ひろゆきに小林幸子、松平健まで……主人公に有名人の起用が続く“異世界転生ファンタジー”人気の理由

138

2023年10月19日 10:21  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

©林たかあき・遠田マリモ(秋田書店) ©SANKIPROMOTION

 ひろゆきが招かれ、小林幸子が喚ばれた「異世界」に今度はマツケンが降臨する。11月6日発売の「月刊少年チャンピオン」12月号から連載が始まる『マツケンクエスト〜異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す〜』(原作・林たかあき、作画・遠田マリモ)は、俳優の松平健が舞台の最中に異世界へと召喚されて魔王と戦うといったストーリー。ひろゆきが論破によって敵を退け、小林幸子がラスボスとしての凄さを見せるなか、マツケンはいったい何で戦うのか。そもそもマツケンは強いのか。今から連載が待ち遠しい。


(参考:【画像】現在制作中『マツケンクエスト』の1シーン


 現実世界で死んだ引きこもりやサラリーマンや女子高生が異世界に転生して、女神にもらった異能の力を駆使して大冒険を繰り広げたり、最弱のスライムから成り上がって魔王になったり、乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢になって生き延びようと苦労をしたりといった「異世界転生・転移もの」の作品が、小説や漫画の世界で人気となっている。現実世界とは違った人生を歩んで、新しい経験を得たいと願っている人たちの願望を、すくい上げているからだろう。


 やりなおしの人生だから、前世で得た知識や経験を活かせるというアドバンテージがあって、しっかりと成功していく展開が心地よい点も、そうした「異世界転生・転移もの」が支持される背景にある。中には魔法の力だけが異常に強い幼女に転生させられては、過酷な戦場に送り込まれる転生者もいて、戦術や戦略の知識を持っていても、常に命の危険にさらされている。それでもしっかりと生き残っているのだから、前よりは悪い人生ではないのかもしれない。


 『マツケンクエスト〜異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す〜』も異世界転生・転移といった部分は同じだが、現実世界で功成り名をとげた存在がまるで違う世界に行くといったところが、無名の転生者たちによるやりなおしストーリーとは少し違う。この場合は、現実世界で発揮されていた才能が、異世界ではどれくらい通用するのかといった興味をまずそそられる。


 「となりのヤングジャンプ」で連載中の漫画『異世界ひろゆき』(原作・戸塚たすく、作画・西出ケンゴロー、監修・ひろゆき)の場合は、ひろゆきこと西村博之が異世界に召喚されるという設定。魔王ベーグが100年ごとに召喚される勇者のことごとくを、召喚された瞬間に葬る「産地直葬」の戦法を取り続け来た果て、1000年後に召喚された勇者も同じように葬られるはずだったのが、なぜか遅刻して現れ、魔王ベーグの最終奥義も跳ね返して逆に攻略してしまう。


 どうして遅刻したのか。それはやりたいことがあればそちらを優先するひろゆきだったから。どうして魔王ベーグがかなわなかったのか。それは技も言葉もことごとく論破されたから。実にひろゆきらしい戦いぶりで、その後も異世界を勝ち進んでいく展開から、改めてひろゆきという人物が、現実世界でもなかなか沈んでいかない理由がうかがえる。


 「月刊ミステリーボニータ」7月号から連載が始まった『異世界小林幸子〜ラスボス降臨!〜』(監修・幸子プロモーションが監修、脚本・猪原賽、漫画・國立アルバ)の場合は、強い存在感からネットでラスボスとあだ名される小林幸子が、魔王として異世界に召喚され、NHK紅白歌合戦で見せたような巨大な衣装に身を包み、圧倒的な歌唱力で向かってくる横暴な勇者を跳ね飛ばす。小林幸子に今の若い世代が抱くイメージをデフォルメして見せてくれる展開が、評判を呼んでいる理由だろう。


 ここで浮かぶのは、マツケンにはどんな力があるのだろうか、ということだ。マツケンとは俳優の松平健の愛称であり、そして舞台公演の最後で金ピカの着物に身を包み、ちょんまげ姿でサンバを歌い踊る「マツケンサンバ」のパフォーマンスを繰り広げるキャラクターだ。確かにインパクトは十分だが、何かビームを放つとか、技を繰り出すといったことはない。それでどうやって魔王を成敗するのか。サンバのリズムに引きずり込んで疲れさせるのか。絢爛さの前にひれ伏させるのか。まったく分からない。


 あるいは“中の人”である松平健が、過去にドラマなどで演じてきた役で勝負をするのか。これならなかなかの強者たちを繰り出せる。代表格が『暴れん坊将軍』の八代将軍徳川吉宗で、征夷大将軍という権威と権力もある上に自身も相当な剣豪ぶりで、たいていの敵なら圧倒できる。それとも『鎌倉殿の13人』で演じた平清盛だろうか。平氏の棟梁として武力と財力を繰り出し天下を平定できる。『草燃える』では『鎌倉殿の13人』で小栗旬が演じた北条義時を演じていて、鎌倉幕府を盤石のものにした才知を繰り出し刃向かうものを殲滅できる。


 俳優としてそうした役を自身に召喚して戦っても面白い。松平健くらいの俳優になれば、本人と変わらないオーラを放ち、才知を発揮できるだろう。そうなれば、平野耕太の漫画『ドリフターズ』で異世界に召喚された織田信長が類い希なる統治力を見せたり、島津豊久が頭抜けた突破力を見せたり、カルタゴのハンニバルやローマのスキピオが歴史に残るような戦略家ぶりを見せたりしているような活躍を、役になりきったマツケンも見せてくれるに違いない。


 俳優といっても人間に過ぎないのだから、魔王という超常的な存在にかなうはずがないといった真面目な意見も出て来そうだ。それを言うならひろゆきだって実際にビームを放たれれば燃え尽きるし、小林幸子も斬りつけられれば傷を負う。『ドリフターズ』の織田信長も最新の第7巻で黒王軍に攻められ瀬戸際に追い詰められ、島津豊久も瀕死の状態に追い込まれる。人間は無敵でも不老不死でもない。


 それでもひろゆきは論破王として無双し、小林幸子もラスボスらしさを見せ続ける。理由は「そういうものだから」。キャラクターとして付与された属性の前にリアリティなど意味がない。津田彷徨の小説『プロレス棚橋弘至と! ビジネス木谷高明の!! 異世界タッグ無双!!! 』では異世界に転移したプロレスラーの棚橋弘至が、オークを倒しドラゴンを従える強さを見せる。人間ごときがと思うなかれ。プロレスラーは違うのだ。「そういうもの」なのだ。


 そうした現象が『マツケンクエスト〜異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す〜』でも起こるなら、松平健もマツケンとしてサンバと豪華な衣装と付き従っている腰元ダンサーズを駆使して、魔王でもモンスターでも倒しそう。役として暴れん坊将軍になれば上様としてどんな敵でも一喝しそう。それはある意味で予定調和かもしれないが、人はそんな予定調和が好きで『暴れん坊将軍』を見たり、マツケンの舞台を楽しんだりしている。


 果たしてどんな活躍を見せてくれるのか。興奮に満ちた舞台の幕がまもなく開く。


画像提供=©林たかあき・遠田マリモ(秋田書店) ©SANKIPROMOTION


(文=タニグチリウイチ)


このニュースに関するつぶやき

  • 異世界転生モノだらけになた (´・Д・)」
    • イイネ!20
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(94件)

ランキングゲーム・アニメ

前日のランキングへ

オススメゲーム

ニュース設定