レクサス史上最小のクルマ「LBX」はヒットする? 登場の背景を考える

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2023年06月27日 08:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
レクサスは先ごろ、新型コンパクトクロスオーバー「LBX」を世界初披露した。日本での発売は2023年秋以降の予定だ。トヨタ自動車のラグジュアリーブランドである「LEXUS」が、生活に密着したクルマのイメージがある小型SUVの新型車を作る理由とは?


○「ヤリスクロス」の豪華版?



LBXはトヨタのコンパクトカー向けプラットフォーム「GA-Bプラットフォーム」を採用している。つまり、史上最小のレクサスだ。トヨタのコンパクトカー「ヤリス」なども同プラットフォームを使っているが、LBXと最も共通性が高いトヨタ車はコンパクトクロスオーバーの「ヤリスクロス」となる。



もちろんレクサスはプラットフォームに専用開発を加え、ヤリスクロスとの差別化を図ったと強調している。それを裏付けるように、LBXとヤリスクロスではボディサイズが異なる。全長こそ同等だがLBXは全幅とホイールベースが専用仕様で、ヤリスクロスよりも大きい。ちなみにタイヤも、LBXの方がよりワイドなものを履いている。


レクサスによればLBXは「『これまでの高級車の概念を変える、コンパクトサイズながらも走りやデザインも上質であるサイズのヒエラルキーを超えたクルマをつくりたい』とのブランドホルダー豊田の想いをもとに、『本物を知る人が、素の自分に戻り気負いなく乗れるクルマ』を目指した」という。



このため、クルマとの一体感を生む最適なドライビングポジションや走りの良さ、高級車にふさわしい高い静粛性などを追求。新開発のハイブリッドシステム、先進の予防安全技術「LEXUS Safety System+」、先進の運転支援機能「LEXUS Teammate」に加え、最新のインフォテインメントシステムなどを採用して快適性にもこだわった。さらに、約33万通りから自分だけの1台が仕上げられるオーダーメイドシステム「Bespoke Build」が用意されるなど、まさにレクサスにふさわしい小型車に仕立てられているようだ。


○レクサスが小型クロスオーバーを作る理由



なぜレクサスが小さな高級クロスオーバーに取り組むのか。その背景には、若いユーザーや女性顧客を獲得したいという思いや、既存ユーザーのダウンサイズニーズを取り込みたいといった考えがありそうだ。



ここ最近の若い世代を見ていると、合理的な考え方で生きている人たちが増えている一方で、若くして経済的に成功した富裕層(ヤングエグゼクティブ)が増加しているのも事実。また、現代人に共通するのが、自身のこだわりの強いものならば、高額商品でも購入するという点だ。そのため、いかにラグジュアリーなブランドであっても、若者でも買いやすいモデルをラインアップすることは、若年層に対する呼び水になる。

生活にゆとりのある「パワーカップル」も増えている。高級車ブランドとしては気になる存在であるに違いない。彼らにLBXを買ってもらえれば、将来的には上位モデルへのステップアップも期待できる。



女性ユーザーは一般的に、可愛いものや扱いやすさを重視する傾向にある。オーダーメイドが可能なクルマも、ファッション感覚で喜ばれるだろう。



さらに既存ユーザーには、小型車へのシフトを検討しているシニア層や家族用にセカンドカーを購入したいというニーズが期待できる。



こうした人たちを取り込むことができれば、レクサスはブランドとしての守備範囲を広げることができる。上記のような傾向はグローバルで見ても当てはまる部分が多いだろう。

○「LBX」はヒットするのか



LBXは実質的にコンパクトハッチバック「CT」の後継となるが、同サイズの「カローラ」をベースとせずにサイズダウンしたのは、世界的にコンパクトハッチバックの市場がクロスオーバーやSUVに食われているためだと分析する。



高級車におけるコンパクトクラスの重要性は、日本の高級輸入車の売れ方が裏付けている。日本自動車輸入組合(JAIA)のデータによれば、2001年〜2015年まではフォルクスワーゲン(VW)の「ゴルフ」が輸入車販売で首位を独走していたが、2016年〜2022年はMINIがその座を射止めている。また、2022年のトップ20を振り返ると、VW「ゴルフ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」などの定番モデルだけでなく、VWのコンパクトクロスオーバー「T-Cross」やコンパクトカー「ポロ」、ボルボのコンパクトSUV「XC40」、フィアット「500/500C」、BMW「1シリーズ」、メルセデス・ベンツ「Aクラス」といったブランドエントリー車が多数ランクインしているのだ。



レクサスはブランドエントリーの役割を担うコンパクトクロスオーバー「UX」を用意しているが、年内でガソリン車「UX200」の生産を終了すると予告している。UXはハイブリッド車と電気自動車(BEV)のみとなるため、必然的に価格が上昇してしまう。つまりレクサス入門の価格的ハードルが上がってしまうので、その役割をUXから引き継ぐLBXは、まさに同社にとって必須のクルマといえる。


同じコンパクトカーでもクロスオーバーやSUVだと、同等サイズでも車内空間は広くなるし、ヒップポイントも高くなるため乗降性と視界に優れるというメリットもある。そして背の高さとSUV風味のデザインは、路上での存在感があり、運転者にとっても心強さがある。



個人的にはSUV人気は今後も続くと考えているが、エコという観点からも、小さなクロスオーバーや小さなSUVにはより注目が集まってくると思う。そういう未来を見据えてレクサスが投入するLBXは、まさにホームラン級のヒットが期待される1台なのではないだろうか。



大音安弘 おおとやすひろ 1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。 この著者の記事一覧はこちら(大音安弘)

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