納得して治療を続けるために「患者力」を磨こう

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2023年11月20日 20:40  QLife(キューライフ)

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自分らしく生きるために治療を利用する


左から東先生、鈴木さん、司会の川上祥子さん (武田薬品工業提供)

自分や家族ががんになったとしても、病気や治療について理解するのは難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。一方で、治療ではさまざまな選択を迫られます。

製薬会社の武田薬品工業は、患者さんやその家族が医療関係者とよりよい信頼関係を築きながら、納得して治療を選択し、前向きに治療に取り組めるヒントを学べる、オンラインシンポジウムを開催しました(2023年10月22日)。 シンポジウムには、がん患者体験を活かしてピアサポート活動をする鈴木牧子さん(がんピアネットふくしま理事長)と、「患者力」について普及と啓発をしている東光久先生(奈良県総合医療センター総合診療科部長・臨床研修支援室室長)が登壇。患者さんが自分のことを話せる場所の必要性や、「自分らしく生きるために治療を利用する」という考え方を紹介しました。

患者同士が自分の気持ちを話せる場が重要

鈴木さんは2003年9月に卵巣がん摘出手術を受け、抗がん剤治療など2年間の治療を経験しました。その間、もっともつらかったことは「未来が見えない暗闇や、負のスパイラルに陥りそうな心、まわりからの興味本位の声かけ」であったと語りました。

がん患者さんや家族がもつ痛みは、仕事や結婚、治療費の支払いといった社会的・経済的痛みと、死への恐怖、将来を描くことができない絶望感といった精神的な痛みがあります。 がんに関する不安を相談したくても、医療者や健康な人とはコミュニケーションがうまくいかないと感じることもあるのが患者さんの本音だといいます。鈴木さんのがんピアサロンには「自分の気持ちを話せるがん体験者に会いたい」というがん患者さんがたくさん訪れるそうです。鈴木さんは、患者さん同士で話したり、がんを忘れる時間をつくることで、もやもやする不安も自然と減っていくのではないかと自身の経験を振り返りました。

患者力をもち、納得して治療に向き合う

長年がん患者さんに向き合ってきた東先生は、患者さんががんに向き合い、納得して治療を選ぶヒントとなる「キャンサージャーニー」という言葉を紹介しました。これは「がんと闘うのではなく、がんと旅をする」考え方です。キャンサージャーニーの中では、医療者とコミュニケーションをとる必要がありますが、多くの人が「医療者に言いたくても言えなかったことがある」「よく理解できないままにハイと返事をした」といった経験があるのではないでしょうか。

だからこそ東先生は「患者力」つまり「自分の人生のリーダーシップを持つこと」が重要だと訴えます。それは「自分の病気を医療者任せにせず、自分事として受け止め、さまざまな知識を習得し、医療者との十分なコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、人生を前向きに生きようとする患者の姿勢」です。 患者力が高ければ、積極的に質問したり、治療や介護に参加できる一方で、患者力が低ければ情報に振り回されたり、医療者に質問できなくなってしまうこともあります。

東先生は「治療は病気への向き合い方の一部、病気は人生の一部」「治療目標は人生の目標の中にあり、その人の生き方の上に治療方針がある」と語ります。治療についてだけ考えるのではなく、自分がどう生きたいかを考えることが大切といえるのかもしれません。(QLife編集部)

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