
48年ぶりに自力で五輪出場を決めたバスケットボール男子日本代表の活躍、素晴らしかったですね。来年のパリ五輪・パラリンピックに向けて、それぞれの競技で熱い戦いが巻き起こりそうです。
今月2日まで東京体育館で開かれたパラ卓球(障がい者卓球)の国際大会「JAPAN PARA OPEN」を観戦してきました。今回は12の国・地域約140人の選手が出場し、東京五輪・パラリンピックで卓球競技が行われた聖地、東京体育館での開催ということで、会場も熱気を帯びていました。
パラ卓球はずっとユニークな試みを続けています。選手が障がいによって卓球台をどう感じているのかを表現した少し変わった形の卓球台を作って国際広告祭カンヌライオンズで金賞を受賞したり、若手アーティストたちに油彩画や博多人形、作曲などさまざまな手法でパラ卓球を表現してもらってアート展を開いたり、毎回ワクワクするような見せ方でパラ卓球の魅力を発信し続けています。
会場には、そのプロジェクトが全て展示されていて、さらにパラアスリートの半生を車いすに乗りながら、すごろくで体感できるブースもありました。子どもたちが笑顔で車いすに乗りながらすごろくをしている横を、車いすの選手が笑顔で通り過ぎていく。そんなインクルーシブ(分け隔てのない)な空間が持つ、ポジティブで温かい空気が広がっていました。
さらにこの国際大会は、勝利した場合の獲得ポイントが大きく、パリパラリンピックへ向けて重要なイベントでもあり、いい試合をたくさん見ることができました。
特に最終日の男子ダブルス決勝では、日本人同士のレベルの高い戦いが繰り広げられていました。
優勝したペアの岩渕幸洋選手は、一昨年の東京パラ開会式で旗手を務めたパラ卓球の顔ともいえる選手です。素顔は面白くて、かわいらしい性格で、ようかんが大好き。遠征の時には、スーツケースいっぱいにようかんを詰めていくそうです。
東京パラでは金メダルを期待されていたのですが、予選敗退という結果に終わりました。その後はなかなか勝てない時期が続いたのですが、練習環境を変え、努力を重ね、6月には健常者の全日本卓球選手権大会の出場権をかけた予選会で優勝しています。そんな中で、国際大会で優勝できたことは来年のパリに向けて大きな弾みになりそうです。
岩渕選手、実は東京パラ以来の東京体育館での国際大会だったので「試合の朝、手が震えていた」と奥さんが話していました。そんなプレッシャーと苦い記憶をはねのけ、躍動したプレーは、見ていて気持ちいいくらい積極的で胸が熱くなりました。
試合で全力でプレーする選手たち、そして国際大会を開催するために尽力する人たちの存在、私がパラスポーツを応援したくなるその理由がぎゅっと詰まった4日間でした。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 39掲載】

平井理央(ひらい・りお)/1982年東京生まれ。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックをはじめ国際大会の現地中継などに携わる。13年フリーに転身。ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティー、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活動中。