森口将之のカーデザイン解体新書 第61回 ヒョンデの新作SUV「コナ」は見た目が攻めてる! さて、乗り味は?

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2023年11月15日 08:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
2022年に日本市場への再上陸を果たした韓国のヒョンデが3番目の車種「コナ」(KONA)を発売した。電気自動車(EV)のSUVだが、先に日本で発売となった「アイオニック5」(IONIQ5)よりひとまわり小さく、デザインやパッケージングも大きく異なる。試乗できたので、デザインと使い勝手を確認してきた。


○アイオニック5とデザインが違う理由



「コナ」はヒョンデのコンパクトSUV。初代は2017年に登場しており、日本で発売されたのは2代目にあたる。韓国では2023年3月に発表となっていた。車名はコーヒー豆でも有名なハワイ島の地名が由来。SUVにリゾート地の名前を与えるのはヒョンデの伝統で、かつて日本に導入した「サンタフェ」もその1台だ。



コナにはガソリン車とハイブリッド車もあるが、日本ではEVのみの販売となる。ボディサイズは全長4,355mm、全幅1,825mm、全高1,590mmで、日本車ではホンダ「ヴェゼル」が近い。


10月30日に東京都内で行われた発表会では、ヒョンデデザインセンターのトップを務めるサイモン・ローズビー氏が来日し、プレゼンテーションを行った。同氏によれば、ヒョンデのデザインは「センシュアス」と「スポーティネス」がキーワードだ。



発表会で実車を見た印象は、日本で販売中のアイオニック5とも燃料電池自動車「ネッソ」とも姿が異なり、日本の同クラスのSUVと比べると個性を明確にアピールしているようだった。このあたりは国民性の違いも関係しているかもしれない。



翌週、静岡県で開催された試乗会でのインポーターの説明を付け加えれば、アイオニック5はEV専用のサブブランドなので独自の造形を与えており、2018年発表のネッソはひと世代前のデザインとのことだった。



コナで最も目立つのがフロント/リアまわりだろう。アイオニック5にも使われたピクセルデザインのLEDを全幅にわたって線のように並べ、その下のコーナーにウインカーなどを集めた造形は、好き嫌いが分かれそうではあるが、ひと目でコナだとわかる。


フロントでは充電口も目につく。アイオニック5とは位置が違うが、コナのEVは先代からこの位置にあった。ここは普通充電と急速充電が分かれている日本仕様専用で、充電リッドは横長になったことに合わせて、フリップ式からスライド式に作り替えている。


○床の高さを感じないバッテリー形状



ボディサイドも、パッケージングそのものは今のSUVのスタンダードと言えるものの、明確に張り出した台形の前後フェンダー、リアクォーターのモールからドアパネルにつながる斜めのキャラクターラインなどは、かなり大胆だ。


ボディカラーはシングルトーン6色と2トーン3色を用意。特筆すべきは「デニムブルーマット」で、藍染めのイメージを取り入れた日本専用色だという。



エクステリアとは対照的に、インテリアにはブランドとしての共通項が見られる。その代表は、横長のディスプレイを据えたインパネだ。ただしコナでは、アイオニック5のように平面ではなく、メーターとセンターディスプレイの境目で角度をつけている。


その下にあるエアコンなどのスイッチが並ぶパネルも、ドライバーを囲むように角度をつけてある。前出のローズビー氏は「ドライバーセンタードインテリア」と称しており、コンパクトSUVらしくアクティブでエモーショナルな雰囲気をアピールしているようだ。

試乗会でコナをドライブしてみると、アイオニック5同様にセンターコンソールが広くリッドがないので、とても使いやすい一方で、スイッチが多く形状や色も似ているので、慣れるまで少し時間がかかりそうという印象を抱いた。


後者についてインポーターに報告したところ、アイオニック5とは違ってエンジン車やハイブリッド車もあり、幅広いユーザーに対応した結果、このようなレイアウトになったという説明が返ってきた。



多くのEVはフロアの下に駆動用バッテリーを搭載する関係で、車種によっては床の高さが気になることがある。しかしコナは、ストレスなく乗り降りできた。



発表会ではエンジニアが、前席の足元部分のみバッテリーを一段薄くしてあることを紹介していた。たしかにその恩恵は感じたし、後席も違和感のない高さだった。



その後席だが、身長170cmの筆者が前後に座った場合、ひざの前には20cmぐらいのスペースが残り、頭上空間にも余裕があった。シートサイズがたっぷりしていて、座面や背もたれの傾きもあり、リクライニングもできて、このクラスとしてはゆったり過ごせる。



容積466リッターという荷室は、上下2段にセットできるフロア、豊富な床下収納スペースなど、マルチパーパス性に配慮したつくりだった。


○シティポップ感覚のCMにも注目



走りについては、全体的によくまとまっていると思った。



加減速は唐突感がなく自然。パドルで回生ブレーキの程度を調節できるのは便利だし、最強にしたときに作動するワンペダル方式の制御にも違和感はない。日本専用にチューニングしたというドライブモードは4種類から選べるので、初めてEVに乗るという人も、自分に合った特性が選べそうだ。



標準装備のカーナビは動作や操作に不足がないだけでなく、画面にリアルタイムの映像を映し出す「ARモード」まで用意されている。車線変更時にはドアミラーで見えないゾーンの画像がメーターに映し出されたり、スマートロックやスマートウォッチでドアロック/アンロックが可能となっているなど、先進的なブランドイメージをうまく表現していた。


乗り心地はドタバタ感が気になったアイオニック5より落ち着いていて、ボディの剛性感の高さも確認できた。アイオニック5の後輪駆動に対してコナは前輪駆動になるものの、EVということで前がさほど重くなく、バッテリーのおかげで重心が低いので、ハンドリングについても自然な身のこなしに思えた。



最後になるが、コナはプロモーションも個性的だ。すでに見た人がいるかもしれないが、テレビCMは世界的なブームになりつつある「シティポップ」をテーマにしており、ネオンサインを使って「憧れのままに」というキャッチコピーを映し出す。



1970〜80年代に憧れていた先進的な世界がコナで体験できるという意味を込めたそうだが、日本車に比べて創造力も実行力もあって、あの時代に青春時代を過ごした筆者は「やられた!」という気持ちになってしまった。


森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら(森口将之)
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