減り続けるガソリンスタンドを「よろずや」に? 「アポロ」の出光興産が構想中

0

2023年09月29日 17:21  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
カーボンニュートラルに向けた世の中の動きや資源価格の高騰などにより、数を減らし続けるガソリンスタンド。クルマの電動化が進み、燃料の使用量が減っていけば今後も減少基調は続きそうだが、「アポロステーション」でおなじみの出光興産は、既存の店舗網を活用した新事業の構想を具体化しようとしている。名付けて「スマートよろずや構想」だ。


○全国6,100カ所のネットワークをどう活用するのか



資源エネルギー庁のHPで調べてみると、ガソリンスタンド(給油所)の数は減少を続けているようだ。2012年度末から2021年度末までの推移としては、給油所数は3万6,349カ所から右肩下がりに減り続けて2万8,475カ所となっている。



昭和シェルと経営統合した出光興産は、全国に6,100カ所の「アポロステーション」(サービスステーション=ガソリンスタンド)ネットワークを有している。この「インフラ網」を維持・活用すべく進めているのが「スマートよろずや構想」だ。


全国にまんべんなく広がるSSネットワークが地域課題の解決に役立つのでは? これが出光興産の着眼点だ。1,200の特約販売店があり、6,100のSSを持ち、3,000万人の利用客がひもづく全国的なネットワークに、給油以外の商材・サービスを乗っけることができれば、かなり大規模な新規ビジネスになりうる。



「よろずや」とは具体的に、どんなビジネスを指すのか。可能性はいろいろだが、現時点で出光興産が考えているのは「エネルギーよろずや」「モビリティよろずや」「コミュニティよろずや」の3つだ。

エネルギーよろずや:石油、バイオ燃料、電気、水素、合成燃料などのエネルギーを供給する拠点。電気自動車(EV)の充電には需要がありそうだし、水素や合成燃料で走るクルマが普及すれば欠かせないインフラとなる

モビリティよろずや:ドローンやマイクロモビリティも含めたモビリティの販売、メンテナンス、カーシェアなどを行う拠点

コミュニティよろずや:コインランドリーやクリーニング、コンテナを設置して脳ドックを行うなどの健康関連サービス、ラストワンマイル配送などを行う拠点


スマートよろずや構想の一環として、出光興産が近くオープンするのが新業態の「アポロワン」(apolloONE)だ。この店舗は給油の設備を持たず、洗車、カーコーティング、カーシェア、レンタカー、車検、板金、整備、クルマの販売・買取などを行う。10月7日に開店する1号店の「apolloONE 江東東陽町 KeePerPROSHOP」は、洗車とカーコーティングを専門的に提供する店舗になるとのこと。ここはもともと休止状態のSSだったそうだが、需要調査を実施して業態を決めた。出光興産は2030年までに約250店舗のアポロワンを展開する方針だという。


SSは好立地な店舗が多そうなので、何をやるかにもよるが業態転換により営業を維持、あるいは拡大できるところもけっこうありそうだ。「全国の特約販売店には、創業100年というところもざらにある」(出光興産 上席執行役員 販売部長の小久保欣正さん)そうで、地域社会とは長年にわたる信頼関係があるはずだから、「SSの跡地で別の誰かが新規事業を始める」よりも、「SSを運営してきた人が別の事業を始める」方がビジネスを軌道に乗せやすいだろう。


給油をやめて別の業態となったとしても、店舗が残っていれば、将来的にバイオ燃料や合成燃料で走るクルマが普及したときに、給油設備(計量機と呼ぶそうだ)を復活させられるかもしれない。SSが廃止となり、さら地にマンションでも建ってしまえば、こういう可能性も絶たれる。顧客とのリアルな接点を維持できていればこそ、そこで新規のビジネスに挑戦することが可能となるわけだ。



スマートよろずや構想を進めることにより、全国6,100カ所のSSネットワークを維持していきたいというのが出光興産の考えだ。(藤田真吾)
    ニュース設定