向けた広告の売上が大きく、バブル期などは広告出稿だけで毎月5,000万円〜1億円ある媒体も少なくなかった。しかし、平成不況で広告売り上げは激減し、ネットの普及やレジャーの多様化で、いよいよ雑誌本体の売上だけでは出版体制を維持できなくなったといえる。これらの要因から、今後、専門誌の休刊はますます増加すると予想される。


(文=元城健)


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  • 囲碁は全く知らないけど、井山さん中邑さんは知っている。でも、将棋よりも広まっていないことか…
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