札幌のまちなか40会場で5万人超え!? 都市型フェスが「熱い」理由を探る

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2023年11月15日 13:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
9月13〜17日の5日間、札幌市を中心に開催された都市型フェス「NoMaps2023」。札幌のまちなかを中心に40会場で125プログラムが行われ、過去最高の5万5,310人を動員しました。



年々大規模になるフェスの人気の理由とは? 本イベントに関わるメンバー3人に聞きました。


○見慣れた札幌の景色が変わった?



「都市型フェス」「複合型ビジネスフェス」「出会いのOMATSURI」など、さまざまなワードで表現されるNoMaps。ひとことで伝えるフレーズを見つけられないのがもどかしいところですが、それだけ混沌としていて変化し続けている運動体と言えるのかもしれません。



今年は札幌市内40会場で同時多発的に「BIZ」「WELLNESS」「SOCIAL」「GLOBAL」「SPACE」など、さまざまなカテゴリーのカンファレンスやイベント、ミートアップなど多彩な事業が繰り広げられました。


全国に類を見ないユニークなフェスとなったというNoMapsの進化と今後について、総合プロデューサーの五十嵐慎一郎さん、事務局長の廣瀬岳史さん、そしてNoMapsと連携するビジネスコミュニティHOPの河井潤さん(NTT東日本−北海道)の3人でざっくばらんに語り合ってもらいました。


廣瀬:NoMaps2023の特徴は会期を10月から9月に変えたこと。「さっぽろオータムフェスト」で人通りの多いタイミングで実施できたので、まちなか全体がNoMapsの会場のような雰囲気づくりができました。特に週末は札幌の中心部がいつもと違う景色になっていましたね。



五十嵐:これはえらいことになってきたな、と思いました。土日は各会場をチャリで回ったんですが、テレビ塔のそばのスノーボードパーク「SNOW SMASH」から順に会場を移動していったら、鳥肌がたちましたね。1団体がやっているわけではなくて、札幌・北海道で何かやりたい人たちがそれぞれ立ち上げた企画が連なっている。やべえな、これって。



河井:大通公園のオータムフェストの横ラインと、NoMapsの縦ラインに交差点ができて、出会いの空間になっていたのが面白かったですね。天気に恵まれたのもありますけど、NoMapsを知らずにふらっと立ち寄った方も多かったはずです。



廣瀬:ホコテンになっていた駅前通りのSPORTSの会場は「さっぽろレインボープライド」のパレードも混ざって、むちゃくちゃバズってましたね。ドラァグクイーンが一緒に盛り上げてくれたおかげです。

○どこもかしこも熱量がやばい



廣瀬:もうひとつ今年は、カンファレンスを「BIZ」「WELLNESS」「SOCIAL」「GLOBAL」「SPACE」などのカテゴリーに分けてそれぞれの会場で展開し、それらを混ぜ合わせて夜のミートアップ(交流)を企画したことも特徴でした。自分たちで手を挙げた人たちが、それぞれにイベントをつくっていったので、どの会場も熱気がありました。夜は夜で分野に関係なく200人以上が集まり、普段は会えないような人と熱量のある会話をしている。「刺激になった」と言ってくださる方が多かったので、一言でいえば大成功だったと思います。


河井:毎晩あるミートアップがとにかくすごい。「あれやろう」「これやりたい」と、みんなが新しい未来を語っているのに圧倒されました。



廣瀬:2020年からの2年間がオンライン開催だったので、みんな「これじゃないな」と感じていたんだと思います。もちろん配信とハイブリッドでやっていくのは大事ですが、このまちじゃなきゃできないこと、直接会うからこそ感じられるものがあって「お祭り」なんだと実感しましたね。


五十嵐:会期中からもう「来年どうする」とか「こんなことやりたい」とか、続々聞こえてくるのは本当にうれしい限り。いろんな人が一気に「自分ごと」として考えるようになって、いい流れだなと感じています。

廣瀬:イベントの熱量って、どれだけ来年の話が出るかがパラメーター。みんな2024の話をしてたという点から見ても、すごく盛り上がってた。道外から来た方々も「来年も来ます」って速攻スケジュールを押さえていて。それくらい手応えがありました。


○HOPとの連携で、お祭りを継続的な活動へ



五十嵐:今回、40会場あったので、全部見ることができた人は誰もいませんが、河井さんはじめHOP(Hokkaido Open Platform)のメンバーがあちこちに散らばってリアルタイムで情報発信してくれたのは心強かったですね。ICTとは言いつつ割と足で稼ぐゲリラ戦でした。



河井:うちの若手に「とりあえず写真撮って、コメントして」と各会場に送り出したんですが、彼らも刺激になったようです。「明日からの仕事に活かしたい」みたいなこと言ってましたから。どうしても一般ビジネス層は手持ちの仕事に追われて、新規事業やクリエイティブとの接点が少なくなるので、HOPがその入口になれたらいいのかな、と。HOP のコミュニティでNoMapsを初めて知ったというビジネス層もいるので、我々の担うべき役割も今回かなり見えてきたと感じています。


廣瀬:HOPによって、NoMapsが今まであまり取り込めなかった層とつながっていけるんじゃないでしょうか。HOPのコミュニティに所属しているという緩いネットワークがあるだけでも、すごくありがたいんですよね。その緩やかなつながりの中で、これからハレの日以外の動きを継続的にしていけるのでは、と期待しています。

○来年に向けて、今できることから



河井:五十嵐さんが総合プロデューサーになってから、真面目さより楽しさが強調されたんじゃないかと思うのですが、運営に当たって大事にしていることはありますか。


五十嵐:去年NoMaps2022は「楽しくなけりゃ未来じゃないだろ」っていうキャッチコピーだったんですけど、コロナ禍ということもあって「NoMapsはスタートアップのためのイベントだよね」という限定的な視線がまだ強かったんですよね。それをどうしたら札幌・北海道全体のお祭りにしていくか、を考えましたね。



廣瀬:来年はもっと若い世代にも告知できたらいい。 STUDENTSのパスは登録すれば入場がタダなので、もともと大学生は結構いるんですが、今年は学校の許可をもらって来てくれた高校生もいました。授業の枠でNoMapsに来てもらえるように仕掛けたいですね。



河井:うちの会社(NTT東日本−北海道)もそうですけど、いろんな会社がNoMapsに若手社員を派遣すれば、日常的なビジネスともっと密接につながるはず。



廣瀬:管理職がカンファレンスに来るより、下の世代をよこしてほしいですよね。若手は上司が「行って来い」って言わないと来られないから。



河井:リスキリングと言うと堅苦しいけど、自分のビジネスの範囲でやってること以外の世界を知ると、だいぶ見え方が変わってくる。NoMapsはそういう体験にもってこいだと思います。



「未来に向けて切磋琢磨する人たちが集い、アイデアを広げ、気づきを共有しながら、新しい領域を切り拓いていくこと」を目的に、産官学の実行委員会形式で運営されているNoMaps。2024年の開催は9月11日(水)から15日(日)に決まりました。


最後に、総合プロデューサーの五十嵐さんに「忘れずに書いておくことはないか」と尋ねたら、「そうですね……」と一瞬考えてから「お金ですかね」と直球回答。



「個人のふるさと納税でも企業のふるさと納税でも、それ以外の寄付でも、お待ちしております」とのこと。「ALL HOKKAIDO体制」で運営されているとはいえ、税金の投入はなく、運営資金には悩みが尽きない様子。長く続けていくために必要な仕組みづくりを模索しているようです。



井上由美 いのうえ・ゆみ 函館生まれ、札幌在住。広告制作会社のコピーライターを経て2000年からフリーランスのライターに。好きなものはコーヒーとお酒、紙の本、海の匂いと波の音、犬、子ども、お風呂。嫌いなものは戦争と原発と大声。 この著者の記事一覧はこちら(井上由美)

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