男子バレーがなぜ今、熱い? 人気爆燃と強さの理由を"推し作家"がファン目線で語る!

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2023年10月01日 10:21  週プレNEWS

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『2.43 清陰高校男子バレー部』の著者・壁井ユカコ氏


強いニッポン男子バレーが復活!世界最強を決める今夏のネーションズリーグ(VNL)では主要な国際大会で実に46年ぶりの表彰台となる銅メダルを獲得。人気も再燃し一躍注目される中、1972年ミュンヘン五輪以来の金メダルを本気でめざす来年のパリ五輪出場をかけた予選大会が開幕する。

グループ8か国総当たりで2枠を争う熾烈な戦いは東京・代々木を舞台に期待度MAXで盛り上がる――そこで今回、自著『2.43 清陰高校男子バレー部』(集英社刊)を人気シリーズに育て、10年超も男子バレーに魅了され追い続ける作家・壁井ユカコ氏がファン目線で見どころを語る! にわかでもOK、ここから新たな歴史が始まるというその魅力を要チェック!!

【画像】石川祐希と盒桐

――まずはズバリ、この30年間でも開催国だった2020東京を除き、五輪本大会の切符獲得すら2008年の北京のみという冬の時代だった男子バレーがいつの間にここまで強く......?

壁井 大きくふたつの視点があって、ひとつは協会を中心に強化の姿勢が本気になって、海外の主に欧米の強豪国のやっているバレーを自分たちにも取り入れるという抜本的な動きがじわじわ根付き、いよいよ花開いたということでしょうか。

難しい時代が続きましたけど、今のフィリップ・ブラン監督を中垣内(祐一)監督の時にコーチとして招聘(へい)し、中垣内さんがすごく説得して連れてきてくれたらしく、それが大きな転機になりました。

――低迷期の日本を大エースとして引っ張った中垣内選手が監督としても育成の土壌を作り、フランス代表監督など強豪国を指導した実績のあるブランさんに託したことが下地となったわけですね。

壁井 あともうひとつはやっぱり、石川祐希選手ですね。当時、中央大学に在籍しながらイタリアのプロリーグに渡って以来、世界で通用する選手になると心に決めて本当にやり遂げたという。正直、最初は通用しないだろうと思われていたのがスゴい決意、意識の高さで諦めずに信念を貫いたのは本当にすばらしいですよね。

――まさに漫画『ONE PIECE』で主人公ルフィが言うところの「海賊王に俺はなる」的な。大言壮語でなく夢を実現させるキャラですね。

壁井 私が最初に見たのは彼が高校一年生で、『2.43』の初めての取材がちょうどその夏のインターハイだったんです。星城高校の黄色のユニフォームがキラキラしてるなって印象はありましたが(笑)、その年はベスト4で個人的に注目していたわけではありませんでした。その翌年から高校6冠という偉業を打ち立てるという。

実は、私には他に心掴まれて応援していたチームがあったんですが、星城にみんな負けているんですよね。なので当時、石川選手を贔屓(ひいき)目で見ていたわけでもなくて、そんな私の目でもすばらしい選手だと思わざるを得ない存在というか。

日本代表でもイタリアで得た意識を根付かせて引っ張ってくれたり影響力がほんと大きいですし、石川選手が今のチームとバレーファンをこの時代に連れてきてくれたと思っています。

――身長は192センチと今の時代ではそれほどでもなく、攻撃面でのクレバーさと安定した守備力が持ち味ですが、なんといってもメンタルの強さですかね。キャプテンとなってさらに確変したという評価も多い。

壁井 石川選手の気迫で持ち直すという試合を何度も見ましたし顔つきも変わりましたよね。その姿を他の若い選手が見て、憧れて海外にどんどん行く機会が拓(ひら)けるようになり、いい選手がたくさん続いているんです。

――その中でも超絶ブレイクしているのが、盒桐(らん)選手でしょうか。新星のごとく活躍しインスタグラムのフォロワーも160万人超と人気が爆燃中です。

壁井 元々、身長があまり大きくなくてリベロをやっていたりもしたので(現在は188センチ)、ディグやレセプションというディフェンス力に安定感がありましたけど、彼もイタリアに渡ってから攻撃力がすごい増して、ほんと頼りになる大事な存在になっています。特に角度のあるクロスにはVNLで何度も驚かされました。

※ディグ=スパイクのレシーブ レセプション=サーブのレシーブ ※リベロ=守備専門でサーブ、アタック、ブロックに参加できない

――石川選手の対角として守備の負担を担い、19歳という歴代最年少で先の東京五輪に全試合先発出場。VNLでの銅メダルにも大きく貢献し躍進の象徴ともいえるかと。

壁井 以前、取材でお世話になった中央大学で監督をされていた松永(理生)さんが、中央を離れて出身校の東山でコーチに就任された年に盒響手が高校3年で春高バレー初優勝しているんです。大学時に石川選手が海外でプレーするルートを作ったのも松永監督だったんですよ。

――それもドラマチックな背景ですね! ユースやジュニア世代での代表経験もなかった隠れた逸材があっという間にシンデレラストーリーを駆け上がり......。

壁井 東山はその初優勝した春高が久々の出場だったんですけど、京都では洛南との2強で熾烈な争いをしていて、前年は洛南が出場して春高優勝してるんですよ。その時の3年生が大塚達宣(たつのり)選手なんです。去年、代表で活躍していた彼が今あまり出られてないくらい切磋琢磨が起こっているんですが、高校から競い合ってきたライバルでもあったという。

――ほんと伺っているだけで小説顔負けのネタ満載ですね。ちなみに今、壁井さんの一番の推しはいますか?

壁井 今の代表チームでは宮浦健人選手が大好きで(笑)。早稲田大学で1年の時からずっと応援していて、VNLでも後半戦にスゴい活躍をしてくれて嬉しかったですね。

――大学時はなんとインカレで4連覇の偉業を達成した立役者ですよね。

壁井 前年まで石川選手の中央が3連覇していたのがそこから早稲田の時代になって......。彼も熊本の鎮西高校で春高準優勝した2年生の時から見てるんですけど、3年になった春に熊本の震災が起きて。体育館も壊れたり難しい環境になった中、結果を残せなかったんですが、大学に入ってずっとエースを張ってほんとスゴかったんです。

元々、山本隆弘さんに始まって左利きのオポジットが大好きっていうのもあるんですけど(笑)。宮浦選手の正直あまり喋りは得意じゃなくて寡黙な感じも魅力ですし、ライトから打ち込むスパイクもですが、大学時代はコートの外から曲がって入ってくるみたいなサーブの軌道がものスゴくて。

サウスポーはレフトから打つのが苦手なのでその頃はレフトからは打ってなかったんですが、ポーランドに渡って帰ってきたVNLではレフトからの決定率もスゴくて、それもチームを何度も救いました。愚直な強さが好きですね。

※オポジット=セッターの対角に入る攻撃的スパイカー

――寡黙で愚直とはストイックさも胸キュンです。やはり一時代を築くほど苦難の男子バレーをアイドル級の大人気で牽引した山本選手に繋がる系譜もありますが、サウスポーといえば、まずは西田有志選手がエースとして現代表の顔でしたが......。

壁井 西田選手は三重の海星高校で高3のインターハイで全国にやっと出てきたんです。爆発力のある左利きのオポジットがいるなとわくわくした印象があります。大学には行かずVリーグのジェイテクトに直接入団するという経歴も珍しいなと思っていましたが、代表にも選出されてあっという間に大ブレイクして。

ユース時代は1学年上に宮浦選手がいてチャンスに恵まれず、同じ道を行ってもダメだと進路を選んだらしく、彼にとってはその選択が正しかったんだと。

――そのアウトローさでありワイルドな荒々しさも日本にいないタイプで魅力です。昨秋から原因不明の体調不良でVNLでは本領発揮できず、そこに宮浦選手が台頭した感もありますが好対照なふたりのライバル関係も層の厚さに繋がるのでは?

壁井 お互いに追いつき追い越せという感じで、同時代に左のエースがふたりもオポジットで競り合ってるのがスゴイことですよね。どちらかがうまく回らない時でも交代して打開できるところが今のチームの強さですが、大塚選手もオポジットもやれますし、他にも期待したい選手がいっぱいいますよ。

――西田選手も復調し、VNL後のアジア選手権では決勝のイラン戦で最多の15得点と爆発しひと安心。ちなみに女子代表のキャプテン・古賀紗理那選手が伴侶ということで、今大会では出場権獲得を逃した女子のリベンジを期待です!

〇後編に続く

●壁井 ユカコ (かべい・ゆかこ)
沖縄出身の父と北海道出身の母を持つ信州育ち、東京在住。学習院大学経済学部経営学科卒業。第9回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞し、2003年『キーリ 死者たちは荒野に眠る』でデビュー。21年に「2.43 清陰高校男子バレー部」シリーズがTVアニメ化、『NO CALL NO LIFE』が実写映画化、他著書多数。


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写真/五十嵐和博、Andrzej Iwanczuk/NurPhoto/共同通信イメージズ、共同通信社

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