ウクライナの若者たちに、日本のコスプレ文化に触れてもらう - アイディア高等学院の取り組み

0

2023年07月28日 11:21  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
祖国ウクライナを追われた若者たちに、日本のアニメ、ゲームなどに親しんでもらう――。そんなユニークな取り組みが都内で始まっている。関係者は「戦争の辛い記憶を胸に留める彼ら彼女らに、何か熱中できる趣味を見つけてもらうのは大事なこと。その先の人生においても、大きな救いになると思うんです」と説明する。

○■コスプレ文化に興味津々!



筆者が取材に訪れた日、教室では日本の”コスプレ文化”についてレクチャーが行われていた。主催者は、通信制サポート校のアイディア高等学院(東京都渋谷区)。同校の理事長を務める浮世満理子氏が、一般社団法人全国心理業連合会 ウクライナ 心のケア交流センター ひまわりの代表を務めていることから、日本人だけでなくウクライナの若者たちにも授業を行うようになったのだという。


もともとレギュラーの授業以外にも、生徒の興味と視野を広げるカリキュラムを実施してきたアイディア高等学院。そのひとつ「アニメ・ゲーム 社会心理研究コース」は、ストーリーテリング 代表取締役のイシイジロウさんが担当している。


そしてこの日、コスプレ文化について語ったのはゲスト講師のハヤカワ五味さん。現役コスプレイヤーであり起業家でもある彼女の解説に、ウクライナの若者たちは熱心に耳を傾けた。


「そもそもコスプレとは」「その市場規模は」「発祥となった国は」と、矢継ぎ早にコスプレ概論を展開していくハヤカワさん。コスプレの楽しいところについては「こだわりをぶつけながら黙々と衣装を製作する時間、ほかのレイヤーさんと推しを語る時間は非常に楽しいものです。またロケ地を探して各地の美味しいものをめぐる、大好きなシーンを再現して撮影する、というのも何事にも代えがたい経験になります。そして何より、推しの衣装が家にあるということ自体が幸せです」と話す。



コスプレのNG行為について触れることも忘れない。「近年、外国でもコスプレ人気が高まっていますが、日本ではルールが厳しいので注意してください」とハヤカワさん。具体的には、公共の場で許可なくコスプレしない、イベントでは原則としてトイレでは着替えない、撮影は許可をとってから、しっかり露出対策をする、といったポイントをあげていく。そのうえで「すべての著作物には著作権があることを忘れないでください。本来、作品に渡るべき利益を阻害する行為は絶対にダメです」とコスプレイヤーの心得を諭した。



講義の後半には、ウクライナの若者からは意欲的な質問が相次いだ。それは「渋谷のハロウィンには参加できますか」「コスプレのイベントカレンダーはありますか」といった興味本位のものから、より踏み入った「何歳までコスプレに参加できますか」「公園でコスプレの撮影をしたいのですが、何処で手続きをすれば良いですか」「衣装を縫いたいのですが、ミシンを貸してくれるサービスはありますか」というものまで様々。日本に避難してくる前、ウクライナでアニメのコスプレをしていた、という女性もいてハヤカワさんを喜ばせた。

○■気になる今後の展開は?

講義の終了後、イシイジロウさん、ハヤカワ五味さんに話を聞いた。



――今回、授業のテーマに”コスプレ”を選んだ理由は?



イシイジロウさん:実は、ウクライナの若者からリクエストが多かったんです。かねてから「日本のゲーム業界にインターンしたい」「アニメについて勉強したい」といった声は寄せられていました。日本文化への関心の高さがうかがえますね。ゲームについては先日講義したので、今回はコスプレを取り上げよう、という流れでした。



――いま国内でも、外国人のコスプレイヤーは増えているんでしょうか?



ハヤカワ五味さん:見に来てくれる外国人は増えていますね。まだレイヤー側では増えていない印象です。



――アニメや映画のキャラクターに成り切ることで、戦争のことを忘れられる、心の傷が癒やされる、そんな効果もありますか?



ハヤカワ五味さん:これは勘違いされやすいところなんですが、キャラクターになりたくてコスプレする人って、実際、そんなに多くないと思うんです。どっちかと言えば、その作品が好きだから、世界観に入り込みたいという意識なんですね。そして熱中できる作品を、熱中できる者同士で語りたい。たとえば、サッカー好きがサッカーバーで『あのシュート最高だったよね』と語り合う、そんな感覚に近いと思います。



――今後、外国人がコスプレイベントに参加する期待感のようなものはありますか?



ハヤカワ五味さん:これは作品にもよるのですが、実は海外ファンの方が関心が高いケースもあるんです。私が好きなゲーム、たとえば『女神転生』も海外のファンが非常に多く、そのコスプレをTwitterにアップすると外国語のコメントで溢れたりします。オタクは世界規模でいるんだな、と思う次第です(笑)。色んな作品を好きな、色んな国の人が集まる、そんなコスプレイベントが実現したら楽しそうだな、って思いますね。



――次回、コスプレ衣装を用意して”実践編”をするアイデアもありますか?



イシイジロウさん:ハヤカワさんの都合がつけば、それも面白いですね(笑)。カメラマンの知り合いを連れてきて、スタジオをめぐったり。教室の外に出て楽しむイベントもやれたら良いですね。



――ありがとうございました。



近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら(近藤謙太郎)

    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    オススメゲーム

    ニュース設定