死んだ我が子を2日間世話した動物園の母ザル、死骸を食う(チェコ)<動画あり>

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2023年07月08日 05:11  Techinsight Japan

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2020年4月に撮影されたチェコ共和国の動物園「ドヴール・クラーロヴェー・サファリパーク」のドリル(オナガザル科のサル)の親子。このたび、同年8月に誕生した赤ちゃんの共食いの研究記録が公開された(画像は『Safari Park Dvůr Králové 2020年4月21日付Instagram「Přesně minulý týden se u drilů černolících narodil nový člen.」』のスクリーンショット)
霊長類学に関するジャーナル『Primates』に先月27日、チェコ共和国の動物園で2年前に起きたドリル(オナガザル科のサル)による赤ちゃんの共食い(カニバリズム)の記録が公開された。母ドリルは死んだ我が子を2日間世話した後、死骸を食べ始めたそうで、研究者は「共食いには理由がある」と述べている。科学ニュースサイト『Live Science』などが伝えた。

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チェコ共和国の動物園「ドヴール・クラーロヴェー・サファリパーク」で2020年8月24日、ドリルの“クマシ(Kumasi)”がオスの赤ちゃんを出産した。クマシは当初、積極的に抱っこするなどして甲斐甲斐しく世話をしていたが、赤ちゃんが被毛を掴んだりおっぱいに吸いつくことはなく、健康面で問題があるように見えたという。

そして8日後、赤ちゃんは突然死んでしまい、クマシは2日間、死骸を自分の近くに置いて世話を続けた。その間、死骸を運びだそうとする飼育員から逃れるように移動し、動かなくなった赤ちゃんからの反応を待つかのように毛づくろいや観察を続けたそうだ。


ドリルの群れを観察していた研究者は「クマシは赤ちゃんが死んだことを受け入れられずにいたか、赤ちゃんが死んだのかどうか確証が持てないようだった」と明かしており、こう続けた。

「クマシと仲間たちは、死んだ赤ちゃんに顔や目を近づけて視線を合わせようとしていた。こうすることで、サルや猿人類は死んだ仲間の目の動きを観察している可能性があり、目と目が合わなければ『何かがおかしい』という合図と考えるのだろう。」


こうしてクマシは次第に落ち着かなくなり、死骸を引きずったり、投げ飛ばしたりする様子が見られるようになった。そして9月3日、ついに死骸をむさぼり始め、そのほとんどを自分だけで食べてしまった。残っていたのは頭蓋骨、脚、尻尾の一部で、翌4日、いたたまれなくなった飼育員はサルの囲いから死骸を取り出したという。

なおこの研究論文の共著者で、イタリアのピサ大学で霊長類学を研究する生物学者であるエリザベッタ・パラギさん(Elisabetta Palagi)は「人間は共食いを恐ろしい行為と捉えがちだが、クマシが死んだ息子をむさぼり食ったのには正当な理由がある」と推測し、次のように述べている。

「母親は共食いをすることで、妊娠中に失った体力を回復させ、将来の生殖が成功するチャンスが増える。母親が他の仲間と死骸をシェアしなかったことは、共食いで栄養的な恩恵を受けているという仮説を裏付けるものである。」

さらに研究では、「赤ちゃんがまだ生後間もなく、双方の愛着が形成されなかったことも共食いに走った原因のひとつだろう」と指摘し、「動物園で飼育されていたことが共食いにつながったとは考えにくい」と続けた。



画像は『Safari Park Dvůr Králové 2020年4月21日付Instagram「Přesně minulý týden se u drilů černolících narodil nový člen.」』『Live Science 2023年7月3日付「Zoo monkey eats her baby’s corpse after carrying it around for days」(Image credit: Primates/Casetta et al. 2023)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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