「生まれ持ったものが違う」プロビキニ選手・MIHARUが感じた世界の壁 それでも表現したい「体を鍛えることの幸せ」

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2023年11月17日 06:31  webスポルティーバ

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MIHARU インタビュー中編(全3回)

 日本人女性で初めて国際団体・IFBB(国際ボディビルディング・フィットネス連盟)のプロカードを取得した、プロビキニアスリートのMIHARUにインタビュー。海外のコンテストへの出場経験もある彼女は、世界のフィットネスシーンをどう感じたのだろうか。中編では、日本のフィットネスアスリートがぶつかる世界の壁について、話を聞いた。

【「生まれ持ったもの」の差を補うのは?】

ーープロビキニアスリートとして国内外のコンテストやショーに出場した経験があるMIHARUさん。世界との壁を感じることは?

MIHARU(以下同) ひとつは言葉の壁です。大会前日の選手ミーティングでのインタビューやファンとのミートアップ、審査基準の説明、ジャッジとフィードバックはすべて英語。

 さらに、外国人コーチをつけて、外国人ジャッジにステージ上で見てもらえるように自分を売り込みにいく。そこまでして初めてステージに上がれるようなものだから、自己主張や英語が苦手な場合は、そこでまず壁にぶちあたります。

ーーMIHARUさんはもともと英語が得意だった?

 得意ではないですが、競技を始める前から海外にはちょこちょこと行っていたので、最低限の英語はしゃべれましたね。

ーー体格や骨格の面でも苦労しそうです。

 海外のプロ選手は見れば見るほど骨盤の向きが前傾。前傾だとお尻やハムストリングに刺激を入れやすくて鍛えやすい。ビキニって、そこが露骨に評価基準に関わってくるから、そういう面では不利だと思うことはたくさんあります。

 それにビキニはトータルパッケージで見られるから、顔の大きさ、腰の高さといった「生まれ持ったもの」がものすごく影響されるんです。プロの国際大会になってくるとアジア人、とくに日本人は骨格的に華奢で足も短いから厳しい。もちろん、ポージングの丁寧さといった日本の選手が優れている面もあります。

ーー10月15日までスペインで開かれていた国際大会「IFBB アーノルド・クラシック・ヨーロッパ」で、安井友梨さんがフィットモデルの部で総合優勝しました。これはどのくらいスゴいことなんですか?

 アマチュアの大会にはなりますが、「アーノルド・クラシック」の名前を冠したコンテストで、日本人が優勝するのは前代未聞ですね。

 しかも、安井さん本来のカテゴリーであるビキニフィットネスだけじゃなく、フィットモデルでも出場して優勝。カテゴリーによって審査基準が違うから、ポージングやヘアメイクを使い分けなくてはいけなくて大変なんです。それなのに、しっかりと調整して結果を出すあたりはさすがだと思いました。

【ビキニフィットネスを通じて表現したいこと】

ーーIFBB会長がその肉体に惚れこんだというMIHARUさんでも、なかなか世界との戦いは厳しいものなんですか?

 現在も年1回、多くて2回ほど「プロショー」には出場していますが、賞金をもらえたのが2017年9月に出場した「プロアジアングランプリ」4位をとった時くらいで、トップ3には入ったことがありませんね。

ーー世界最高峰の大会「ミスター・オリンピア」に出場してみたい気持ちは?

 正直な話、ないんですよ。自分自身がこの世界に携われば携わるほど、骨格やそれ以外の部分でもトップにいくのが難しい現実に直面しています。つまり、「オリンピア」に出場して上位に入るポテンシャルが私にはないと思っています。

ーーMIHARUさん自身、大会の結果よりもビキニ競技を通して大事にしていることとは?

 ビキニ競技を7年間やって思ったのは、根を詰めすぎると反動がきて、体を壊すしメンタル面にもよくない。とくに女性の場合は、ホルモンバランスを崩して生理不順につながるとも言われています。

 私の競技者としての生き方や体づくりを応援してくれる人たちに、そういう無理がある状態で競技を続けるのが美徳だと思われちゃいけないなと思っています。

 いろんなものを犠牲にするよりも、競技を通して自分の人生を幸せにしていく。競技がすべてではなく、競技生活と自分の人生のバランスを考えて、「体を鍛えることが人生にとっていいスパイスになっているんだよ」ということを、ビキニを通して表現していきたい。

【ぜひ一度ジムへ行ってみて】

ーーSNS等を見ると、女性が鍛えることに否定的な意見を言う人も少なくありません。

 体を鍛えて、スタイルがよくなった女性を見て、普通、ネガティブなことを思わないじゃないですか。だからボディメイクは鍛える女性も、見る側もお互いにハッピーになることは間違いないと思うんです。

 自分が鍛えてないからといって、鍛えられたきれいな女性を見た時に否定的なことを言うんじゃなくて、ぜひ一度ジムに行ってみてください。きっと健康面にもメンタル面にも、いい影響がありますよ!

ーーMIHARUさん自身は大会も近いんですよね?

 今年11月26日にベルサール渋谷ガーデンで開かれる「JAPAN PRO 2023」に出場します。

 去年8月のジャッジのフィードバックをもとに、1年間、体づくりの方法を変えてやってきました。去年よりもっとビキニらしい体になったんじゃないかと思っていて、ジャッジの目にどう映るのか、見てくれるファンのみなさんがどう感じるのか、いずれにしても楽しみにしてもらいたいですね。

ーー後編では、MIHARUさんが競技に目覚めたきっかけ、コスプレイヤーとしての顔を掘り下げていきます。




後編<いじめで不登校→コスプレに目覚める→日本女性初のプロビキニ選手に! MIHARUが目指す「格闘系2次元キャラ」の理想の体とは?>を読む

前編<プロビキニのトップ選手が明かすフィットネス界のドーピング事情「絶対に使わないで。人生に必要か考えてほしい」>を読む


【プロフィール】
MIHARU みはる 
1990年、愛知県生まれ。不登校だった高校時代に、SNSで知り合った友人の誘いでコスプレを始め、2次元キャラクターの体を目指して筋力トレーニングもスタート。2016年に「オールジャパン フィットネス ビキニ選手権」でカテゴリー優勝し、翌2017年にはモンゴルで開催された「アジア ボディビル&フィットネス選手権大会」で総合優勝。同年、日本人初の、「IFBBプロ」となり、中国・香港にパーソナルトレーニングジムをオープン。コンテストの審査員、競技者へのポージングレッスンなどを行なう。

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