鈴木美潮氏の『スーツアクターの矜持』は特撮の歴史に残る名著 【篠宮暁の特撮ヤベーイ!】第45回

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2023年10月01日 10:00  ORICON NEWS

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『オジンオズボーン篠宮暁の特撮ヤベーイ!』
 ピン芸人・オジンオズボーン篠宮による大好きな特撮に特化したコラム『オジンオズボーン篠宮暁の特撮ヤベーイ!』。第45回は、特撮の歴史に残る名著となった鈴木美潮氏の著書『スーツアクターの矜持』について語る。

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 ドラマや映画で活躍する俳優さんが特撮作品出身ということも珍しくなくなりましたが、特撮作品の中で演技をするのは変身前の俳優さんだけではありません。変身後のドラマシーンやアクションを担当するスーツアクターさんも変身前の俳優さんと同等、いやそれ以上に演じられており、その演技なしでは特撮番組は成立しません。

 先日、このスーツアクターさんに関して深く知ることができる一冊『スーツアクターの矜持』が上梓されました。これを書かれたのは読売新聞の鈴木美潮さん。鈴木美潮さんは特撮クイーンと呼ばれるほど特撮に造詣が深く、その信頼度の高さは鈴木美潮さんが主催されている特撮トークイベントのゲストを見れば一目瞭然。

 普段は絶対にお目にかかれないような特撮作品に関わりのある偉大なレジェンドが度々名を連ねています。実は2015年にも『ヒーローたちの戦いは報われたか』を出版されており、特撮作品の歴史を当時の時代背景とともに知ることができる名著なのですが、その中に書いてあった『スーツアクターの矜持』の章の部分をこれでもかと拡げ、鈴木美潮さんしかブッキングできないであろうスーツアクターの方々へのインタビューも豊富に収録されたのが今回のこの一冊。

 矜持(きょうじ)とはプライドのことであり、まさにどんな誇りを持ってスーツアクターさんが作品と向き合ってきたかがこの本を通して知ることができます。とんでもない情報量、しかも昭和、平成、令和と時代を分けることなく全ての時代の作品について深く、そして濃厚に触れられており大袈裟ではなく学校の教科書として扱ってもらいたいほど。

 そして濃いエピソードはこの作品のこの話で確認できるというガイド的なミニコラムも多数載っており、今まで知らなかったエピソードや、子供の頃に何度も見たことある何気ないシーンのとんでもない撮影秘話を東映特撮ファンクラブで実際に映像を見ながら確認するという贅沢な時間を過ごすこともこの本があれば可能なわけです。

 そもそもはスーツアクターという言葉は昔には存在せず、技斗(たて)と呼ばれていたり、それより前は名前すらなかった時代もあったそう。それが今ではスーツアクターという名称が広く認知されたわけですが、このスーツアクターという言葉自体について実際のところどう思うのか?という部分も鈴木美潮さんがインタビューした方々に度々尋ねられていまして、この名称について、実際に仮面ライダーやスーパー戦隊でアクションをされてた方々の意見が非常に興味深いものでした。

 自分はスーツアクターという言葉に対し蔑む気持ちなどは1ミリもありませんし、尊敬とともにこの呼称を使っていたのですが、全ての人がスーツアクターという名称に納得してるわけではないというのはまさに驚きでした。スーツアクターの歴史から熱い想いまでが綴られたこの本、読むとまた特撮の見方が面白くなること必至です。
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