サッカー教室をAIカメラで配信、目指すは「スポーツ撮影のDX」

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2023年07月05日 07:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
NTT東日本と大宮アルディージャ、NTTSportictは、6月4日に開催されたNTT東日本サッカー教室において、AIカメラ「Pixellot」を利用した試合配信を行った。AIによる自動追跡アルゴリズムや自動編集を活用した撮影・編集により、カメラマンなしでのスポーツを配信できる。


○サッカー教室の模様をAIカメラで自動配信



NTT東日本、大宮アルディージャは6月4日、戸田市荒川水循環センター上部公園で、地域のサッカー少年団を対象としたサッカー教室を行った。元大宮アルディージャの選手もコーチとして参加するという貴重な機会に、少年・少女らは日頃の練習によって培われた努力の結晶をぶつけていた。


このサッカー教室での練習試合配信に用いられたのが、NTTSportictのスポーツ映像ソリューション「STADIUM TUBE」だ。競技場にAIカメラ「Pixellot」を設置し、自動追跡アルゴリズムや自動編集等の技術によって、カメラマンなしで映像を撮影・編集し、動画配信が行われた。



今回用いたモデルは「STADIUM TUBE Air」となり、簡単な操作と持ち運びできる可搬性の高さが大きな特長と言える。可搬式であることから人気が高く、2022年に発表してから、すでに100台以上の導入・レンタル実績があるという。


筐体は本体寸法22×19×8cm、重量は最大2kgと、手軽なプロジェクターのイメージだ。2眼レンズで4K・25/30FPSの撮影が行え、200度のアングルをカバーする。レコーディングタイムは約13時間、バッテリーは連続で約5時間駆動が可能。設置時はマウントアダプターを介して専用の三脚に取り付け、落下防止ケーブルで固定。センターライン延長上に設置すれば完了となる。


AI自動編集は2種の映像を自動生成する仕組みとなっており、まず複数のカメラレンズよりコート全体をパノラマ撮影する。このパノラマ映像から、AIが人の動き、ボールの位置、スポーツごとのルールを理解したうえで映像編集を行う形となる。撮影終了後に映像をクラウドにアップロードすると、AIアルゴリズムが自動でアングル変化やズームを行う。そしてAIに編集された映像は、配信・視聴ページへ自動でアップロードされるという仕組みだ。



なお、「STADIUM TUBE」には競技場に常設するモデルも存在している。高品質な撮影・配信を行う「S3」「S1」「Prime」、自由視点視聴や分析ツールが利用できる「Coaching」、バスケットボール・バレーボールのようにコート面積が狭くとも撮影できる「S2」があり、こちらはスポーツのクラブチームやスポーツ施設などを中心に活用が進んでいる。

○100⼈が⾒る試合を1万試合配信する



今回のAIカメラによる撮影は、NTTSportictの技術に着目したNTT東日本 埼玉事業部が、大宮アルディージャにサッカー教室での活用を持ちかけたことが始まりだったという。NTT東日本 埼玉事業部 企画部 広報担当 課長の松本永介氏は、「元々このサッカー教室は、地域貢献を目的として開催してきましたが、この貴重な練習にICTを活用し、より少年少女にとって有効な機会にできないかと考えたのがきっかけです」と、経緯について話す。


これを受け、大宮アルディージャ 事業本部 営業担当 担当課長の金田紳也氏は「サッカー教室はトレーニングメニューが中心です。AIカメラをどのように使えるのかご説明いただき、試合形式のメニューに組み込むのが最適だと考えました。そこで今回はいろんな少年団の方に来てもらいました」と語る。



また、今回の映像の活用について、「映像自体はこれから指導者や保護者の方と共有しますので、まず試合の振り返りに有効活用していただきたいと思っています。同時に、我々もコーチングの振り返りに使いたいと思います。また、サッカー教室自体の思い出を動画に残せるので、参加した少年たちへの良い記念品になるのかなと思っています」と金田氏は話した。


ITを活用した記念品というのは、NTTグループらしい取り組みと言えそうだ。今回はサッカー教室だが、サッカーアカデミーでのコーチングや、子どもたちのサッカー体験などでも活用していく予定だという。



NTTSportict ビジネス開発部長の永松稔幹氏は、「STADIUM TUBEの最大の特徴は、AIカメラと配信プラットフォームをパッケージ化したところ」と説明する。実際に視聴者が閲覧できるまでをひとつのソリューションで完結できるため、低コストかつ知識を必要とせずにスポーツ配信が行える。



今回はカメラ1台で撮影しているが、複数台設置すればよりリッチな映像コンテンツを作ることもできるという。例えば、現在有人で撮影しているカメラの一部を置き換えるといった使い方も可能だ。


「我々が目指しているのは“スポーツ撮影のDX”です。世の中には、まだ映像化されていないスポーツがたくさんあります。これを誰でも簡単に、どんどん配信できるようにしたいんです。とくにアマチュアスポーツは日本全体で行われており、ある種、地域に眠っている資産と言えます。みなさんにもっと気軽にスポーツを楽しんでもらって、同時にその映像を未来に残す。そんな時間軸を一緒に作っていけたらなと思っています」と永松氏は熱意を込めて語った。



NTTSportictは「『100万⼈が⾒る試合を1試合放送』ではなく『100⼈が⾒る試合を1万試合配信』」という事業戦略を掲げている。身近で行われているアマチュアスポーツ、試合の様子が分からなかったマイナースポーツなどをネットでいつでも視聴できる、そんな未来が今後来るのかもしれない。(加賀章喜)
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