新幹線プロレスはなぜ実現したのか? JR東海に聞いた“世紀の一戦”の舞台裏

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2023年09月28日 17:07  ねとらぼ

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ねとらぼ

新幹線プロレスの様子

 DDTプロレスリング(以下、DDT)による、史上初の試み「新幹線プロレス」が9月18日に開催されました。現役レスラーでありプロレス運営会社「CyberFight」の社長でもある高木三四郎選手と、“プロレス王”の異名を持つ鈴木みのる選手が、最高速度285キロの新幹線車内で熱い戦いを繰り広げた様子は、国内のニュース番組だけではなく、ABCニュースやBBCニュースなど世界中のメディアで取り上げられるほどの大反響を呼びました。



【動画】過去に開催した「本屋プロレス」「銭湯プロレス」



 世界的に見ても、高速鉄道の車内でプロレスの試合が行われるのは前代未聞のこと。なぜ、こんな大胆な企画が誕生したのでしょうか? その舞台裏をJR東海の担当者と高木三四郎社長に聞きました。



●「貸切車両パッケージ」だからこそ実現できた世紀の一戦



―― 今回の「新幹線プロレス」は国内外のメディアで大きく取り上げられました。ここまでの反響が起こることを予想していましたか?



高木三四郎(以下、高木) 正直、こんなに反響があるとは思いませんでした。僕のプロレス人生の中でも過去一番のバズりです(笑)。53歳にしてこんなに取り上げてもらえるとは……。



―― 開催前から75席のチケットが30分で完売するなど、プロレスファンの方の期待値も高かったようですが、JR東海さんはこの反響の大きさをどのように受け止めていますか?



JR東海担当者(以下、JR東海) 率直に驚きました。本イベントはJR東海とJTBさんで展開している「貸切車両パッケージ」だからこそ実現できたものだと考えていますが、このサービスのポテンシャル・可能性をあらためて感じることができました。



―― そもそも高木社長が「新幹線でプロレスをやろう」と思い付いたのは、JR東海さんの「貸切車両パッケージ」に関するニュースを見たことがきっかけだったとか?



高木 そうなんです。たまたまJR東海さんのニュースで見て、すぐに「#新幹線プロレス」というハッシュタグを作ってTwitter(現・X)でつぶやいたことがきっかけでした。それからすぐにJTBさんに問い合わせて、実現に向けて動き出した感じです。



―― 「貸切車両パッケージ」について、あらためてどのようなサービスなのか教えてください。



JR東海 「貸切車両パッケージ」は2022年12月に本格的に販売を開始したサービスです。新型コロナウイルスの影響により、企業の報奨旅行の中止や社員研修のオンライン開催などの動きがあった一方で、オンラインではなくリアルな接点を求める企業や団体のニーズもあるのではないかと考えました。新幹線車両を号車単位で貸し切ることができ、車内でモニターや音響設備などを使えるオプションメニューも用意していますので、さまざまなオリジナルイベントなどを実施できるサービスになっています。



―― これまでにどのようなイベントが実施されてきたのでしょうか?



JR東海 企業の報奨旅行、社員研修、スポーツイベント、誕生日パーティー、新商品プロモーションなどでご利用いただいています。ちなみに、2022年の販売開始以降、2023年9月5日までで、今後実施分も含めると80数件を受注(※34件実施済み)しています。



―― さまざまな場面で利用されてきたとはいえ、プロレスの試合をするというのは前代未聞です。



JR東海 「貸切車両パッケージ」ではオリジナルイベントなどを実施できるとうたっておりますが、JTBさんからプロレスのお話をいただいた際には、率直に斬新なアイデアだと思いました。



高木 DDTでは過去にも電車やモノレールでプロレスの試合を行ったことがあったので、そうした過去の映像を僕が編集して動画にして資料として送らせていただいたりもしました。ただ、正直なところ実現する可能性は10%程度だと思っていたんです。ですが、JR東海さんとJTBさんが本当に真摯(しんし)に前向きに対応してくださって、きちんと観客を入れて開催できる形にしてくださいました。



●新幹線ならではのルール設定は猪木VSアリ戦に通ずる!?



―― 「走行中に座席回転をしてはいけない」「列車を遅らせてはいけない」「車内を汚してはいけない、汗で濡らすのもNG」など、新幹線ならではのルールが設けられましたが、調整は大変でしたか?



高木 僕らは通常のプロレスリングではないところで試合をする「路上プロレス」を昔からやっているのですが、過去一番大変だったかもしれません。



JR東海 とにかく初めての取り組みでしたので、JTBさん、サイバーファイトさんと実現に向けた議論を重ね、関係者の安全などに十分配慮して実施できるように準備をしてまいりました。サイバーファイトさんが、会議室にパイプ椅子を並べて新幹線の通路幅などを再現し、実際に技を試して車両設備への影響が出ないか検証してくださったりもしました。



高木 今回は使用した16号車以外には普通に新幹線を利用するお客さまも乗車していましたし、通常の電車と違い停車駅も少ないので、万が一トラブルが起きてしまったら対応することも容易ではありません。さまざまなリスクを回避するためには、JR東海さんとJTBさんからいただいたルールに関するリクエストをクリアすることは絶対条件だと思っていました。



―― DDTがこれまで開催した路上プロレスを振り返っても、一番ルールの縛りがあったのでは?



高木 それはそうですね。こんなにルールに制約があったのはアントニオ猪木VSモハメド・アリ戦以来なんじゃないですかね(笑)。



―― “世紀の一戦”という意味では新幹線プロレスと猪木VSアリ戦には通ずるものが……?



高木 今でこそ異種格闘技戦なんて普通にありますけど、あのころはプロレスラーとプロボクサーが試合をするなんてあり得ないことだった。それでも猪木さんはプロレスというものを世間に知らしめるために挑戦したわけじゃないですか。僕も新幹線プロレスを通じてプロレスというものが、どんな場所でも成立する最高のエンターテインメントだってことを証明したかったんです。もちろん勝算はありました。



―― JR東海さんは実際に試合に立ち会われ、どのような感想を持たれましたか?



JR東海 お客さまが選手のパフォーマンスを見ながら非常にプロレスの醍醐味(だいごみ)というものを楽しまれていると感じました。また、試合の中でお客さまと選手が直接コミュニケーションを取る場面も印象的でした。新幹線プロレスを通じて、東海道新幹線でオリジナルイベントなどを実施できる「貸切車両パッケージ」を多くの方に認知していただくことができたのではないかと思います。これからも「貸切車両パッケージ」を多くのお客さまにご利用いただき、移動自体の価値を高める一助になれればと考えております。



―― 「新幹線プロレス」のもようは現在動画配信サービスPIA LIVE STREAMでも見ることができます。高木社長と鈴木選手だけではなく、秋山準選手や小橋建太選手のサプライズ登場もあり、見どころ満載です。



高木 ぜひ多くの方に見ていただきたいです! 新幹線プロレスを通じて、路上プロレスの可能性も広がりました。例えば、シベリア鉄道で6泊7日かけて試合をしても面白いと思いませんか? 途中で殺人事件が起きる推理パートに突入したりして(笑)。世界的に知名度の高い場所でやれば大きな反響を得られることが分かったので、プロレスの魅力をもっと伝えていくためにも、今後もどんどん面白いことを仕掛けていきたいですね。


このニュースに関するつぶやき

  • そんな「世紀の一戦」をレフェリングしていたのが、松井幸則氏。高木らに「(車内設備を)壊すなよ!!」との牽制の雄叫びは、散々観に行った大阪プロレス時代と変わらず、懐かしくもあり、嬉しくもあり。
    • イイネ!6
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