ブラザー・コーン罹患の男性乳がん「遺伝性は発症リスクが80倍」専門医が教えるセルフチェック法

0

2023年09月03日 16:30  週刊女性PRIME

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週刊女性PRIME

ブラザー・コーン(2008年)

 8月29日、男性デュオ『バブルガム・ブラザーズ』のブラザー・コーン(67)が自身のSNSを更新し、乳がんであることを公表した。

「この度、私Bro.KORN(ブラザーコーン)は左胸にシコリが出来、病院で検査を受けたところ乳癌と診断されました」と報告。「乳癌は男性では本当に珍しいらしく、自分でも寝耳に水でした」とつづった。

 乳がんというと男性には無関係と思われがちだが、日本の乳がん登録者数のうち男性は591例。全体の0.6%と少数ではあるが存在する。男性にも乳腺組織があるため、乳がんを発症することは不思議ではないのだ。ただし、男性の乳がんには遺伝が関係している可能性が高いので要注意だという。がん・感染症センター都立駒込病院の外科(乳腺)・遺伝子診療科の有賀智之先生に話を聞いた。

「BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子という誰もが持っている遺伝子に、生まれつき特定の変異がある状態を『遺伝性乳がん卵巣がん症候群』といい、遺伝的に乳がんや卵巣がんなどにかかりやすくなります。親の遺伝子に変異がある場合、子どもには男女差なく2分の1の確率で受け継がれる可能性があるため、女性に限らず、男性でもこの症候群になりえます。男性の場合は変異がない人に比べて、乳がんや前立腺がん、膵臓がんなどの発症リスクが高まることがわかっています」(有賀先生、以下同)

80倍も乳がん発症のリスクが高くなる

 遺伝性乳がん卵巣がん症候群は、英語の頭文字をとって「HBOC」(Hereditary Breast and Ovarian Cancer) とも呼ばれる。乳がん全体のなかでのHBOCの割合は、女性の場合は約4%だが、男性の場合はそれよりも高いと報告されていて、なかでもBRCA2遺伝子変異との関連が強いことが知られているという。BRCA2遺伝子に生まれつきの変異がある場合は、変異のない男性よりも80倍も乳がん発症のリスクが高くなるとの報告もある。

 ただし、男性で乳がんになる人が全員、HBOCというわけではない。HBOCとは関係のない男性の乳がんも多く、ブラザー・コーン氏の場合もHBOCかどうかはわからない。しかし、近年になってHBOCと診断される人が急増しているという。どういうことなのか。

HBOCかどうかを確かめるためには、血液を検査して遺伝子変異があるかどうかを調べる遺伝学的検査を受ける必要があります。これまでは全額自己負担で受けなくてはならなかったのですが、2020年から一定の条件を満たす場合に保険で検査ができるようになり、これまで診断されなかった人が診断されるようになったため、結果的に人数が増えていると言えます。2015年と比べると、HBOCと診断された人数は10倍以上になっています」

遺伝的に乳がんになりやすいか、セルフチェックシートで確認

「自分がHBOCかどうかを知ることはとても重要。HBOCと診断された場合、発症リスクの高いがんの予防や早期発見するための検査を受けることができます。HBOCの特徴に合わせた予防法や定期検査、発症後の治療をすることで、がんで亡くなる可能性を減らすことができるはずです」

 とはいえ自分がHBOCだと気づいていない人はまだまだ多い。

「特に男性は、自分が遺伝性の乳がんの疑いがあるとは思わない人がほとんどですから、女性より気づきにくいと思います。男性にとっても自分がHBOCかどうかを知ることは、発症リスクの高いがんの早期発見に役立つので、大事なことだと思います」

 自分がHBOCの可能性が高いかは、次のセルフチェックで確認できる。

「一つでも当てはまる人は」HBOCセルフチェック

Q.あなたの両親、兄弟、祖父母、おじおば、おいめいに、以下に当てはまる人はいませんか?
□卵巣がんになった人がいる
□乳がんになった人で、下記に当てはまる人がいる
 ・45歳以下で診断された
 ・60歳以下でトリプルネガティブ乳がんと診断された
 ・2個以上の原発性乳がんと診断された
 ・男性で乳がんと診断された

 上記にひとつでも当てはまる人は、男性でも女性でも、HBOCの可能性がある。気になる人は、まずはその血縁者にすでに遺伝子検査を受けたかどうか、聞いてみてはどうだろう。その血縁者は保険診療で検査を受けられる可能性が高いので、もしまだ受けていない場合は検査をすすめてみるのもひとつの手だ。

「すでに亡くなっているなど、検査を受けたかどうか聞ける状況にない場合は、ご自身が検査を受けたほうがいいか、遺伝子診療科のある病院で相談してください」


有賀智之医師
がん・感染症センター都立駒込病院 外科(乳腺)・遺伝子診療科所属。日本遺伝性腫瘍学会理事。日本乳癌学会評議員・指導医・専門医。

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定