21歳でアーセナル新記録を樹立! ブカヨ・サカのプレミアリーグ83試合連続出場を深掘り

0

2023年08月30日 18:37  サッカーキング

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

サッカーキング

アーセナルで主軸として活躍中のサカ [写真]=Getty Images
 アーセナルのイングランド代表FWブカヨ・サカは、どこまで記録を伸ばせるのだろうか?
 
 今月26日、弱冠21歳のサカがクラブ記録を打ち立てた。プレミアリーグ第3節のフルアム戦にフル出場したサカは、これでリーグ戦83試合連続での出場。2021年5月から試合に出続けている若きウインガーは、アーセナルのプレミアリーグにおける連続試合出場記録を更新したのである。
 
 わずか21歳にして、アーセナルのクラブ新記録を樹立したサカ。それでは、この記録がどれだけ凄いものなのか詳しく見てみよう。

[写真]=Getty Images
 
■サカの足跡


 
 7歳からアーセナルのアカデミーに所属するサカは生え抜きのスター選手だ。2018年に17歳にしてトップチームデビューを果たすと、2019−20シーズンから出場機会を増やしていく。デビュー当初のサカは万能性を売りにしていた。左利きの同選手はサイドバック(SB)からウイングバック(WB)、ウイング(WG)までどこでもプレーできたため、便利屋として色々なポジションで起用された。2019−20シーズンは本職のWGではなく左SBとしての出場が多く、翌2020−21シーズンには両サイドのWGやSB以外に、インサイドハーフ(IH)としても試合に出場した。
 
 高いユーティリティー性を誇るサカは、同世代の選手の中では出場機会が多かったものの、当初はそのまま“器用貧乏”で終わることも懸念された。アタッカーから左SBにコンバートされた経験を持つアーセナルOBの元イングランド代表DFアシュリー・コール氏は「3つ、4つのポジションをこなせるのは素晴らしいが、そのせいで雑に扱われているようにも見える。1つのポジションに定着しないと、真の一流プレーヤーになるのは難しいと思う」と後輩の将来を心配していた。
 
 だが、当のサカ本人は懸念されていた“雑な扱われ方”を上手く利用したという。左SB起用が多かった18歳の頃、サカはクラブにこう語っていたのだ。「これまで練習してこなかったクリアやヘディングといったことも磨いている。将来的にWGに戻った時にSBとしてのプレーが活きてくると思う。相手のSBがどんなプレーを嫌がるのか分かるからね」
 
そして実際にWGに戻ったとき、一回りも二回りも成長していた。昔から恐ろしいほどに落ち着いていたが、ボールを奪われないキープの仕方を把握したこともあって一段と冷静さが増し、右サイドで抜群のキープ力を誇るようになった。積極的に仕掛けてボールも運ぶWGながら、極めてボールロストの少ない稀有な存在となったのである。
 
2020年にはイングランド代表デビューを果たすと、翌年のEURO2020では同国代表史上初の決勝進出に貢献。イタリアとのファイナルではPK戦で最後のキッカーを務め、相手GKジャンルイジ・ドンナルンマ(パリ・サンジェルマン)に止められてしまう悔しい経験もしたが、その後もイングランド代表の絶対的プレーヤーの一人に定着し、昨年のFIFAワールドカップカタール2022では4試合に出場して3ゴールを叩き出した。
 
サカはどんなに辛いことでも乗り越えて見せるのだ。先日のフルアム戦でも、開始直後にバックパスを奪われ自身のミスから失点を招いてしまったが、後半にPKのチャンスが訪れるとキッカーを志願し、強い精神力で見事に決めて見せたのだ。
 
■欠場しない


 
 そんなサカのプレミアリーグでの連続試合出場が始まったのは2021年5月のこと。最初のゲームは左SBとしての出場だった。翌2021−22シーズンは本職のWGに戻りプレミアリーグで全38試合(先発36試合)に出場して11ゴール7アシストをマーク。2シーズン連続でクラブの年間最優秀選手に選ばれた。そして昨シーズンは1試合を除いて全てのリーグ戦に先発出場し14ゴール・11アシストを記録。得点とアシストの両方で自己最多記録を打ち立て、チームの躍進に大きく貢献した。
 
 2シーズン連続でリーグ戦全試合に出場しているサカだが、これはアーセナルの選手としてはGKを含めてもプレミアリーグで初の快挙! 最後にアーセナルの選手として2シーズン連続でリーグ戦全試合に出場したのは1990−91、翌91−92シーズンの元イングランド代表GKデイヴィッド・シーマンだという。ちなみに、昨シーズンのサカはカラバオカップの1試合を除いた全ての公式戦に出場。実に48試合もピッチに立ち、チーム最多タイの15ゴールをマークしたのだ。
 
 敵の厳しいマークにあうWGというポジションで、大きなケガもなく試合に出続けられる存在は稀有だ。サカは昨シーズンのプレミアリーグで10番目に多くのファウルを受けた選手だが、それでも一度たりともケガで離脱しなかったのだ。恐らく、それは彼のプレースタイルのおかげだろう。ボールを貰うと即座に前を向いて敵と正対し、一度自身が止まることで敵DFの足を止める。そのため勢いよくぶつかられることが少ない。さらにSB時代の経験により、ぶつかられるタイミングを予見できるためファウルされる準備ができているのだ。
 
 そして、アーセナルを率いるミケル・アルテタ監督の方針もサカを後押しする。昨年10月に行われたヨーロッパリーグ(EL)のPSV戦でサカは一度ピッチに倒れ込むも、アルテタ監督は同選手を交代させなかった。それについて指揮官はこう説明した。「一流選手は1シーズンに70試合近く出場する。一流になりたければ、それができないといけない。若手選手にそれ以外の考え方を与えるのは間違っている。彼らには『監督、試合に出たいです。勝ちたいです』と言うような選手になって貰いたいんだ」
 
 こうしてサカは先週末のフルアム戦でプレミアリーグ83試合連続出場というクラブ記録を達成したのである。これまでのアーセナルの記録は1995年から1997年にかけて元イングランド代表MFポール・マーソン氏が打ち立てた82試合だった。驚くべきことに、マーソン氏はアルコールと薬物依存症により3カ月間のリハビリ生活を送り、ようやく1995年2月に復帰すると、そこから2年間もリーグ戦に出続けたのである。
 
 プロ意識の高い現在のサカとは正反対に思えるが、そんな二人には同じ高校出身(ロンドンのグリーンフォード・ハイ・スクール)という共通点がある。
 
■今後の記録


 
 果たしてサカは、どこまで連続出場記録を伸ばせるのか? プレミアリーグの記録を打ち立てるとなると先は長い。同リーグの連続出場記録を持つのは元アメリカ代表GKブラッド・フリーデルだ。2004年から2012年まで3クラブを渡り歩き、8年間で310試合もピッチに立ち続けたのである。フィールドプレーヤーがこの記録を抜くのは非現実的なので、GKを除いたプレミアリーグ記録を見てみよう。
 
サカの「83試合」というのはリーグ全体で見るとフィールドプレーヤーとしては28番目の記録に過ぎず、まだまだ上には上がいる。例えば、元オランダ代表FWロビン・ファン・ペルシー氏はアーセナルとマンチェスター・ユナイテッド時代を合わせて連続「90試合」に出場したことがある。今夏にサウサンプトンからウェストハムに加入したイングランド代表MFジェームズ・ウォード・プラウズは、何と過去に「102試合連続」で出場したことがあるのだ。
 
 そしてフィールドプレーヤーとしての最多連続出場記録を持つのは元イングランド代表MFフランク・ランパードだ。チェルシー時代に2001年から2005年まで実に5年間もリーグ戦に出場し続け「164試合」という偉大な記録を打ち立てたのである。
 
 サカがランパードの記録に追いつくためには、あと2年以上も試合に出続ける必要がある。来月5日に22歳の誕生日を迎える若武者はどこまで連続出場を伸ばせるのだろうか? 今後もアーセナルの怪我をしないWGに注目だ!

(記事/Footmedia)

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定