『呪術廻戦』呪いの王、両面宿儺なぜ強い? 力ではなく知性で人を蹂躙する“最強”の理由を考察

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2023年10月18日 10:50  リアルサウンド

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©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

※本稿は『呪術廻戦』単行本最新刊までのネタバレを含みます。


 『呪術廻戦』の世界において、史上最強の存在と言われている“呪いの王”こと両面宿儺。実際にその術師としての実力は、いまだ底が見えてこないほどに圧倒的だ。しかし実は宿儺の強さの本質は、単純な力ではなく、むしろ知性にこそ宿っているのかもしれない。


(参考:【写真】『呪術廻戦』リアルに再現した五条悟のフィギュアを見る)>【写真】のリアルに再現した五条悟のフィギュアを見る)


  10月4日に発売されたコミックス24巻は、まさに宿儺の知略がこれでもかと発揮された巻だった。まず注目すべきは、伏黒恵の身体を奪うことになった第212話の事件だ。


  そもそもの布石として、宿儺はかつて少年院での戦いの後、虎杖悠仁と“とある契約”を交わしていた。それは「契闊」の言葉を合図として、虎杖に1分間肉体を明け渡させるというものだ。当然、虎杖は契約を受け入れようとしなかったが、誰も殺さず、傷つけないという縛りを設けることで妥協に至っていた。


  この伏線は長らく放置されていたが、第212話でついに実行に移されることに。宿儺は縛りに「虎杖自身を傷つけること」が含まれていないと読み、虎杖の肉体から小指をちぎる。そして伏黒に無理やり飲み込ませることで、受肉先を虎杖から伏黒に変えたのだ。一見何の問題もないように見える契約を結ばせ、その穴を付くことで最大の利益を得るという、長期的かつ巧妙な作戦がそこにはあった。


  さらにその後、宿儺は来栖華に受肉した「天使」の能力によって危機を迎えるが、またも邪悪な知略を披露。幼い頃から伏黒に想いを寄せていた来栖の心理を利用し、ハニートラップのような作戦を仕掛けることで、逆転勝利を収めている。


  もしかすると宿儺は虎杖に受肉していた頃から来栖を観察・分析し、その弱点を利用する方法を考えていたのかもしれない。来栖を見事に騙した演技力は、人間の心理に対する理解度の高さを物語っている。


  さらに宿儺は虎杖と禪院真希を相手に戦った際、臨機応変な戦いぶりを見せていた。直接的な攻撃手段をとると、自身の内側にいる伏黒の妨害によって呪力出力が落ちることに気づいた宿儺は、間接的に2人を攻撃する術を瞬時に編み出したのだ。


宿儺が「呪いの王」である所以…


  実をいえば宿儺は物語の序盤から、さまざまな知略を見せ付けてきた。たとえば「呪胎戴天」では、一時的に虎杖と身体を入れ替わった際、その肉体から心臓を抜き取るという驚きの行動をとっている。宿儺は心臓なしでも生きられるため、命を盾として、虎杖に肉体の主導権を取り戻せないようにする……という魂胆だ。


  虎杖が自分の命を犠牲にすることを厭わない人間だったため、結果としては失敗に終わったものの、人間の恐怖心や生への執着をよく理解した“呪いの王”らしい計略と言えるだろう。


  また、「渋谷事変」では伏黒が呼び出した式神・八握剣異戒神将魔虚羅との戦いで、鋭い観察眼を示していた。たった数回の攻撃で、魔虚羅の能力が「あらゆる事象への適応」であることを見抜いていたのだ。


  バトル漫画の最強キャラといえば、圧倒的な力を相手に押し付けて慢心するタイプが多いが、宿儺は真逆。むしろ努力型の主人公のように、つねに頭脳を働かせ、柔軟な思考でその場の最適解を導き出そうとしている。それこそが宿儺という存在の、もっとも厄介な点ではないだろうか。


  よくよく考えると、『呪術廻戦』に登場する強敵はいずれも頭脳戦に長けている。特級呪霊たちを導いて渋谷を混沌に陥れ、あの五条悟を封印することに成功した羂索は、それを象徴する人物だ。また、“暴君”と称されるほどの暴力の化身である伏黒甚爾も、「懐玉・玉折編」では五条相手に頭脳戦で優位に立っていた。


  こうした戦いぶりを見るに、術師の戦いは知性がものを言うのかもしれない。果たして虎杖たちに、宿儺や羂索を出し抜く術はあるのだろうか……。


(文=キットゥン希美)


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