無人操舵で太平洋を横断し、神奈川・横須賀に入港した謎の米海軍無人艦はいったいナニモノ?

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2023年10月02日 07:21  週プレNEWS

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米海軍横須賀基地の一角に停泊していた無人艦「レンジャー」。全長59m、排水量670トン、最高時速70キロ。艦体は民間船をベースにしている

米海軍から一部の報道機関やジャーナリストに、艦名すら知らされぬまま「無人艦の公開」に関する案内が届いた。

9月21日、神奈川県横須賀基地に行って初めて判明した艦の名は「レンジャー」。2021年に発足したばかりの「第1無人水上艦隊」に所属する謎だらけの新艦の正体を、乗艦取材で得た情報と同艦隊司令官の言葉から緊急検証。いったい日本で何をするための無人艦なのか?

【写真】謎だらけの新艦「レンジャー」の細部ほか(全17枚)

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■狠紊斬悗┠伸瓩遼能プラットフォーム

身分証を提示して米海軍横須賀基地のゲートを通過し、用意されたバスに乗り込んで2分ほど走ると、第2潜水艦艦隊司令部のビルに到着。

その真正面に停泊していた、天下の米海軍の最新艦とは思えない地味な外観の船が、日本に初入港した無人艦「レンジャー」だ。同じ第1無人水上艦隊所属の「マリナー」も入港していたというが、こちらは非公開だった。

同艦隊の司令官を務めるジェレマイア・デイリー中佐はこう語る。

「無人艦隊は米海軍の統合戦闘課題演習に参加中で、(東太平洋を管轄する)第3艦隊と(西太平洋を管轄する)第7艦隊のエリアを、ほぼすべて無人操舵で航海してきた。16人の乗員はモニターしていただけだ。カリフォルニアの陸上無人運用センターから指示を受け、空母『カールビンソン』とも連携した。

第1無人水上艦隊には将来の『分散型海上作戦』の有人・無人チーム編成を進める上で重要な役割がある。今回も新たな知見を収集し、無人化の方向性を定めるための情報を上層部に提供する目的がある」

「分散型海上作戦」とは今後、米海軍の艦隊運用や戦闘の中心になる概念だ。主な仮想敵は中国軍で、東シナ海から南シナ海にかけて広い海域に分散した各部隊の戦闘を同期・統合できる状態を目指す。

その作戦において、なぜこの地味な無人艦がカギを握っているのか?

この艦は、実は民間船をベースにしており量産が容易だ(艦体は脆弱で、攻撃を食らえばすぐに沈没してしまいそうだが、無人艦ゆえ問題ないのだろう)。

最大のポイントは、艦後部に積まれたコンテナを入れ替えれば、攻撃・防空・偵察など多様な任務に対応できること(取材時は電子戦用のコンテナを搭載)。いわば狠紊斬悗┠伸瓩遼能無人プラットフォームだ。 

しかも、この艦は最高時速70キロを誇り、空母艦隊にも十分に随伴できる。米海軍はイージス艦、ミサイル艦などで構成される従来の空母戦闘群に、新たに数隻の無人艦を加えようとしているのだ。

■昨年の演習ですでに海自の指揮下に入った

では、具体的にこの無人艦は何ができるのか?

●対空迎撃ミサイルによる艦隊防空・弾道ミサイル防衛。2021年の演習時には、イージス艦の誘導により対空ミサイル「SM−6」が発射されたとみられる。

●海上・海中での偵察・警戒監視。「RQ−9Bファイアスカウト」や「RQ−20」など大型・小型の無人偵察航空機、ソノブイ(敵潜水艦の航行音を探知し、無線で情報を送信)、対潜ソナー(敵潜水艦の位置を特定)、無人水上艇・潜水艇などを目的に応じて投射することができる。

●電子戦による作戦支援・艦隊防空。巨大なゴースト(レーダー上に映るニセの船影)や虚偽の位置情報を発信する電子戦プラットフォームにより僚艦(空母や駆逐艦)の位置を欺瞞(ぎまん)し、敵ミサイルを無人艦に誘導できる。

●対艦ミサイルによる攻撃任務。当然、コンテナには各種攻撃兵器も搭載できる。

そして、この無人艦の存在は日本の海上自衛隊にとっても決して無関係ではない。デイリー中佐はこう明かす。

「(昨年夏にハワイ沖で開催された)国際合同演習『リムパック22』では、無人艦4隻が海自の指揮下に入り運用試験を行なった」

同演習には海自から、近い将来空母としてF−35B戦闘機を運用する「いずも」と、汎用護衛艦「たかなみ」が参加。それぞれが無人艦とペアで作戦を行なったようだ。

中国海軍の急速な軍拡で、もはや海自は有人艦だけでは数・性能とも対抗できなくなりつつある。また、護衛艦や潜水艦の乗組員の確保にも苦労しているのが現状だ。

そう考えると、今回の犂藐世興行瓩魯▲瓮螢からの牘超鉢瓩任發△辰拭宗修箸凌簑も成り立つ。では、海自がこの万能無人艦を導入した場合、どのように使うのか? 4つのパターンを想像してみた。

■日本近海における任務は?

【想像1】空母「いずも」の支援


有人護衛艦の不足に悩む海自。F-35Bステルス戦闘機を運用する虎の子の空母「いずも」艦隊に、6隻ほどの無人艦が参加すれば心強い。

内訳は対空・対艦ミサイル搭載の「艦隊防衛艦」が3隻、各種無人機・無人艇で水上や地上の目標情報を取得し空母の作戦を支援する「偵察艦」が1隻、ソナーやソノブイを搭載して敵潜水艦を捜索・探知する「対潜早期警戒艦」が1隻、位置情報の欺瞞などで空母を敵の攻撃から守る「電子戦艦」が1隻といったところだ。

【想像2】弾道ミサイル防衛


無人艦は2021年、最新型のイージス対空ミサイル「SM-6」の発射実験を行なっている。近年、北朝鮮の弾道ミサイル発射への対応に大忙しの海自だが、現有のイージス艦隊に加えて無人艦もミサイル防衛任務を担えるとなれば、保有数が限られるイージス艦のローテーションにだいぶ余裕ができる。

【想像3】イージス・システム搭載艦の護衛


地上発射型ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の配備が中止となり、購入したものの宙に浮いてしまった2基のシステムを搭載した1万トン超の巨艦「イージス・システム搭載艦」2隻が4、5年後に海自に配備される。

無人艦はすでに同サイズの米海軍巡洋艦への随判実績もあるため、「いずも」だけでなくこちらの艦隊の支援任務もOKだ。

【想像4】海峡警備


偵察や警戒監視をベースの役割として演習が続けられている無人艦にとって、中露艦隊の航行を津軽、宗谷、対馬、宮古の各海峡で長時間にわたり警戒監視する任務はまさにうってつけ。

各種攻撃兵器も搭載できる上、敵艦からはコンテナ内に何を積んでいるかわからないため、有人艦による監視よりも緊張を与えられるかもしれない。

撮影・取材・文/柿谷哲也 協力/小峯隆生

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