気付きと発見がたくさん!子どもの自主性、主体性を引き出す「ミックスゲーム」

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2023年09月29日 12:12  ベースボールキング

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日曜日の早朝、多くの子ども達が笑顔溢れんばかりに白球を追っている光景が川崎市多摩川の河川敷にありました。なぜ子ども達はこんなにも楽しそうに野球をやっているのでしょうか?答えは「大人は口を出さず、外から子ども達の新しい表情、新しい動きを見守る日」という、この日のイベントの趣旨、ルールにありました。



■子ども達を繋げる「野球」という共通言語
この日行われていたイベントは、参加した6チームをミックスして試合を楽しむ試み『ミックス ゲーム デイ』。各チームの4年生以下を中心とした小学生66名が参加して行われました。
ちなみに今年の6月には、慶應義塾高校と東北高校、弘前学院聖愛高校の3校の間でもメンバーをシャッフルして試合を行う「ミックスゲーム」が行われていました。今回はその小学生版とでもいうべき試みでした。
『ミックス ゲーム デイ』のルールは大きく二つあり、一つは参加チームをミックスしてチームを編成することですが、もう一つは大人が試合に介入しないこと。大人はベンチに入らず、外からの指示出しや声かけも禁止。打順も守備位置も子どもたちがコミュニケーションを取りながら全て決めることになっています。指示出しや声かけが禁止なのですから当然怒声や罵声、叱責の声もありません。

「試合のなかでイベントを多く発生させることを重視しました。フォアボールが多くなってしまうと、何もしない時間が増えてしまいますから、例外的にピッチャーは大人が務めることもOKとしました。そうすることで打つ、守る、走る、投げるというイベントが多く発生しますし、攻守の交代を多くさせてあげることもできます。イベントが多くなることで、それぞれをあとで振り返りをしてもらいたい。そういうことを心がけました」
『ミックス ゲーム デイ』を企画した、川崎市の少年野球チーム「ブエナビスタ」の吉井孝尚コーチは、この日のルールについてこう話してくれました。

ウォームアップはミックスされた6チームで別々に行われていましたが、リズムトレーニングや専門家から走り方の指導を受けたりと、他のチームでは当たり前に行っていることでも、それが初体験だった子どもも多かったようで、子ども達は目を輝かせて体を動かしていました。これもチームをミックスすることのメリットの一つと言えるでしょう。



初めこそ少し遠慮が見られた子ども達でしたが、「野球」という共通言語があるからか、直ぐに打ち解け、打席の仲間を応援し、ミスを励ます、そんな場面がどのチームでも見られました。得点が入ったときには、違うユニフォームの子同士で「デスターシャ!」(横浜DeNA・牧秀悟選手のホームラン後のパフォーマンス)を行う光景も見られるなど、子ども達もいつもと趣の違う試合を楽しんでいる様子も窺えました。




■「ミックスゲーム」を行うことの良さ
ふとベンチに置かれたホワイトボードに目をやると、そこには子ども達が考えた打順の下に「めあて」と題して「みんなできょう力して笑顔でやる」と書かれてありました。「めあて」とは小学校で使われていることばで、活動のゴールや目標を示すことば。
大人から「試合の『めあて』も考えるように」なとど言われていたわけでもなく、自主的に考えて書いていたのです。
また、試合が終わったあるチームでは「守備の課題が見つかったからノックをして欲しい」とコーチを捕まえて外野の後方で即席ノックが行われる場面も見られました。
大人たちの予想を超える出来事の数々に、指導者たちも驚いていました。



今回のイベントを実施したいきさつについて、前述の吉井さんはこう話します。
「他のチームの子たちと野球をやることで、どうやってコミュニケーションをとるかとか、初めて会う子たちに対して、どうやって自分の力を発揮しようとか、どうやって自分を表現するかとか、そういうことに挑戦して欲しいという思いがありました。ではチームをミックスしてやってみようか? というのが今回のイベントのきっかけです。野球の技術云々というよりも、野球を通じてライフスキルを高めることができる場所、『小さな社会』を作ってみたかったんです」



イベント終了後、参加したチームの指導者の方々にいくつかの質問をしてみました。

Q:『ミックス ゲーム デイ』に参加してみて気付きや発見はありましたか?

「子ども達の表情一つにしても普段見られないような楽しさが見えて、こちらもすごく発見がありました。この先、自分たちの普段の練習にどういうふうに取り入れていけるのかなと考えてみたり、すごく勉強になりました。指導者にも気付きがあって良い刺激をもらえました」

「子ども達が自分で動く、ルールを決める、という今日のようなことを、日頃の練習の一部に取り入れてみようかなと思いました。打順やポジションを自分たちで決める姿を見て、そういうことを考えさせられました」

「初めは初対面の子ども達がコミュニケーションを取れるか不安でしたが、3時間たってみたらそんなことは全然問題ないことが分かりました」

「子ども達が思いのほか伸び伸びしていました。普段の活動も遊びの延長線上に置いておきたい気持ちはあるんですが、プログラムした形に染まったモノが多い気がしたので、改めてこういう機会をいただいたことで、子ども達がより伸び伸びとやりたい野球をやっている、そんな感じがしました。もっと日頃の指導にも余白を持ちたいなと思いました」

Q:他のチームの子ども達と一緒に野球をやる良さはどこにあると思いますか?

「普段のチームでは守らないポジションを守ったりとか、自分よりも上手い子に出会ったりして、そういうことがすごく良い刺激になると思います」

「全然知らない人達とコミュニケーションを取るというのは、大人でも難しいことだと思います。そういった経験はこういった機会じゃないと得られないことなので、今日は野球を通じて子ども達も成長できたかなと思います」

「うちのチームの子ども達は、普段は自己主張したり、積極的に発言したり、すごく活発的なんですけど、今日の様子を見ていると周囲に合わせようとしたり、他の子の話しに耳を傾けたりとか、相手が話してから自分が発言するとか、周りと自分の関係を考えながら、立ち振る舞っていた様子が窺えました」

「友達が増えるということが一つ、あとはいつもの同じメンバーからは言われないことを言ってもらえること。そういうことが自分のアンテナに引っかかるというか、刺激になるというか、今後自分が上手くなるためにはどうするべきかと考えるきっかけにもなる。そういうことが他の子ども達と野球をやることの良さの一つかなと思いました」



各チームの指導者の皆さんの言葉にもあるとおり、「ミックス ゲーム」をやることの利点はいくつも挙げることができると思います。大会や試合に勝つことを目標に頑張ることも大切なことですが、こういった「野球を通じた子どもの成長」を促す取り組み、機会が増えることも願いたいと思います。(取材・文・写真:永松欣也)

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  • 昔はそんな事は普通 空き地見つけては野球を楽しむ子供…いつの頃から ユニフォームにヘルメット グラウンド 監督 コーチ 資格持った審判 連盟加入 保護者会…
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