パナソニックから出た、久しぶりのマイクロフォーサーズ機である。いや正確にいえば、「GH5II」や「GH6」があるのだが、これらGHで始まる機種は写真よりも動画寄りのモデル。映像作品を撮る人に評価が高い。
パナソニックはここ数年、フルサイズ機は写真と動画の両面、マイクロフォーサーズ機は動画に軸足を置いたモデルに力を入れていたのだ(という印象を受けてた)。
そこに出てきたのがマイクロフォーサーズの原点ともいえるGシリーズの最新モデル「G9PROII」(DC-G9M2)なのだ。前モデルの「G9PRO」が2018年発売なので5年ぶりである。久しぶりの写真メインのフラッグシップ機で、使い勝手も中身も最新のものに進化してるので、マイクロフォーサーズで写真を撮る皆様、お待たせしました、という感じであり、OM SYSTEMの「OM-1」のライバル登場って感じかも。
●どっかで見たことあるボディと思ったら……アレと同じだった
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何しろ5年ぶりなのですべてが新しいといって過言じゃないのだが、ボディはやや大きめでどこかで見たことがあるデザインだ。
実は、23年1月に発売されたLマウントのフルサイズセンサー機「S5II」と同じ。同じボディデザイン・サイズなのである。
面白いので並べてみよう。
マウントやセンサーサイズとボディの大きさのバランスが面白い。
ただボディサイズは同じとはいえ、S5IIが約740gなのに対してG9PROIIは約658g(G9と同じ)とちょっと軽いし、G9PROIIはマイクロフォーサーズセンサー機ということレンズの大きさも重さも違う。だから実際にレンズを付けて使ってみると、G9PROIIの方がずっと軽く感じ、重いという気はしないのだった。
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そしてG9PROIIのセンサーは約2500万画素と画素数が増え、とうとう像面位相差AFに対応した。パナソニックのマイクロフォーサーズ機では初の像面位相差AFだ。これが一番のトピックかも。
ボディ内手ブレ補正も約8段分と強化されている。
像面位相差AFになって確かにAFが迷うシーンは減り、素速くすっと合うようになった。これは素晴らしい。日常のシーンではAF-Cのままで良さそうだ。
フォーカスモードの切替えはさすがのLUMIXというか、右手親指でさっと切り替えられる位置にあって素晴らしい。
AFON、スティック、フォーカスエリア切替、フォーカスモード切替が一個所に固まっており、右手親指でさっと指定できる。
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フォーカスエリア切換はAFエリア切替と被写体自動認識のオンオフを1画面でできるのもいい。
上面から見ると、左肩に連写モード、右肩に撮影モードダイヤルなどがあるのだが、WB、ISO、露出補正といった撮影に重要な設定のボタンが3つ並んでいる(それぞれボタンの高さが違ったりボタン上にポッチがついていたりするので素手で扱う分には手探りで分かる)。
背面に回る。
瞳を十字線で表すのはLUMIXの昔からの伝統だ。
ちなみにEVFは大きくて見やすい。さすがフラッグシップという感じだ。
●なんと手持ちハイレゾで1億画素の写真も撮れる
ではいろいろと撮ってみる。
標準ズームレンズは12-60mm F2.8-4.0のLEICA DG VARIO-ELMARITだ。
まずはいつものガスタンク。パナソニックのカメラは色はしっかりしていて安定感があり、安心して使える。
ではここで、ハイレゾモードを試してみる。複数枚撮影して合成することで高解像度の絵を作ってくれるのだが、これが手持ち撮影に対応したのだ。手持ちで約5000万画素と約1億画素の絵を作ってくれる。
1億画素の絵はファイルサイズも膨大になるので、ここではガスタンクの写真をノーマルで撮ったものと等倍表示して比べてみたい。
続いて人物。露出補正はしてないが、すこしプラスにしてもよかったかな。この日は陽射しがまぶしかったので日陰に入って撮影したのだけど、AWBのまま肌色がしっかり出ているのがすごい。
ちょっと暗めの照明がややこしい店内でフィットチーネ。色がきちんと出るか不安だったが、予想以上にしっかり撮れた。
続いて、G9PROIIと一緒に発表された望遠ズームレンズだ。
「LEICA DG VARIO-ELMARIT 35-100mm / F2.8 / POWER O.I.S. 」である。35-100mm F2.8のズームレンズはかなり前からあるが、それがLEICAブランドになって新登場である。レンズラインアップをみると、かつて「LUMIX G」ブランドで出ていたレンズのライカ化が進行しているようだ。
35mm換算で70-200mm。マイクロフォーサーズなのでそこまでボケは大きくないけど、その分レンズがコンパクトでとりまわしやすいのがいい。
今回このレンズはいろいろと活躍してくれた。
動物瞳認識でうちの黒猫を撮影。ISO12800まで上げるとちょっとディテールが甘くなるがしっかりと捉えてくれた。動物も人物も、瞳が見えれば瞳に、見えなければ頭部に、それも判別できないときは身体全体を自動的に捉えてくれるのがいい。
この季節の花といえばこれでしょう、ということで彼岸花。彼岸花の赤をキレイに出すにはちょっとマイナスの補正をしてやるといいのだけど、露出補正無しでよい色を出してくれる。
さらに今回は新たなフォトスタイルとして「LEICA モノクローム」が追加された。今までモノクロのフォトスタイルはいくつもあり、今までの「L.モノクローム D」や「L.モノクローム S」の「L」は「LEICA」の「L」じゃなかったんかい、とつっこみたくなるけれども、それらに加えて「LEICA」の名をきっちりと入れたモノクロームスタイルが用意されたのである。ライカとの協業の成果か。
深い黒と白のコントラストが特徴、ということで、これは使わねば、と1枚。
さて、この新しいセンサーを搭載したG9PROIIのISO感度はISO100からISO25600。ちょっとスタートがISO100になり、最高ISO感度も抑えめだ(ちなみに、マイクロフォーサーズ機のもう1つのフラッグシップ機OMDSのOM-1は、ISO102400まで上げられる。それはそれでムチャしてるな、とは思うけど)。
●100-400mmも借りたので超望遠撮影に挑戦
最後は100-400mmの話。
新しくなった100-400mmもお借りしたので、ではアオサギを撮ろうと撮影にいったのである。35mm判換算で800mm相当までいける望遠ズームを手持ちで振り回せるのは楽しいのだ。
今回、超高速連写もウリの1つ。なんとAF追従で秒60コマ(AF固定なら秒75コマ)。さらにプリ連写にも対応しており、その時間も0.5秒から2秒まで選べる。
さすがに秒60コマまではいらないので、秒20コマでプリ連写0.5秒にして、アオサギが水中の獲物を狙ってクチバシを水にいれる瞬間を待つ。
プリ連写があるので半押しで待ち、アオサギが捕食しようとした瞬間を肉眼で確認してから全押しすればいいのである。
G9PROIIのウリの1つ、速さが生きるのだ。
この日は残念ながら曇天で、しかもこのレンズはテレ端がF6.3なのでISO感度とシャッタースピードのコントロールに気を使ったけど、なんとか撮れた。
これはなかなか良い。
さらにもう2枚。
G9PROIIは「ライブビューコンポジット撮影」機能を持っている。
ライブビューで仕上がりを確認しながら、比較明合成をするという、OMシリーズでお馴染みの機能だ。たまたま花火大会があったので、遠くから望遠で花火を狙ってみたのがこちら。
ついでに、今回、100-400mmがリニューアルして2xのテレコンに対応したというので付けてみた。
F6.3に2xのテレコンをつけたらF13になるわけで、1600mm相当F13……となるととりあえず月を撮ってみたくなるよね。
1600mmとかいわれたら、とりあえず月を撮っちゃうよね。
と、久々のGシリーズなので写真をメインにみてきたけど、LUMIXなので動画も充実。4Kで120fps対応や外部SSDにProResで記録できるようになった。GH5IIやGH6に対して「像面位相差AF」を持ってるという強みがあるので、そっち系の引き合いもありそうだ。
本体のHDMIコネクターもタイプAを採用している。
メディアはSDXCカードのデュアルスロットでUHS-IIに対応している。
今回、発売前の機材だったので細かい言及は避けたが、AF-Cで追いかけたときの安定性は像面位相差AFを何年も前から手がけてるメーカーに一日の長があるかなと思ったし(それはS5IIの時も感じた)、超高感度時にディテールが甘くなる(その分ノイズは少ない)のもちょっと気になったかな。
でも、グリップした感じや操作感、使い勝手はばつぐんにいいし、レスポンスもよくてストレスがないこと、パナソニックならではの画質の安定感はさすが。フラッグシップ機として相応しい様々なシチュエーションに対応してくれるカメラだ。
でもって、LEICAモノクロームは常用したくなるクオリティである。
久々に登場した本格派のマイクロフォーサーズ機。
古くからマイクロフォーサーズ機を使っている身としても(実は最初に買ったミラーレス一眼がパナソニックのGH1だった)、まだまだがんばってほしいなと思うのである。
フラッグシップ機が出たので、次はマイクロフォーサーズならではのコンパクトさを持つGXシリーズの後継機も見たい。
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