オリックス・頓宮裕真、首位打者快走の裏に森友哉の助言

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2023年07月06日 09:54  ベースボールキング

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首位打者を快走する頓宮裕真 [写真=北野正樹]
◆ 猛牛ストーリー【第82回:頓宮裕真】

 2023年シーズンにリーグ3連覇、2年連続の日本一を目指すオリックス。監督、コーチ、選手、スタッフらの思いを、「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。

 第82回は、5年目の頓宮裕真選手(26)です。今季も熾烈な首位争いを展開する「パーソル パ・リーグ公式戦」で、打率.335をマークし、首位打者を快走中。7月4日の楽天戦(東京ドーム)では満塁本塁打を含む2打席連続本塁打で、2年連続の2ケタ本塁打を記録しました。

 20本塁打以上を目標に掲げた今季。思うように打球が上がらず本塁打が出なかった時、森友哉捕手から「打率を意識すれば本塁打も増えるよ」とのアドバイスを受けました。打撃練習を大切にすることも教わり打率も本塁打もアップしました。


◆ 「そんなに振らなくてもいいし、打球の角度もつけなくていいよ」

「全然、いい仕事をしたなんて思っていません」

 ロッテとの首位攻防戦を9回、森のサヨナラ本塁打で競り勝った6月27日の試合後、頓宮は淡々と試合を振り返った。

 3度目となるオリックス・宮城大弥とロッテ・佐々木朗希の息詰まる同級生対決。2回1死から左前打を放ち、佐々木から先制点を奪う口火を切ったというのに、いつも通り口数は少なかった。

 投手を引き立て、縁の下の力持ちに徹する捕手出身の性なのだろうか。「いい仕事をしたかどうか、評価するのは僕ではありませんので。まだ、レギュラーの立場でないので、必死にやっているだけ。1年間通して出たことがないので、しっかりと準備をしているだけです」と謙虚な言葉が返って来た。

 昨季、81試合の出場で11本塁打を放ち、目標とした2ケタ本塁打をクリアした。

 今季の目標は「20本塁打」。4月16日のロッテ戦(ZOZOマリン)で勝利に結びつく同点の1号ソロを放ったものの、5月の24試合に本塁打はゼロ。

 そんな時に、森から貴重なアドバイスをもらった。

「そんなに振らなくてもいいし、打球の角度もつけなくていいよ。打率を上げたら本塁打にも繋がると思う」

 打撃練習の取り組み方も教わり、4月に.269だった打率は、5月の月間打率は.369で、5月末の打率を.331にまで押し上げた。

 森は「捉えれば本塁打を打てるバッターですし、率を上げたら本塁打は増えると伝えました」と語る。

 また、打撃練習について「打撃投手の方は、打ちやすい球を投げてくれますので、それを強引に打っていると試合で打てなくなると自分では思っているので、丁寧に投げてくれるからこそ、丁寧にしっかりと打ち返すように考えています」と自身の考えを伝えたという。

「全打席、本塁打を打ちたいと思って打席に立っています」という頓宮だが、「森さんのアドバイスのように、センター中心に打ち返して打率も上がりました」と感謝する。

 本塁打は、1試合2本を含め6月に7本塁打と量産。

「打球の角度もそのうちについてくると気にせずにいたら、たまたまポンポンと出てくれました。打率は減っていくものなので、首位打者などは意識していません。本塁打は減らないので、増やしていきたいですね」

 早出特打ちの常連で、練習を大事にしてきた。「フリーバッティングや試合の準備など、毎日同じことをやって、結果が出る出ないにかかわらず、ルーティーンだけはしっかりとやっていこうと思います」と常々、語っていた頓宮。

 メジャー挑戦中の吉田正尚(レッドソックス)の助言を受ける一方で、首位打者のタイトルを持ち、170センチの身体で通算110本以上の本塁打を記録している森のアドバイスで意識を変えたことが、飛躍につながった。


◆ オールスターファン投票でパの一塁手部門1位で初選出
 
 岡山県備前市出身。実家が日本のエース、山本由伸と隣同士で、同じ少年野球チーム(伊部パワフルズ)に所属した。プロ入り後にバッテリーを組んだこともあり、山本が「不思議な縁を感じますね」と言えば、頓宮も「かわいい後輩です」と返す仲。

“岡山愛”も深い。国産ジーンズ発祥の地、岡山をアピールするため、契約更改の記者会見にデニム生地のスーツ姿で現れたことも。今年のキャンプでは、地元のスポーツ用品店で作ってもらった「桃太郎」のイラスト入りのTシャツで自主練習を行った。

 「備前焼などで備前市も知られていますが、もっと知ってもらいたくて」と頓宮。

 今季、キャンプ、オープン戦の序盤戦で好調をキープしていたが、3月7日の韓国との強化試合で左ハムストリングスの筋損傷で戦列を離脱。

 しかし、翌日には舞洲の球団施設に姿を見せ、出来る範囲でのトレーニングを始めた。3月末の2軍戦に出場し、チームの開幕には間に合わなかったが、4月5日のソフトバンク戦(京セラD大阪)から復帰。翌6日行われた、岡山出身のオリックスファンで、松竹芸能所属の漫才コンビ「チキチキジョニー」の石原祐美子さんの特別始球式に、捕手として出場しイベントの盛り上げに一役買った。

「マイナビ オールスターゲーム2023」ではパの一塁手部門で、ファン投票1位で初選出された。

「一生懸命やってきた結果で選んでいただき、うれしいです。フルスイングで本塁打を打ちたいですね」

 昨年の球宴期間中は、家族サービスで訪れた温泉旅館で、宗佑磨や杉本裕太郎の打席をテレビで観戦していたそうで、その時、今年に選ばれるとは思ってもいなかったという。

 ヒーローインタビューのお立ち台でおなじみになった「ほいさー!」を叫ぶことが出来れば、投票してくれた野球ファンへの恩返しになるとともに、全国区へのアピールにもつながる。

 しかし、本塁打を放ってもスタンドに呼び掛ける「ほいさー!」は封印するという。

「控えておきます。今もやっていないんで」

 ペナントレースも残り、約半分。結果に一喜一憂することなく、シーズンを通してチームの勝利に貢献する。そんな決意を感じさせた。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき

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