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リーグ3連覇を果たし、2年連続の日本一を目指すオリックス。監督、コーチ、選手、スタッフらの思いを、「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。
連載最終回となる第100回は、育成4年目の左腕・佐藤一磨投手（22）です。今季、ウエスタン・リーグで8勝（3敗、防御率3.94）を挙げ、阪神・秋山拓巳投手と並び最多勝に輝きました。
7月末までに5勝をマークしましたが、チーム事情もあり支配下登録はされませんでした。プロで生きていくうえで大事にしていることは、高校の恩師に教わった「人間性」と、高校2年に仲間たちから指摘された「エースとしての自覚」です。一軍で活躍する同期の宮城大弥投手と紅林弘太郎選手らの背中を追いかけ、5年目での支配下を目指します。
◆ 「ペータも宮城もファームで打者を圧倒していました」
待ち焦がれた電話は、掛かってこなかった。
NPBへの支配下選手登録期限の7月31日。佐藤は、大阪市此花区にある舞洲の球団施設「青濤館」の自室で悶々とした時間を過ごしていた。
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「前の年はそんなことを考えもしなかったのですが、今年は、もしかしたらあるんじゃないかと、期待をしてしまいました」
30日の夜着の新幹線で帰阪。NPBへの登録タイムリミットとなる31日は、いつ球団から連絡があってもいいように、どこにも出かけず、寮の自室で携帯電話を脇に過ごしたという。
横浜隼人高校から2020年に育成ドラフト1位で入団。1、2年目はウエスタン・リーグ各4試合に出場（2敗、3敗）し、3年目の22年は主に先発で起用され19試合に登板。2勝5敗、防御率5.96。
今季は7月末までに5勝3敗、防御率は4.91ながら先発ローテーションを守っており、佐藤が球団から支配下の連絡を心待ちにしていても不思議ではなかった。
「それはしょうがないんで。毎年そうなんですけれど、7月31日までに（支配下登録が）なかったら、次の年の契約を取りにいくしかないんです。次の年もオリックスで野球ができれば、チャンスはいつかあります。これまでもそうやって、次の年、次の年と切り替えてやってきました」と佐藤。
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「（規定には）2イニング足りなかったのですが、しっかりと先発の役割は果たせたのではないかと思います。我慢して使っていただいたこともあるのですが、（ローテで）回らないといけないしんどさとか、調整の仕方などは分からなかったので、いい経験をさせていただきました」と自信をのぞかせる。
それでも、「勝ち星だけを見たらって感じですね。ペータ（山下舜平大）もそうですが、宮城もファームで打者を圧倒していました。それに比べたら、技量も体力もまだまだです」と反省が口を突く。
◆ 「あの時のミーティングが僕の人生を変えてくれました」
話を聞いた10月5日は、支配下、育成各3選手が戦力外通告を受けた日だった。5m先には、スーツ姿の先輩らがコーチ陣やスタッフ、選手らに別れを告げる厳しい現実があった。
同期入団は育成の8人を含む13人。現在チームに選手として在籍しているのは佐藤を含め、1位・宮城、2位・紅林、3位・村西良太、4位・前佑囲斗、育成3位・中田惟斗、同4位・平野大和（今年7月26日に支配下登録）の7人だけという厳しい世界だ。
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プロでの4年間、支えになっているのは高校時代の教えと、仲間の存在だ。
恩師の水谷哲也監督（59）は、15年ドラフト2位の宗佑磨や19年2位の左澤優らを指導してきた。
「高校の監督さんには、1年の時から『最後は人間力、人間性だよ』と教わってきました。『生き残っている人は、みんなちゃんとした人たち。野球の上達も人間性からだよ』と。オリックスに来て、平野（佳寿）さんや比嘉（幹貴）さんは凄くいい方で、野球が上手いのは当然ですが、やっぱり人間力のある方が上達して生き残っていく世界なんだなと。監督さんの言う通りなんだとわかりました」
佐藤には、忘れられない出来事がある。
2年夏の北海道合宿。移動中のバスの車中で開かれたミーティングで、佐藤は他の投手陣から「お前はこれからエースになるのに、練習が足りない」「俺たちは必死になって練習しているのに、練習しないお前が起用されるのは納得がいかない」などと、日ごろの練習への取り組みを厳しく指摘されたという。
「僕の代の投手陣は本当に練習する人が多くて、朝練など練習量も凄かったんです。僕は投手のリーダーで、自分ではやっているつもりでしたが、言われてみれば全然やってなかったと思います。本当に本音で話し合った感じでした。あの時のミーティングが僕の人生を変えてくれました。チームメートに感謝ですね」
水谷監督も、その場面を今でも覚えているという。
「うちは合宿所もありませんから、移動中のバスの車内をコミュニケーションを深める場として利用し、『バスミーティング』と呼んでいます。佐藤は身体が大きいため、バランスよく投げるようにするためには他の選手以上に鍛える必要がありました。みんなからの指摘で、エースとしての自覚が芽生えたと思います」と語る。
「プロ4年目になっても、毎回、登板前には『今日、投げます』とLINEが入り、試合後も結果を報告してくれます。そんなことを今もしてくれているのは、彼だけです。親御さんの教育もよかったのでしょうね。他のチームなら出番はあるかもしれないよ、と水を向けたら『オリックスがいいんです』と。いい先輩がいて練習環境もいいのでしょう」といつまでも実直な佐藤に目を細める。
◆ 「気を抜けない環境のオリックスにいてよかった」
18日から始まるクライマックスシリーズ・ファイナルステージ（京セラD大阪）を前に調整に励む一軍とは遠く離れた宮崎県内で、二軍は「フェニックス・リーグ」を戦っている。
佐藤はチーム開幕戦となった日本ハム戦（SOKKEN）で先発し、4回を60球、1安打2三振、1四球、無失点。直球を主体にスライダー、フォークボールで打たせて取り、出した2走者に二塁を踏ませなかった。
この日、「1番・二塁」で3安打を放った宜保翔は「基本、真っ直ぐがよく、変化球でもストライクが取れていたので、メチャクチャ落ち着いて投げているように見えました。去年よりポンポンとストライクが取れていましたし、真っすぐは球速より、強い球がいっていて打者も差し込まれて打ちにくそうでした。テンポもよくて守りやすかったですね」と成長ぶりを語る。
チームには、ベテラン勢のほか手本となる若手も多い。
「（山本）由伸さんや宮城は試合のない月曜日に舞洲に来て練習をします。一軍であれだけ結果を残している人が、誰よりも練習しているのを見たら、ファームで勝った自分が浮かれている場合じゃない。いいお手本がいっぱいいて、気を抜けない環境のオリックスにいてよかったと思います」
一軍投手陣の“壁”は厚いが、実直に挑んでいく。
＜おわり＞
取材・文＝北野正樹（きたの・まさき）
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このニュースに関するつぶやき
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今季は今いるメンバーで独走優勝してしまったのだから仕方ない。由伸がいなくなる来季は、キャンプを順調にいけば、開幕前には支配下になれると思う。
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