映画『白鍵と黒鍵の間に』スペシャル・ジャズライブイベント(左から)南博、魚返明未、池松壮亮、松丸契、冨永昌敬監督 俳優の池松壮亮が2人のピアニストを演じ分ける映画『白鍵と黒鍵の間
【動画】映画『白鍵と黒鍵の間に』演奏シーンの一部を公開
に』(10月6日公開)のスペシャル・ジャズライブが27日、都内の名門ジャズライブハウスで開催された。
本作の原作者である南博、池松演じる博のキャバレーバンドの仲間役・K助を演じたサックス奏者の松丸契(まつまる・けい)、本作の音楽を担当したピアニスト、魚返明未(おがえり・あみ)とジャズ界を牽引する3人が出演。魚返と松丸によるピアノとサックスのセッションと、南は、本作のために書き下ろした劇中のエンディング曲をピアノ・ソロで披露した。自らも半年間のピアノ練習に励み、魚返がアレンジした「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を劇中で披露している主演の池松、冨永昌敬監督も一夜限りのジャズセッションの応援にかけつけ、トークイベントを行った。
照明が落ち、大人な雰囲気漂う会場内は満席の客入り。早速、本作の原作者でもある南が登場すると、場内からは大きな拍手が。「映画の原作者でジャズ・ミュージシャンをやっております。この映画のクロージング曲を作曲しましたので、それを演奏しようと思います。曲名は“Nonchalant”。師匠からの言葉で、フランス語になるんですが、日本語で言うと軽妙にとか、軽快に、という意味合いになります。実はたくさんの意味があって、なかなか訳すのが難しいんです」と満席の場内にむけてこれから演奏する曲を自ら紹介。
さらに、イベントの始まりにも関わらず「なぜ始めにクロージング曲を演奏するのか分からないのですが(笑)」と、場内の笑いを誘いながら、スッと体をピアノの正面に向けて演奏準備に入った。その流れるような美しい所作は、これまで幾度となく繰り返し、長い時間をかけて自らの身体に染み込ませた圧巻のオーラをまとっていた。劇中にも何度も登場する「ノンシャラントに」というせりふに込めた思いを体現する、軽快で軽やかで、かつ繊細な美しいピアノの音色で場内は満たされた。演奏直後、南氏は「本が映画になったので、どちらも楽しんで」と茶目っ気たっぷりにコメントし、颯爽と舞台を去っていった。
その直後、本作で南と博の二役を演じた主演の池松と冨永監督が登場。南の演奏に「素晴らしかったですね。本編で初めてこの曲を聞いたんですけど、それ以来で。本当に素晴らしかったです」と池松は感動しきり。冨永監督は「本の中で、実際に南さんが、師匠から“ノンシャラントに”という言葉を贈られたことがエピソードして書かれていて。これは絶対に映画の中で描こうと思っていました。南さん自身の大事なエピソードとして受け取りましたし、映画の中でも実際にそう言うシーンを描いています」と、補足した。
劇中、一人二役という難しい役どころでもある中で実際にピアノ演奏も披露した池松。二役という役作りについては「あまりないことなので、二役できることを楽しもうと思っていました」とコメントしつつ、ピアノ演奏については「半年間、練習しました。すごくかっこいい編曲を魚返さんがしてくださったので…やります、と言ったことを何度後悔したか。楽譜も読めないから指の動きで覚えたりして…劇中にも何度も登場するせりふで“俺は一体なにをやっているんだ”という言葉があるんですけど、まさに“俺は一体なにをやっているんだ”と思ってましたね」とかなりの苦労があった事を告白。
そんな演奏を現場で聞いた冨永監督は「大変なことをお願いしているのは分かっていたけど…」と前置きしつつ、池松のピアノ演奏の完成度の高さに「まさかここまでとは」と現場で驚いたそう。本来は予定していなかった池松本人の演奏の音を本編で使用するほど、池松の奏でる「ゴッドファーザー 愛のテーマ」に惚れ込んでいた。
さらに、このイベントにもサックス奏者として参加し、本作で俳優業に初挑戦した松丸のキャスティングについて冨永監督は「2、3年前にMVの撮影でお会いしていた。なんてかっこいい人なんだろう、この映画があるから覚えておかなきゃ、と思っていたんです」と、初めて松丸に会ったときのエピソードを明かす。その後、何度か松丸のライブにも行っていたという監督は、ライブ終わりで高揚しているであろうタイミングを狙って松丸にオファーをしたそう。「映画に出てください、と行ったら“はい!”と言ってもらえて。いいタイミングに行きました(笑)」と場内の笑いを誘っていた。
そんな松丸と共演した池松は「作り物じゃないオーラ、空気がありましたね。本当に心がいい人で、すごくピュアで良いエネルギーを映画に注いでくれたと思います。たった2日間の撮影でしたけど、楽しかったです」と俳優としての佇まいも絶賛。冨永監督も「(池松演じる)主人公のかつての相棒となる役どころ。池松くんと二人一緒に並んでいる現場をみて、間違っていなかったな、と感慨深いものがありました」と撮影を振り返っていた。
最後に、本作の音楽を担当し、池松が演奏する「ゴッドファーザー 愛のテーマ」のジャズアレンジも手掛けている魚返とサックス奏者の松丸が登場。本作の公開を記念したこの日、この一夜だけの超特別スペシャルセッションが行われた。魚返はピアノ、松丸はもちろんサックスで、披露されたのは計6曲。「ゴッドファーザー愛のテーマ」にはじまり、本作を彩る劇中の音楽から、 「メインテーマ」 、「みずうみの独奏(ブルース)」、「一晩三年」、「即興演奏(“壊れたピアノ”の代わりに)」、 「Coming Now」 を演奏。ラストの曲を終えると、場内からは名残惜しいとばかりに盛大な拍手が贈られ、まさに“ノンシャラントな“一夜限りのスペシャル・ジャズライブイベントは大盛況の中、幕を閉じた。
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