「後悔はないが…」性別適合手術の現状と実態、それぞれの当事者明かす思い「痛いなんて言葉じゃ表せない」

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2023年09月27日 16:00  ORICON NEWS

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左)女性→男性になった木本奏太さん、右)男性→女性になったぷうたん
 女性から男性へ、男性から女性へ。割り当てられた性別と心の性別の不一致に悩み、性別適合手術を行った男女がいる。どちらも、長く自身の性と身体にとまどい、手術への迷いはなかったと打ち明ける。一方で、術後、はじめて知ったことがあると明かす。当事者が語る性別適合手術の現状と実態とは。

【写真】男性→女性になった“ぷうたん”、術後のすっぴんに幼少期の貴重ショットも

■女性から男性になったYouTuber「戸籍変更の“不妊要件”はもっと議論すべき」

 YouTuberとして活動する木本奏太さんは7年前、身体にメスを入れ、戸籍の性別を女性から男性へと変えた。当時は、「手術で寿命が短くなったとしても、男性として生きられる喜びが大きかった」という。手術に後悔はない。ただ、今は「生殖機能を排除しないと性別変更できない」という日本の法律に疑問を感じると話す。

――昨年開催されたトランスジェンダー国会でも、LGBTQの戸籍変更が生殖機能を永続的に欠く「不妊要件」が必須であることに異議を唱えていらっしゃる方がいました。

【奏太】 戸籍変更のために性別適合手術で体にメスを入れなければいけないという点については、僕も今の年齢になって、疑問視するようになりました。僕もそうでしたが、性自認とは異なる身体的特徴に嫌悪感のあるトランスジェンダー当事者は少なくありません。だからホルモン注射をしたり、手術してでも外見を自分の望む姿に近づけたいという気持ちはすごく理解できるんです。

 でも割り当てられた性別の上で、必要なホルモンを分泌する体内の生殖器まで排除しないと戸籍変更できないという今の法律には、やはり問題があると思いますし、もっと議論されて然るべきだと思うんです。

――奏太さんご自身は2015年に性別適合手術を受けられて、2016年に戸籍を女性から男性に変更されていますが、「不妊要件」を満たさなければいけないことへの抵抗は、どの程度持たれていたのでしょうか。

【奏太】 僕が性別適合手術をして戸籍が変更できるという法律を知ったのは20歳くらいで、割り当てられた性別が女性であることに対する嫌悪感や、「女性として生きていきたくない」という内向きな感情がものすごく強かった時期でした。だから当時の僕は「これでやっと自分らしく生きていける!」という喜びだけが先走ってしまって、抵抗どころか、何の疑いも持たなかったんです。子宮や卵巣をとってしまえば、割り当てられた性別が女性であるという現実を突きつけられることも少なくなる。たとえ手術を受けることで寿命が短くなったとしても、「“男性”として自分らしく生きていけるのであればその方がいい」とすら思っていました。

――当時の奏太さんにとっては、それが最善だったわけですね。

【奏太】 はい。でも今は生殖器を取ることのメリット、デメリットの正しい情報が行き渡った上で、国ではなく、当事者が自分の意思で決められるようにすべきだと思います。

――LGBTQに対する理解は年々深まっているように見えますが、まだまだ課題は多くありますね。

【奏太】 そうですね。だからこそ僕は、LGBTQの当事者はもちろんのこと、何かしらの悩みを抱えている人たちが1つでも多くの選択肢が増えていくことの願いを込めて、前向きな気持ちになれるコンテンツをこれからも発信していけたらなと思ってます。

■男性から女性になったアイドル、性別適合手術を決めた理由と術後の痛み

 今年2月、タイで性別適合手術を行った元男性(21)・ぷうたんは、幼少期から心と身体の不一致に悩み、15歳で故郷を離れ上京。高校時代にカミングアウトし、卒業と同時にトランスジェンダーアイドルユニット「UnlinkCherry」として活動している。

――現在の体調などはいかがですか。

【ぷうたん】 アフターケアのダイレーション(膣拡張)がやっぱり大変ですね。術後、きちんとケアしないとふさがってしまうので、定期的に棒状の器具を挿入するんです。術後、約1年間は特にちゃんとしないといけないんですが、これがすごく痛くて…。朝と晩1時間ずつ、冷や汗をかきながら続けています。

――性別適合手術はいくつか方法があると聞きますが、どの術式でもアフターケアには激痛が伴うんでしょうか?

【ぷうたん】 術式によって違うと聞いています。それに痛みの感じ方は個々で異なるので、術後すぐに患部が痛い方、後日の抜糸が痛い方、私のようにアフターケアが痛い方…本当に人それぞれだと思います。私は“新しい術式”とされる方法で行って、もともと痛みに強いタイプと言うのもあったんですが、直後も抜糸も「まあ、痛いけどこんなもんか」と思っていたんです。そうしたら最初のダイレーションで気絶しそうになりました。痛いなんて言葉じゃ表せないです…。後日知り合ったアテンド会社の方に、私が選んだ術式は“ダイレーションが大変で根性と覚悟がないと乗り切れない術式で、ウチではすすめていない”と聞きました。

――性別適合手術までの流れをうかがえますか。

【ぷうたん】 私の場合は、まずは日本の精神科に、自分の家庭環境や今までの生き方についてまとめたレポートを持って行きました。どれだけ女性になりたいかということを理解していただいた上で、性同一性障害の診断書と、現地(タイ)の病院用の英文の推薦状をもらって。あとは、アテンド会社におまかせした感じです。

■心と身体の不一致でも「性別適合手術=幸せじゃない」

――タイでの入院生活はどのようなスケジュールでしたか。

【ぷうたん】 手術の3日前から病院に入院しました。翌日にメディカルチェックと診察、腸内洗浄をして、翌々日に手術。手術自体は6〜7時間ぐらいかかったんですけど、麻酔も効いていたので当日は痛みもあまりなく、お腹が張ってるような痛みを感じるくらいでした。術後2日目から消毒、歩行練習がはじまって、術後6日で退院。病院近くのホテルから抜糸やアフターケアのため11日間通院しました。

――20歳の今、性別適合手術を決めた理由をうかがえますか。

【ぷうたん】 長く自分のことを愛せてなかったんです。でも、外見を磨く努力をしたり、ありのままの自分を愛してくれる人たちと出会ったことで自己肯定感が生まれて、自分自身を愛せるようになったんですよね。今だったら、どんな自分でも愛せる確信が持てたので、手術することに決めました。

――心は女性で身体は男性というご自身を受け入れることができたから次のステップに?

【ぷうたん】 そう。性別適合手術をしたって言うと、男性の身体を受け入れられなかったから?って思うかもしれないけど、そうじゃないんです。もちろん、心と違うことに違和感はあったし、悩んだ時期もあったけど、それも全部受け入れて、まわりに何を言われても、揺るぎない気持ちが持てたから、次に進む決心をしたというか。LGBTQでも性別適合手術=幸せじゃないし、自分自身の軸を固めてからやらないと、女の子になったところで、自分を愛してあげられないなと思ったので。

――性別適合手術を検討している方、悩まれている方にアドバイスはありますか?

【ぷうたん】 すごく繊細な問題ですし、手術をしたから幸せになれるっていうことではないと思うんです。もちろん背中を押すことはいくらでもできるけど、決めるのは自分自身。だから私から言えるのは、あなたの人生だから、好きなように生きたらいいんじゃないかなってことですかね。より自分らしく生きられる道が手術することなら、迷わずしたらいいと思う。でも、手術しても自分は自分だから。周りにどう言われたからじゃなくて、自分がどうしたいかが一番大事だと思います。

このニュースに関するつぶやき

  • 女→男になった人の意見はちょっとよく分からないな。この人は子供が産める身体=女の身体を受け入れられるってこと???みんなそれが嫌で手術するんじゃないの???
    • イイネ!12
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