「パンツ屋はパンツだけやっとったらええんや!」稲盛和夫に言われた過去も…ワコールが「食」分野に再参入したワケ

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2023年09月27日 09:00  ORICON NEWS

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世界レベルのグルテンフリーピッツァ「ICARO PIZZA Lab」(画像提供:ワコール)
 ワコールが食品や食卓雑貨を展開するモール型ECサイト「WACOAL SPOON(ワコールスプーン)」をオープンさせた。大手下着メーカーとして歴史と実績を誇る同社には、かつてフード事業に挑戦し、京セラの創業者で“経営の神様”稲盛和夫氏に「パンツ屋はパンツだけやっとったらええんや!」と言われた過去がある(書籍『ブラジャーで天下をとった男』より)。しかも食のECサイトといえば、今やレッドオーシャン。後発として参入するワコール・スプーンの勝ち筋とは?

【画像】思わずパケ買い…チャーム付きスイーツ缶も「ワコールスプーン」商品

■87年にはフローズンヨーグルト事業に挑戦するも…なぜ今「食」のECサイトなのか?

 ワコール・スプーンは「からだとこころに幸せ運ぶ」をコンセプトに、食品や食卓周りの雑貨を取り寄せできるモール型ECサイトだ。取扱商品はスイーツや惣菜を中心に、低糖質やグルテンフリーといったからだ想いな食品、手土産やホームパーティーにぴったりな見た目にもときめく食品、産地や製造工程にこだわった食品が全国から100店以上そろっている。

 運営するのは大手下着メーカーのワコール。下着とグルメという一見まったく関連のない事業に参入したのはなぜか? WACOALSPOON事業推進課の後藤真由課長に聞いた。

「弊社の会員サービス『ワコールメンバーズ』のお客さまに、既存の事業領域を超えて喜んでいただけるサービスを提供したいとの考えから2021年7月に会員アンケートを実施したところ、食や食品の取り寄せ、さらには食にまつわる社会課題に関心が高いことがわかりました。加えて今はまだワコールと接点のない方にも新たな分野を通じてワコールを知ってもらいたいとの想いから、会員限定サービスではなくオープンに開かれたモール型ECサイトを立ち上げるという判断に至りました」(後藤氏/以下同)

 ワコールと食といえば1987年にフローズンヨーグルトの新規事業を手掛けたものの3年で事業を解消。そして、前述のような稲盛氏の発言となり、以降、本業である下着をメインに展開してきた背景がある。それを踏まえて、今再び食の分野に参入したというわけだ。

「当時は『ワコールと接点のないお客さま』からいかに認知いただくか、ということが大きな目的だったのではないかと思われます。もちろんワコール・スプーンにもその目的はありますが、最も優先したのは、本業のインナー事業を信頼してくださっているコアの会員の満足度を上げること。その目的に向けて、会員様の興味関心分野を、より深く、よりフラットな目線で知るための調査を実施し、その結果をもとに事業領域やコンセプトを決定していきました。事業目的の優先順位に少し違いはあるかもしれませんが、敢えて比較するならば、今のワコールがどのようなお客様に支えられているのかを、より時間を掛けて深く知るというプロセスを踏んだことが、過去の学びであったと考えます」

■「なんで下着メーカーが食品を?」生産者と関係性を築く難しさとやりがい

 モール型ECサイトに欠かせないのが商品ラインナップの充実だが、当然ながらこれまで取引のなかった食の生産者とゼロから関係性を築くのはひとかたならぬ苦労があったという。

「4人のバイヤーがコンセプトに合う生産者さまをピックアップし、直接アポイントをとって交渉をしていきました。インナー業界ではある程度の知名度をいただいているワコールですが、食品業界では、『ワコールって何の会社ですか?』と言われてしまうことも。インナー事業では味わったことのない精神的なハードさはいろいろありましたね」

 また会社説明をしても『なんで下着メーカーが食品を?』と疑問を持たれてしまうこともあったという。そうした中でどのように信頼関係を築いていったのか。

「とにかくコミュニケーションを密に取り、ワコール・スプーンが目指すコンセプトをご理解いただく。これに尽きました。オンラインでも商談ができる時代ですが、公共交通機関を駆使して全国各地を跳び回りました。ときには話が盛り上がりすぎて1日に数本しかないバスを逃し、生産者さまに駅まで送っていただいたこともありました」

 こうした苦労が実り、オープンまでに100店舗そろった。中には自社サイト以外のECサイトで商品を販売するのは初という生産者もある。

「食と下着で領域は違えど、ワコールが取り組んできたかだらとこころに寄り添う姿勢に共感してくださった生産者さまが多かったです。また食も下着もこころやからだの健やかさや豊かさ、生活の彩りと密接な関係にあるという点では同じ。ワコールが大切にしてきたお客さまの人生や内面も含めた美しさに寄り添う考え方と、食という分野は、実はとても共通点が多かったのだと実感しています」

■飽和状態のECサイト 競合との差別化のカギは“ストーリー”

 今年4月のワコール・スプーンのローンチから半年あまり。利用者は女性が9割と圧倒的に多く、年齢層は3〜50代がコアだという。なお、ワコールメンバーズの会員は500万人以上いるとのことだ。

「購入カテゴリーについては半数以上がスイーツで占められています。中でもワコール・スプーン限定で作っていただいた"からだ想い"な素材を使ったスイーツや、ブラのチャームが付いた見た目にも可愛いスイーツはとても人気ですね。こうした限定アイテムは今後さらに強化していきたいと考えています」

 ここでしか買えない商品は1つの強み。だが運営会社が在庫を抱えるリスクのない食のECサイトは今や飽和状態。他社とどのように差別化を図っていくのか。

「まずは、ワコールならではの視点を活かした、からだとこころに幸せを運ぶアイテムを取り扱っていること。加えてECサイトの役割は、生産者さまから預けていただいた大切な商品とユーザーを確実につなげる架け橋になること。そのためにもただ商品を並べるだけでなく、生産者の思いや作られる過程といったストーリーも含めてご紹介することが大切だと感じています。商品を探しやすいサイト設計はもちろん、バイヤーブログをはじめとする読み物コンテンツを強みとしていきたいと考えています」

 今後の発展形としては、毎年約50店舗の販売元を開拓していくとのこと。ECサイトは商品ラインナップが多すぎても見つけづらく、少なすぎても物足りないもの。ワコール・スプーンならではの「からだとこころに幸せを運ぶ」というセレクトの視点やキュレーションに期待したいところだ。
(取材・文/児玉澄子)

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  • 身体の外へ、はいつもやっているので、今度は身体の中へ?
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