なんでプレリュード? ホンダの新型ハイブリッドスポーツカーを徹底調査

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2023年11月01日 08:01  マイナビニュース

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ホンダは「ジャパンモビリティショー2023」で新型クーペ「プレリュード コンセプト」を発表した。「プレリュード」といえば、ホンダがかつて生産・販売していた2ドアクーペだ。ミニバンやSUVの人気が全盛のいま、なぜクーペのプレリュードなのか。開発の背景を担当者に聞いた。


○22年ぶりにプレリュードが復活?



「プレリュード」と聞いて懐かしく思った。1978年11月、多様化するニーズに対応するため、「前奏」や「先導」といった意味の名を冠して登場したスペシャリティクーペが初代プレリュードだったからだ。



サイドパネル一体型からくる安定性と高い走行性能、ほぼすべてのグレードに標準装備された電動式サンルーフがスペシャリティと評された所以だ。その後もモデルチェンジを繰り返し、1996年には5代目プレリュードが登場。いずれの世代も乗車定員は4人だったが、後席はかなり狭く実用的とは言い難かった。それでも支持されてきたのは、一貫して2ドアスタイルを継承し、ふたりで最高のドライブを楽しむための車内空間を提供し続けてきたことにある。しかし、ライフスタイルの変化やミニバン、SUVの台頭などで2001年に販売を終了。23年の歴史に幕を閉じた。


2001年の販売終了から22年が経った2023年、ホンダは「プレリュード コンセプト」という車名でプレリュードの名を復活させ、ジャパンモビリティショー2023で公開した。



プレリュードが販売されていた1980年〜2000年代とは時代が異なり、2020年代は世界中の自動車メーカーがSUVやミニバンを次々と投入し、販売台数を伸ばしている。加えて、パワートレインは内燃機関からEV(電気自動車)へと急速にシフトしている時代だ。それでもホンダはクーペで、しかもEVではなくエンジンとモーターのハイブリッド車という形でコンセプトカーを発表してきた。言ってしまえば前時代的なコンセプトカーのようにも感じるが、なぜホンダはこうしたコンセプトカーを発表したのだろうか。実際にプレリュード コンセプトのエンジン設計・開発などを担当したという説明員に会場で話を聞くことができた。


○時代に合った「デートカー」を提案したい



プレリュード復活の狙いは? ホンダ説明員の解説はこうだ。



「プレリュード コンセプトはプレリュードそのものをオマージュするのではなく、時代に合ったクーペを作り、そして提案していきたいという思いで作り上げました。ミニバンやSUVが人気を博していますが、そうしたクルマをすべてのお客様が望んでいるわけではありません。もっと別の形で楽しめるクルマがないのかと考えたときに、クーペという選択肢にたどり着いたのです」


新しいプレリュードはどんな思いで開発したのか。



「プレリュードは『デートカー』などと呼ばれてきましたが、プレリュード コンセプトは今の時代のデートカーにマッチするように開発を進めてきました。その象徴が、無駄のないスッキリとしたボディを採用した伸びやかなデザインです。ふたりだけの空間を満喫できて、かつ実用的で低燃費なクーペ。それがプレリュード コンセプトなのです。例えば父親と娘、あるいは母親と息子、定年を迎えた夫婦、子どものいない若い夫婦、カップルなどがふたりで気軽に乗って楽しめるクルマを作り上げました」


プレリュード コンセプトは外装のみの公開。内装は開発途中のため非公開で乗り込むことはできなかったが、前出の担当者いわく「まったく新しいコンセプトのもとで開発された、落ち着きのある上質で快適な車内空間に仕上がっている」という。加えて、リアはハッチバックでとても大きく開く3ドアクーペとなっていて、利便性も兼ね備えている。


とはいっても、クーペの市場はとても小さい。日本国内でクーペは絶滅危惧種となっている。だが、かつてクーペが元気だった時代がある。例えば、日産自動車「シルビア」、トヨタ自動車「セリカ」などは、いずれも若者が乗るクルマとして人気があった。



それから数十年が経ち、セリカ、シルビア、プレリュードに夢中だった世代は、子育てを終え、ふたたび夫婦ふたりだけの生活に戻った。彼らが若い頃を思い出し、ふたりだけの旅行や買い物を楽しもうと思ったとき、その相棒として選択できるクーペが1台もないというのはあまりにもつまらなすぎる。プレリュード コンセプトは、すでに「ステップワゴン」(ミニバン)や「ヴェゼル」(SUV)、「シビック」(セダン)、「フィット」(コンパクトハッチ)、「N-BOX」(軽)など、多様なニーズに対応する車種をラインアップしているホンダだからこそできる提案なのではないだろうか。

○ハイブリッドにした理由は?



プレリュード コンセプトのトピックはもうひとつある。パワートレインだ。なぜEVではなくハイブリッドにしたのか。この点について担当者は次のように話す。



「詳細なスペックをこの場でお話できないのが心苦しいのですが、エンジン(内燃機関)のないEVとなってしまうと、エンジン音がまったくせず、走っているという実感が薄れてしまう面があると思います。少しでもエンジンが回転している振動や音を感じられたほうが楽しめるはずです。運転する楽しさ、操作する楽しさを追求するために、BEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)ではなく、あえてハイブリッドを選択しました。ハイブリッドであれば、ガソリンエンジンのような運転する楽しさと低燃費を両立できると確信しています。速さだけを突き詰めたクルマではなく、どこまでも走りたくなる気持ちよさと運転する楽しさを持ったクルマを目指しました」



最後に、昔のプレリュードとプレリュード コンセプトが見た目上は似ていないという点も気になったのだが、「デザインの共通点はほぼありませんが、速さだけではないという点は、初代プレリュードとの共通点かもしれません」とのことだった。お値段については「気に入っていただければ、高いと感じずに納得して購入いただける価格に設定する予定です」との回答が得られた。走行性能は「ひとりで乗るとスポーティーで、ふたりで乗ると滑らか」だそうだ。



日本での発売時期は「2020年代半ば」というから、2025年頃には登場すると期待したい。新時代のプレリュードは、ミニバンやSUVがひしめく自動車市場に一石を投じる存在になれるのか。少なくとも、クーペ市場が盛り上がるきっかけになることは間違いなさそうだ。


室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら(室井大和)

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