なぜマツダはロータリーエンジンを復活させたのか - しかも役割は発電機?

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2023年09月15日 11:31  マイナビニュース

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マツダの新型車「MX-30 ロータリーEV」は、発電機としてロータリーエンジンを搭載するシリーズ式プラグインハイブリッド車(PHEV)だ。それにしても、なぜマツダは今になってロータリーエンジンを復活させたのか。普通のレシプロエンジンではダメだったのか。事前取材会で話を聞いた。


○ロータリーエンジンは小さいから?



エンジンを発電機として使うハイブリッド車(HV)といえば、日産自動車の「e-POWER」というシステムが思い浮かぶ。例えば日産自動車のコンパクトカー「ノート」 は、1.2Lの直列3気筒エンジンとモーターを組み合わせたシリーズ式ハイブリッド車だ。



「MX-30 ロータリーEV」は17.8kWhのリチウムイオンバッテリーを積んでいて、外部からも充電できる。だからシリーズ式の「プラグイン」ハイブリッド車というわけだ。充電しておけば電気自動車(バッテリーEV=BEV)のように電気だけで走ることができるし、バッテリーが切れてもロータリーエンジンで発電して走り続けられるところが魅力だ。


マツダには普通のレシプロエンジンもあるのに、あえてロータリーエンジン搭載のPHEVを作ったのはなぜなのか。実際的な、プラクティカルな理由としては、ロータリーエンジンの小ささ、軽さが挙げられる。



MX-30 ロータリーEVが搭載する新型ロータリーエンジン「8C」型は、マツダの直列4気筒ガソリンエンジンに比べ部品点数が約半分だ。具体的にはガソリンエンジンが1,397点であるのに対し、8C型は726点で作れるという。



MX-30というクルマには、もともとマイルドハイブリッド車(MHEV)とBEVがある。MX-30のBEVバージョンと同じクルマのサイズでPHEVを作れたのは、ロータリーエンジンが小さいからだ。MX-30主査の上藤和佳子さんはこう語る。



「もともと、MX-30には3種類のパワートレイン(MHEV、BEV、PHEV)を載せることが決まっていました。モータールームのサイズも決まっていたので、限られたスペースに収めようと思うと、小さくて、それでいて要求される出力を満たせるエンジンが必要になります。それでロータリーが大きな選択肢となりました。最初から企画が決まっていたので、レシプロエンジンと比較して最終的にロータリーを選んだわけではなく、最初からロータリーありきで開発が進みました」


○マツダにとって大切な技術だから?



ロータリーエンジンの復活には、プラクティカルなもの以外にも大きな理由がある。もっと情緒的なというか、マツダのブランド価値向上にもつながるような理由だ。このあたりについて、マツダ 専務執行役員兼CTOの廣瀬一郎さんはこう語る。



「マツダの規模を考えたとき、電動化の時代を前に、『ロータリーエンジンの開発に力を入れている場合なのか』と思う方も多いかもしれませんが、『ロータリーエンジンの火は消さない』という強い意志でユニットを開発しました。それはなぜか。マツダにとってロータリーエンジン開発の歴史は会社の歩みそのものでもあり、『飽くなき挑戦』の価値観は、この歴史の中で培ってきたものです。その時代時代に先達たちが、技術で常識を打ち破り、お客様に新たな価値を提供し続けてきました。この価値観はマツダのアイデンティティそのものであり、未来に受け継がなければなりません」


ロータリーエンジンは世界でマツダだけが量産化に成功した技術だ。これを作り続けることで、電動化の時代に向けて同社のアイデンティティを継承していきたいということなのだろう。「ロータリーエンジンは次世代に向けたマツダのスピリットを示すものです。数字では示せない、マツダという組織にとって欠かすことができない、とても大切な存在です」と廣瀬CTOは話していた。数字(たくさん売れるか)だけではない大事な役割をロータリーエンジンは担っているのだ。


○拡張性も重要?



「独自の技術資産を時代の要求に適合させて将来につなげる、発展性、拡張性をにらんだ提案でもあります」。この廣瀬CTOの言葉からもわかる通り、ロータリーエンジンは将来的に、別の燃料を使って、別の役割を担う可能性もある。というのも、このエンジンはガソリンだけでなく、CNG、LPG、水素、カーボンニュートラル燃料など、さまざまな燃料で回転させることが可能だからだ。


「電動車もワンアンドオンリーのマツダらしい形で」(廣瀬CTO)進めていきたいというのが同社の方針。ロータリーエンジンという独自の技術を活用し、さまざまな燃料との組み合わせでカーボンニュートラルの時代に乗りだそうというマツダにとって、MX-30 ロータリーEVは決意表明のようなクルマなのかもしれない。(藤田真吾)
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