
アメリカでは救急車が盗まれる事件が起こっている。今年9月、セントルイスでは、救急車で病院に運びこまれた患者、退院するときに、目の前に停まっていた別の救急車を盗む事件が起きた。一方で古くなった救急車を正規の手続きをして2万ドル(約296万円)で購入し、車内でタトゥーを施術するという動くタトゥーショップとして使われているというニュースも報じられた。
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よく知られていることだが、アメリカでは救急車を呼ぶとお金がかかる。いくらぐらいかかるのだろうか。走行距離、必要とされる治療によっても金額が異なるが、米フォーブス電子版によると、2020年の平均的な救急車の使用料は940ドル(約13万9000円)から1277ドル(約18万9000円)とされていて、日本円で20万円程度かかることも珍しくないようだ。しかも、2017年から2020年にかけて23%値上がりしたという。
ただし、保険によってカバーされて、実質的な支払いはこの金額よりも少ない。保険によって、どのくらいの金額がカバーされるのかは、どのような保険に加入しているか、また、保険会社が救急搬送の必要性を認めたかなどによって違ってくる。
さまざまな種類の健康保険があるが、保険適用前に自己負担する金額が決められていることがある。例えば、年間2000ドル(約29万6500円)までは自己負担の保険ならば、それを超える医療費や救急医療については、保険が7割または8割を負担し、自己負担が3割または2割などとなる。また、特定の医療を受けたときに一定の金額を自己負担する契約もあり、救急車に乗ったときの自己負担額は100ドル(約1万4800円)、200ドル(約2万9600円)などと設定されているものもある。
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アメリカ政府も高額の救急車利用や救急医療を野放ししているわけではなく、2022年には緊急の医療サービスを受けたときに保険のプランを上回る差額請求を制限する法が施行された。それでも、民間保険加入者の平均的な支払いの平均金額は400ドル(約5万9300円)を上回るとミシガン大学は発表している。
民間の保険に加入していれば、救急車を利用しても、その全額を支払わなくてもよいケースが多い。しかし、保険がどこまでカバーしてくれるのかなどは、一般人にはわかりにくく、さらに救急車を呼ばなければいけない緊急事態に、その金額を算出するのは困難だ。
日本では救急車を呼ぶのは無料だが、不要不急の要請も一定数あるという。救急車の利用が有料になれば、本当に必要かどうか利用者が判断するため、不必要な利用を抑止できるのではないかと、SNSで議論になったこともあるようだ。救急車の使用に高額な費用がかかるアメリカでは必要なときにも呼ぶのをためらうこともあるだろうが、救急車両の不足、救急隊員の不足という全く別の理由で、救急車の要請に対し、十分な対応ができないというニュースも出ている。
(まいどなニュース特約・谷口 輝世子)
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