「素晴らしい決断」砲丸投げ選手が急遽ハードル走に出場 最下位でも懸命に走り抜く(ポーランド)<動画あり>

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2023年07月07日 21:11  Techinsight Japan

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砲丸投げの選手にもかかわらず、負傷した選手の代わりにハードル走へ出場することを決めたベルギー代表選手。スタートダッシュから他の選手に大きく後れを取った(画像は『The EOC: home of the European Games & EYOF 2023年6月25日付Instagram「What lengths would you go to help a teammate out?」』のスクリーンショット)
去る6月24日、ポーランドで行われたヨーロッパ陸上チーム選手権大会のハードル走にて、他の選手に大きく後れを取って最下位でゴールした女性選手がいた。実は本来、彼女の出場競技は別種目であり、ハードル走に関しては「門外漢」であった。実際のレースの様子を捉えた動画には、明らかに他のハードル走選手とは異なる走り方、ハードルの越え方をする一人の女性選手の姿が映っている。それでも必死に走り切り、笑顔でゴールしたこの選手に対し、他の選手や観客から称賛の拍手が送られた。一体なぜこのような事態が発生したのか。また最下位になるであろうことはおそらく承知の上で、専門外のハードル走に出場したこの女性選手の思いとは? 米ニュースメディア『CNN』などが伝えている。

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6月20日から25日にポーランド南部シロンスク県ホジュフにある競技場「Slaski Stadium」で開催された「ヨーロッパ陸上チーム選手権大会(2023 European Athletics Team Championships)」にて、100メートルハードル走での出来事が大きな話題を呼んでいる。

同競技に出場予定だったベルギー代表のアンヌ・ザグル選手(Anne Zagré)が、負傷のため棄権せざるを得なくなってしまった。ヨーロッパ陸上チーム選手権大会は国対抗の大会であるため、アンヌ選手以外にも失格の選手が出るなど不運が重なっていたベルギーチームは、得点の関係でこれ以上の欠場者を出すわけにはいかない状況に追い詰められていた。

「誰でもいいから出場しなければ」という状況で声を掛けられたのは、ベルギー代表の砲丸投げ選手として今大会に参加していたジョリーン・ボムクウォ選手(Jolien Boumkwo、29)だった。前日に出場した砲丸投げで16人中7位で競技を終えたジョリーン選手は「チーム(の勝利)は私にとって一番大切なことです。たった1点の差で負けるわけにはいきません」と、二つ返事でハードル走に参加することを了承した。ジョリーン選手のコーチも「ケガをしないよう、注意して参加するのであれば」と参加許可を出した。


実際にハードル走に出場したジョリーン選手を捉えた動画には、スタートラインに立ち、カメラに向かって笑顔で手を振る彼女が映っている。スタートの合図が響くと、“本職”のハードル走の選手たちが一斉にスタートダッシュを切り、軽やかに次々とハードルを飛び越えていく。そんな中、一番端のコースを走るジョリーン選手のスピードは駆け足程度で、ハードルの前で減速すると片足ずつハードルを越えている。

他の選手との差が大きく開いていくが、今回は順位ではなく出場すること自体に意味があるため、ジョリーン選手はケガをしないようにいくつものハードルを慎重に、しかし確実に飛び越えていく。その結果、ジョリーン選手は1位の選手から約19秒遅れの32.81秒でゴールした。最下位であった。しかし、このジョリーン選手に対し、他の選手たちはハイタッチをしたり握手をしたりしてその健闘を称えた。

ベルギー国内の大会で12度もチャンピオンに輝いた実力を持つジョリーン選手は「ちょっと怖かったですし、ハードル走はあまり好きな種目ではないですね」と本音を打ち明けたが、普段のトレーニングで時折、ハードル走をしていると報道されている。また、「本当は歩いて参加しようと思っていたのですが、アドレナリンが出て少し走ってしまいました」とも話しており、チームメイトや観衆の声援が大きな励みになったという。

この映像がネット上でシェアされると大きな話題を呼び、「これほど最高なチームメイトが他にいるか?」「私だったら最初のハードルで顔から転びそうだ」「素晴らしい決断だよ」「真のスポーツマンシップを持った選手だ」「素敵なストーリーだね」など、ジョリーン選手の行動に大絶賛の声が寄せられた。

国内大会で何度も優勝経験を持つジョリーン選手だが、今回大きな注目が集まったことに「こんなに有名になったのは初めてですよ。本当にびっくりですね」と喜んだ。「たくさんの素敵なメッセージが届いていて、信じられないです。本当に驚いています。この瞬間をもう少し長く楽しみたいですね」と、ジョリーン選手は予想外の大反響の余韻を楽しんでいるそうだ。

今大会はベルギーにとってトップリーグ残留が掛かった大事なものであったが、ジョリーン選手のこの貢献だけでは勝ち点が足りず、16か国中14位となり、トップリーグからの降格は避けられなかった。

ちなみに昨年5月には、徒競走でスタート直後に靴が脱げてしまった7歳少女が、履きに戻るも諦めずに走り1着でゴールした瞬間を捉えた動画がネット上で拡散され、大きな話題を呼んでいた。



画像は『The EOC: home of the European Games & EYOF 2023年6月25日付Instagram「What lengths would you go to help a teammate out?」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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