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リーグ3連覇を果たし、2年連続の日本一を目指すオリックス。監督、コーチ、選手、スタッフらの思いを、「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。
第99回は、移籍1年目から主軸、捕手としてチームの勝利に貢献している森友哉選手（28）です。
2年連続してシーズン最終戦で優勝を決めたチームは、今季、13試合を残し9月20日に3連覇を果たしました。残り試合は、クライマックスシリーズ（CS）や日本シリーズ（日本S）に向けて若手を起用したりする調整の場にもなりますが、森選手は「消化試合と言われても、負けていい試合は1試合もありません」と気を引き締め、白球に向き合います。
◆ ポストシーズンの怖さを知るからこその全力プレー
10月1日、今季、チームとして138試合目となった楽天戦（京セラドーム大阪）。2点を追う1回、福田周平、安達了一の連打でつかんだ無死一・二塁で「3番・指名打者」の森は、荘司康誠の初球、120キロの高めのカーブを投前へセーフティーバント。
「あの回、どうしても1点が欲しかったんで。あのまま、ズルズルいくのが嫌だったので、1点を取りに行きました」と森。残り5試合になって、先発したのはポストシーズンに向けたアピールの場でもあった黒木優太。後続が倒れ得点は出来なかったが、意表を突くバントは勝利を手繰り寄せるための、森のアイデアだった。
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先頭打者として右前打で出塁すると、次打者セデーニョの右飛でタッチアップし、二塁を陥れた。高く舞い上がった打球は、小郷裕哉がウォーニングゾーン手前で捕球。タッチアップは難しい距離だったが、森は助走ができない小郷の返球動作を見逃さなかった。
「行けるかな、と思って行きました」
好調な打撃同様に、脚の状態も万全だからこそできるプレーなのだろうが、一瞬のスキを突く積極走塁に充実ぶりを感じさせた。
「（優勝が決まった後の）消化試合と言われますが、負けていい試合は1試合もないんで。そういった面でも（意識してプレーしている）といった感じですね」
CSは西武時代、4度経験したが、リーグ優勝した18、19年を含め日本S出場は果たせなかった。
「短期（決戦）ですからね、長期ではないという難しさがありますね」。ポストシーズンの怖さを知るからこそ、一つ一つのプレーに手を抜かず全力でプレーするのだろう。
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さらに「（あのタッチアップは）走塁のファインプレーだと思います。ああいうところで、やっぱりスキがない。彼の集中力の高さはバッティングだけだなく、すべてにおいて1球に対する強み、強さがあるからこそ、ファンの方やベンチが『ここで1本』というところでしっかりと結果を出してくれる。そこが彼の強み、凄さだと思いますね」
「どんな展開であろうと最後まで一生懸命にやるし、負けた時の悔しさを人一倍持っている人間だから、若い選手には特に見習うところがいっぱいあると思います。守備位置は違っても、彼の背中を見て、プレーを見てどんどん吸収していってほしいですね」と続けた。
◆ WBCよりオリックスでの練習を選択した覚悟
移籍1年目、新しいチームで投手とコミュニケーションを取りチームに溶け込むため、WBCよりキャンプとオープン戦を選んだ。
「メチャクチャ悩みました」とはキャンプ当時の言葉だが、決勝が行われた3月22日、オープン戦の練習時にスマートフォンで試合中継を観る報道陣に近寄り、試合経過を気にする森の姿があった。米国を3−2で破り3大会ぶりの優勝を見届けると、野球少年のように満面に笑みを浮かべ声を上げた。
世界一の歓喜の輪に入ることができなかったことに対する一片の後悔も、そこにはなかった。
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脚の故障などで離脱し、常に目標として掲げる「キャリアハイ」は果たせなかったが、WBCよりオリックスでの練習を選択したことで、言い訳のできないところに自らを追いやりながら、多くの殊勲打でチームを勝利に導いたことは誇っていいだろう。
キャンプ地・宮崎の小戸神社に奉納した絵馬に記したのは「躍動」だった。
「いつもは健康第一って書くんですけど、今年はね」
ポストシーズンも躍動し、2年連続日本一に貢献する。
取材・文＝北野正樹（きたの・まさき）
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