「呪物コレクター」が700万円以上を費やして呪物を集め続ける理由

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2023年11月05日 21:10  週プレNEWS

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150個以上の呪物を所有する田中俊行さん


人々に災いや福をもたらすという「呪物」。所有者に不幸がふりかかることもあるが、そんな呪物を率先して集めている人がいる。なぜ、いわくつきのものを集めるようになったのか、どう集めているのか、そして自身への影響は? 日本屈指の呪物コレクターであり、『ぼくと呪物の奇妙な生活 呪物コレクター誕生秘話編』(竹書房)を出版している田中俊行さんに聞いた。

【写真】150の呪物が集まる田中の部屋

■呪物集めで世界が広がる

――近年、展示会が話題になったりしている呪物ですが、田中さんが集め始めたのはいつ頃からなんですか?

田中 10年ほど前から怪談師として活動しているんですが、その時からイベント参加者が、動く日本人形や心霊スポットで拾った石など、なぜか「誰かに預かって欲しい」って持ってきていたんです。そんな感じでどんどん集まるんですが、まったく興味はなかったんですよ。


――興味をもったきっかけは?

田中 7年ほど前に、今の相棒的存在「チャーミー」を譲り受けてからですね。女の子の洋人形なんですけど、持ち帰ってからPCが起動しなくなったり、人形の口から米が出てきたり。それまでの呪物は何も起きなかったんですけど、物に宿るものってあるのかなと興味持ち出して、それからは自ら呪物を集めはじめました。現在は150個以上あって、旅費を含めて700万円以上かけています(笑)。

――怖くて手放そうとは思わなかったんですか?

田中 実際に体験すると怖かったですよ。一昨年の年末は日本人形を手に入れた際に、肺炎になって緊急入院しましたし。でも麻痺していくし、それより興味のほうが強かったですね。特に集め始めてから、土着の信仰の神様など呪物に文化的背景があることを知ったんです。それで世界が広がって呪物集めに加速が着いていきました。


――『ぼくと呪物の奇妙な生活』や『呪物蒐集録』(竹書房)を読むと、それこそ日本だけでなく世界中に呪物がありますよね。

田中 それこそタイは呪物大国なんですよ。一般人でも呪物を持っていたり、呪術師が普通に活動したりしています。面白いのがTシャツ屋にも"Tシャツの神様"がいたりするんです。仏教の国というイメージですが、実際は仏教、バラモン教、ピー信仰(精霊信仰)がミックスされているので、タイの神様は日本の八百万(やおよろず)の神よりも多い。

――その地域の信仰が深く関わっていると。

田中 そうなんです。だからタイの呪物はお土産でも売られている「クマントーン」みたいな、家族に福をもたらすお守り的なものが多い。アフリカもそう。ブードゥー教はもともとアフリカの原始宗教にキリスト教が混ざったものなので、邪悪や不幸を追い払う人形などがあったりします。

一方、キリスト教とかは全然意味が違ってくる。悪魔が入り込んだとか、サタニズムのものだとか人に対して悪影響を及ぼすものが多い印象です。


■SNSでつながる呪物コレクターたち

――そういった情報や呪物そのものはどうやって集めるんですか?

田中 SNSや紹介ですね。SNSに情報を載せていると、コレクターが連絡をとってきたりするんですよ。呪物は怪談イベントに来た人から譲り受けることが多いですが、オークションや骨董屋で買うこともあります。骨董屋では普通に置いていないんですが、呪物集めが趣味という話をすると、奥から出してきたりするんです。

――SNSは呪物コレクターにとっても便利なツールですね。

田中 呪物コレクターは世界中にいますからね。アフリカ専門とか、東南アジアだけとかジャンルに特化している人が多いので、それ以外の情報とかだと割と教えてくれるんです。あと引退する際に譲ってくれたり。


――どういう理由で引退される方が多いんですか? また自身で引退を考えたことは?

田中 めちゃくちゃ不幸が続いたとかで引退する人はいます。お坊さんになるのでやめる人もいました。積極的に集めるのはやめて、悪いものは手放していましたね。

僕自身は、死んだ時が引退する時ですね。一代で終わらすなよって譲ってもらったものもあるんで。僕が死んだら、姉の息子に押し付けます。続いていかないといけない約束なんで(笑)。

■本人が特級呪霊に?

――チャーミーに出会って魅力を感じコレクターになったということですが、集めていて呪物に対する印象に変化はありましたか?

田中 呪物って呪術的に作られたものと、心霊的なものがあります。人工的なものと自然発生的なものですね。それで呪いに関しては、必要とされて作られたはずなんですよ。なのに忌(い)み嫌われてしまっている。心霊も何か未練や目的があって取り憑いていると思うんです。

だからずっと残りたいなら残ってもいいと思うようになりました。少なくとも何か縁があって僕のところにくるものは、「うちに来たらそんな忌み嫌われることはないぞ、気が済むまで居たらいいから」という気持ちですね。


――呪物の立場に立っているような感じですね。

田中 怪談イベントやYouTube番組とかで呼んだ霊能者の方に言われました(笑)。「あなたは受けることも弾くことも出来ない何も感じられない呪物側です」って。霊的なものや呪いにとにかく鈍感らしいです。

――そうなった心当たりはあるんですか?

田中 呪物と関係ないですけど幼稚園児から小学3年生くらいまで、年に3回くらい犬に取り憑かれてたんです。突然、四つん這いになって家族を朝まで追いかけ回したり、噛みついたり。母の知り合いの霊能者にお祓いしてもらってピタッと治るんですけど、いつ犬になるかわからないし、だいぶ家族も悩んでました。

でも中学2年生で交通事故にあって、一週間記憶喪失になったんですよ。名前や連絡先を聞かれても、砂時計みたいにさぁっと消えて、言葉も出ない。それ以来、さらに変になったなって気はします。それと同時に怪異現象とかにすごく鈍感になったんですよね。


――田中さんは『ぼくと呪物の奇妙な生活』では一昨年から、ひとり暮らしを始めたことが描かれていますが、それまで実家の家族には影響はなかったんですか?

田中 特になかったんですけど、"御札"のおかげかもしれませんね(笑)。部屋のドアに「変なもの集めるな!」とか「早く家を出ろ!」とか、母親から罵倒の紙を貼られていたんですよ。

呪物を集めていて自分に何もないパターンってあるんですけど、その場合は必ず身内にいくらしいんです。でもそれも無かったのは、母の念がこもった結界になってたのかもですね(笑)。

――最後に近年、呪物ブームとも言える状況になっていますが、コレクターとしては喜ばしい状況なんでしょうか?

田中 どうなんでしょうかね。悪いことではないですけど。少なくとも呪物界隈では過去一で盛り上がってます。『呪術廻戦』の影響は大きいですよね。僕も読んでいるんですけど、伏黒恵というキャラが鵺(ぬえ)を操っているのを見て、「僕、伏黒やん!」って思いました(笑)。ミイラ化した鵺の手を持っているんで。

ちなみに指ではないですけど、両面宿儺(りょうめんすくな)の像も持ってますよ。両面宿儺って『日本書紀』では逆族として描かれているんですけど、飛騨地方では英雄として信仰されているんですよ。呪力を得られるなら、是非その指を食べてみたいですね。


●田中俊行
1978年、兵庫県生まれ。オカルトコレクターとして、怪談や呪物を集める。2021年「怪談最恐戦」で優勝。YouTube番組「不思議大百科」「トシが行く」などに出演。11月21日(火)には下北沢BAR?CCOにて開催される「住倉カオスの"北沢K&Y談"!withちゃんまい」にゲスト出演予定
公式X(旧Twitter)【@tetsu_gamon】

取材・文/鯨井隆正 撮影/西邑秦和(呪物)

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  • 「触らぬ神に祟りなし」「余計な事に首を突っ込むな」を信条にしてるオカルト歴40年の私だが、ある意味同類かもな(苦笑 書庫をその手の本で一杯にしてるし(悪魔召喚の書から安土桃山時代の符術書まで)。
    • イイネ!21
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