
漫画家でタレントの蛭子能収(よしかず)さん(75)が描き下ろした新作の絵画19点を展示する個展「最後の展覧会」展が、東京・南青山の「Akio Nagasawa Gallery Aoyama」で開かれている。
【写真複数】蛭子能収さんが描いた作品。タイトルは「ぜったいあるたいとる」「おれはこっちだと思う」などユニークだ。
蛭子さんは、2020年7月、レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の合併症だと公表した。
その後も症状は進んでおり、現在は介護事業所のデイサービスに通い、通院もしながら、テレビや雑誌などの仕事を続けている。
独特の作風で「ヘタウマ漫画家」として知られているが、医師から仕事の時間を制限されていることもあり、漫画を描くことからは遠ざかっているという。
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今回の展覧会は、蛭子さんと長いつきあいがある雑誌の編集者や漫画家らが企画した。昨秋以降、蛭子さんの状態に合わせて制作を進め、今年8月、完成にこぎつけた。
約6年ぶりとなる今回の展覧会では、漫画とは異なるタッチの抽象画が並ぶ。
監修したのは、蛭子さんと約40年のつきあいがある「特殊漫画家」の根本敬さん(65)。蛭子さんの絵をこう語る。
「うまく描こうとか人を驚かせようという欲がなくなり、純粋な芸術家としての素の蛭子さんが表現されている。『生きること』が内包するはかなさを突きつけられますが、幸せな気持ちにもさせてくれる。認知症の蛭子さんにしか描けない絵です」
展覧会が始まる前日の今月6日、会場に旧友らが集まり、蛭子さんと言葉を交わした。握手する蛭子さんの表情がほころんだ。
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19点の中には、サインペンで描かれた絵も2点ある。根本さんに促され、鉛筆を握った蛭子さんは、展示された絵に向かうと、「えびすよしかず」とサイン。立ったまま絵を描き加え、「できたよ」などと書いた。
「絵を描いているときはキツイこともあったし、思い通りにいかんこともありました。でも、本当にうれしい」と蛭子さん。
9月30日まで。午前11時〜午後1時と午後2時〜午後7時。日曜〜火曜と、祝日は休み。(森本美紀)
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