
Q. 最近よく金縛りにあいます。お祓いをした方がいいのでしょうか?
睡眠中に突然突如訪れる「金縛り」。人の気配がしたり、耳鳴りがしたり、息苦しさを感じたりして、周りを確認しようとしても目が開かず、体が動かせず、声も出せない。旅行先で金縛りにあって、霊が見えたといった話も聞きます。
何が起こっているのでしょうか?
Q. 「最近よく金縛りにあいます。体が動かせない間はとても息苦しく、部屋のすみに人の気配がしたり、普段はない耳鳴りがしたりして、とても怖いです。金縛りが続くときは、お祓いなどを受けた方がよいのでしょうか?」
A. よくある生理的な現象にすぎず、お祓いは不要です。生活を整えましょう
「金縛り」はいわゆる心霊現象として語られることも多いですが、誰にでも起こりうる生理的な現象にすぎません。睡眠は、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2種類に分けられます。入眠時には大脳の活動がだんだん低下して、体も脳もぐっすりと休んだ状態の「ノンレム睡眠」になっていきます。
ノンレム睡眠が1時間ほど続くと、体は休んだままの状態で、大脳が活動を再開します。このとき私たちは夢を見ていることが多く、眼球がぐらぐらと素早く動くのが認められる「レム睡眠」の状態になります。
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レム睡眠が数分〜数十分間続いた後、再びノンレム睡眠となります。このノンレム睡眠とレム睡眠が、一晩の間に4〜5回交互に訪れるのが、通常の睡眠です。
問題の「金縛り」は、ずばり「レム睡眠」の状態そのものです。レム睡眠中は大脳が活動していますので、様々なイメージが知覚されることがあります。
誰かの姿が見えたり、声が聞こえるように感じるのも、すべては「夢」の一部であり、現実ではありません。
しかもこのとき、体を動かす筋肉は完全に弛緩しているので動こうと思っても動けません。声を出すためには「声帯」という筋肉を動かさなければなりませんが、やはり筋肉が弛緩しているため声は出せません。
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睡眠の質がよければ、このレム睡眠の時の体の状態を自覚することは通常はありません。
しかし、何か悩み事や気になることがあったり、部屋が暑い、枕が合わないなど、睡眠環境がよくなかったりすると、レム睡眠中の睡眠が浅くなりすぎ、大脳が体の状態を自覚して夢が現実かわからないような物を知覚してしまうことがあります。
何かいやな夢を見て、その直後に目覚めて眠れなくなってしまった状態を、「金縛りにあった」と自覚するものと思われます。つまり、金縛りは、心の状態や体調を反映するものとも言えます。
ですから、もし頻繁に金縛りにあう場合は、現実での悩み事を解消し、疲労回復に努めるなどして、質の良い睡眠をとることが大切です。
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阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))