世界が注目のジャパンC リバティアイランドは「世界一」のイクイノックスに勝てるか

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2023年11月23日 06:21  webスポルティーバ

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"世界最強"のイクイノックス(牡4歳)と、破格の三冠牝馬リバティアイランド(牝3歳)との対決が注目を集める、今年のGIジャパンC(11月26日/東京・芝2400m)。ここでは少し偏って、「がんばれ! リバティアイランド!」といった立ち位置で、リバティアイランドが"打倒イクイノックス"を果たす可能性があるか、探ってみたい。

 この対決、競馬ファンの大方の見立ては、GI天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)を1分55秒2という驚異的なレコードタイムで制したイクイノックスのほうが、七分三分、悪くても六分四分で分がある、というものだろう。

 ただ一方で、こんな見方もある。関西の競馬専門紙記者が言う。

「確かにイクイノックスの、天皇賞・秋のレコード勝ちは大したものです。ですが、そこには"恵まれた"という一面もありました。

 まず、舞台が時計の出やすい高速馬場だったこと。そして、その高速馬場で、逃げ馬が絶望的なハイペースで飛ばしたこと。

 ゆえに、あの時計は額面どおりには受け取れません。いくらか割り引く必要があり、その分、リバティアイランドとの間には、巷で言われているほどの差はない、ということです」

 そうした考察があるとすれば、一見"鉄壁"に見えるイクイノックスの牙城も、つけ入る隙はあるのかもしれない。とりわけ、今回のジャパンCに限っては、なおさらである。

 というのも、イクイノックスには今回、いくつかの懸念材料があるからだ。

 第一に、レース間隔だ。もともとイクイノックスには"詰めて使えない"という弱点がある。

 振り返れば、3歳クラシック第1弾のGI皐月賞(2着。2022年4月17日/中山・芝2000m)には、前年のGII東京スポーツ杯2歳S(1着。2021年11月20日/東京・芝1800m)以来という、異例の長期休養明けで臨んでいる。

 その後も十分な間隔を取ってレースに使われており、皐月賞のあと、続けてGI日本ダービー(2着。2022年5月29日/東京・芝2400m)に挑んでいるが、その時でも中5週の間隔があった。

 それが今回は、天皇賞・秋からわずか中3週と、これまでのキャリアのなかで最短の間隔でのレース出走となる。いくら馬自身が成長し、弱点が解消されているからといって、このレース間隔の短さがイクイノックスの走りに何らかの影響を及ぼしてもおかしくないのではないだろうか。

 それに対して、先の専門紙記者はこう語る。

「(イクイノックス陣営は)最初からこのローテを決めていたし、次にGI有馬記念(12月24日/中山・芝2500m)を使うという話もあるようですから、体質強化にある程度のメドが立っているはず。とすれば、中3週ということが、特に走りに影響することはないでしょう」

 それでも、専門紙記者は「ただ......」と言って、こう続けた。

「リバティアイランドとの比較で言えば、よりゆったりとした間隔でレースに臨めるリバティアイランドのほうが、イクイノックスよりも有利なのは確かです」

 次に挙げられるのは、斤量だ。これは、イクイノックスの懸念と言うより、リバティアイランドが得るメリットと言ってもいいかもしれない。

 なにしろ、イクイノックスの斤量58kgに対して、リバティアイランドはそれよりも4kgも軽い、斤量54kgで出走できるからだ。これは、かなり大きなアドバンテージと言える。

 無論、古馬と3歳馬との間には、体力面や完成度を含めて差があるのは確かだ。しかしながら、その差は旧来の固定観念で見られているほど大きくない、というのも事実である。

 世界最高峰のレースと言われる凱旋門賞でも1997年〜2016年までの20年間で3歳馬が14勝を挙げるなど、同レースでは「斤量で恵まれる3歳馬有利」と言われてきた。そのことから、2017年から3歳馬の負担重量が0.5kg重くなったのは(牡馬が56kg→56.5kg、牝馬が54.5kg→55kg。古馬は1995年から牡馬が59.5kg、牝馬58kg)、古馬と3歳馬との間に大きな差がないことの、ひとつの証拠と言える。

 さらに牝馬も、古き固定観念で言われるほど弱くはない。凱旋門賞では過去15年(2009年〜2023年)で牝馬が延べ8度勝っており、日本のジャパンCでも過去15年(2008年〜2022年)で牝馬が延べ7勝。そのうち、2頭は3歳牝馬である(2012年のジェンティルドンナと2018年のアーモンドアイ)。

 つまり"名牝"クラスであれば、牡馬との、さらには古馬との負担重量の差を味方につけられることは明らか。"三冠牝馬"となって、もはや"名牝"の域にあるリバティアイランドが今回、斤量4kg差という恩恵を受けて、イクイノックスを撃破するシーンは十分にあり得るということだ。

 最後に挙げたいのは、距離適性だ。

 圧倒的な強さを見せた2000m戦から、今度は距離が2ハロン延びて2400m戦となる。この距離延長がイクイノックスのパフォーマンスにどう影響するのか。専門紙記者はこんな見解を示す。

「イクイノックスには折り合いの不安があります。昨年のGI有馬記念(1着。2022年12月25日/中山・芝2500m)でも引っかかっていましたし、前走の天皇賞・秋にしても、先行策に出て折り合っていたように見えますが、おそらくあれは行きたがっていたんでしょう。

 でも、逃げたジャックドールのペースが、自らが最下位に沈むほど速かったですからね。結果、イクイノックスにとっては、鞍上を務めるクリストフ・ルメール騎手の腕もあり、あのハイペースがハマった、という面がありました。

 そう考えると、2400mの距離が向かないとは言いませんが、距離が延びていい、ということはないでしょう。イクイノックスの距離適性は、本質的には2000mくらいがベストではないかと見ています。

 一方、リバティアイランドには折り合いの不安がほとんどありません。東京・芝2400mの適性が、どちらのほうが高いかは明白でしょう」

 このように、イクイノックスには少なくとも前走より、"心配すること"が増えたのは間違いないだろう。

 だからといって、「それゆえ、今年のジャパンCはリバティアイランドが勝つ」と結論づけるのは、早計というものだ。一般的な2頭の評価が、イクイノックスが7対3、あるいは6対4で上回るとされている状況にあって、それがようやく五分五分程度になったに過ぎない。

 そんななか、関西のとある競馬関係者からこんな声が聞かれた。

「この秋のリバティアイランドは、2012年のジェンティルドンナに似ています。ジェンティルドンナは、秋華賞で2着ヴィルシーナとハナ差の接戦を演じました。片やリバティアイランドも、最後にマスクトディーヴァに詰め寄られて、思ったほどの差がつきませんでした。

 しかしその後、ジェンティルドンナはジャパンCで、前年の三冠馬であり、当時"怪物"と称されるほどの強さを見せていたオルフェーヴル相手に、ハナ差ながらきっちり勝利。それを思えば、リバティアイランドも同様に"世界一"のイクイノックスを相手に、最後はきっちり勝ってくれるのではないでしょうか。その期待度はかなり高いです」

 海外からも注目されている今回のジャパンC。日本には"世界一"の馬に勝る若き牝馬がいることを、世界に見せつけてやろうではないか。

 がんばれ! リバティアイランド!

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