
無意識の何気ない発言に気をつける!
無意識に相手を不快にさせる一言を発してしまうというのは、誰もがする可能性のある失敗の一つ。「相手に自分の考えを伝える時に注意すべきポイント」について確認しておきましょう。
正しさは一つではない 今確認しておきたい3つのこと
自分が正しいと思うことを信じて、人に押し付けてしまう。私たちがやりがちな失敗を分かりやすく例えた「暗闇の象」という話があります。『あるところに数人の賢者がいました。彼らのうちの1人は暗闇の中で象の足を触ってこう言いました。「象とは太い丸太のような生き物だ」
すると違う賢者が象の胴体を触りながらこう言いました。「いや、あなたは間違っている。象とは大きな壁のような生き物だ」
すると違う賢者が、象の尻尾を触りながらこう言いました。「いや、2人とも間違っている。象とは縄のような生き物だ」』
自分が感じたことが全てではないこと、視点を変えれば違って見えること、そんな当たり前のことを忘れて、私たちは自分の信じる「正しさ」を振りかざしがちです。
「今まで、このやり方でやってきた」という成功体験をお持ちの方もいると思います。しかし、多様性を尊重することが創造性、イノベーション、チームパフォーマンスに影響するとの可能性を示す研究もあります(※1)。時代が変わり、多様性を尊重して共に働いていくというのは、もはや避けられない大きな流れになっています。
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1. 大前提として、さまざまな考え方や正しさがあること
2. 自分が間違っている可能性もあること
3. 多様性の尊重が重要な時代になっていること
この3つを肝に銘じておきたいものです。
「思ったことをそのまま口に出してしまう人」におすすめの対処法
自分の意見を、そのまま口に出してしまう人も、思いやりがないわけではありません。「自分の発言が誰かを傷つけるかもしれない」「誰かを不快にするかもしれない」「自分の発言が非難されるかもしれない」などの想像力が足りないため、悪気なく言ってしまうケースがほとんどだと思われます。
ついつい、思ったことを口にしてしまう。そんな自覚がある人におすすめなのが「想像力を働かせる訓練」です。自分の意見を言う前に、数秒でいいので「誰かを傷つけないだろうか」と考えることを習慣にしましょう。たったこれだけですが、攻撃的な発言を減らすことができます。
それでも効果がない場合、厳しい発言が必要だという信念を持っているケースが考えられます。
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最近ではパワハラとならないよう、より一層慎重に考慮して言動すべき時代になり、厳しく言うことのデメリットは、明らかにメリットを超えています。「厳しく言うのが当たり前」と考えている人は、この機会に考えを改め、穏やかに伝える方法に変えていきましょう。
穏やかに意見を伝える3つのポイント
(1)一拍おいてから発言する反射的に自分の意見を口にすると、意図せず誰かを不快にしてしまうリスクが高くなります。数秒でもいいので、これから言おうとしているフレーズが誤解されないか想像力を働かせましょう。一拍おいてから発言することを習慣づけることで、リスクを低減できます。
(2)他の考え方も認めていることを言葉で伝える
発言はあくまで自分の意見であり、他の考え方もあるということを伝えましょう。
例)「やはり昼休憩は12時からで統一したほうがいいと思います。これはあくまで自分の考え方ですし、他の考え方にもメリットはあると思うのですが」
(3)強要しないよう心がける
自分が正しいと信じていることであっても、人にその考え方を強要しないよう心がけましょう。それが上司と部下という関係であっても、先輩後輩であっても、親子であっても、強要するのは得策ではありません。態度変容には、強要は逆効果だと知っておきましょう。
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<参考文献>
(※1)Jackson, S. E., & Joshi, A.(2011). Work team diversity.
(※2)Harvey, S.(2013). A different perspective: The multiple effects of deep level diversity on group creativity. Journal of Experimental Social Psychology, 49(5), 822-832.
藤田 尚弓プロフィール
株式会社アップウェブ代表取締役。社会心理学領域のコミュニケーションの専門家として、企業研修や研究・執筆、早稲田大学オープンカレッジ講師、TVコメンテーターなど幅広く活動。日本社会心理学会、日本応用心理学会所属。(文:藤田 尚弓(話し方・伝え方ガイド))