生成AI問題への言及が反響、人気イラストレーター・Ixyに聞く真意「今後への進化に懸念を抱いている」

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2023年11月27日 07:00  リアルサウンド

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人気イラストレーターのポストに大きな反響

 今やXなどのSNS上で見ない日がないほど、爆発的に普及しつつある生成AI。こうした生成AIで出力されたイラストについては、プロのイラストレーターから愛好家、ファンまで様々な立場から議論が交わされている。そんな中、Xのフォロワー70万人を抱える人気イラストレーターのIxyが、生成AIについて以下のように言及した。



  賛否あると思うので、こういうポストをするのどうかと思ったのですが、某画像生成AIのことで、僕が無条件で生成AIに賛成していると勝手に解釈されているのが散見されたので、ちょっとだけ。


 


  確かに、いずれ使うことが当たり前にはなっていくだろうなとは思っているし、発言もしたのですけど、現時点の生成AIは一線のクリエイターが使うには印象が悪すぎて、とても使えたもんじゃないと考えております。


 


  法律上問題ないといって嫌がっている方の作品を勝手に学習に放り込んだり、似たようなイラストが生成されたら、もうこの絵師いらないじゃんなどと煽ったりしていい道理は無いのではないでしょうか。


 


  かといって、もちろん技術自体は大変素晴らしいものだと思っているので、きちんとした議論がなされて大多数が納得するルールが整備されて堂々と使えるようになればいいと思います。


 


  見る相手の気持ちを考えれない人間の作品は、自作イラスト、生成イラスト問わず響きません。建設的な議論と未来を望みます。




賛否あると思うのでこういうポストをするのどうかと思ったのですが某画像生成AIのことで僕が無条件で生成AIに賛成していると勝手に解釈されているのが散見されたのでちょっとだけ。…


— Ixy(いくしー) (@Ixy) November 20, 2023



 現在、このポストは90万件表示され、7500件を超える「いいね」がついている。Ixyの発言は賛否両論を呼んでいるが、一部の人には曲解されて伝わっているような印象を受けた。今回の発言の真意について、Ixy本人に直撃した。


生成AIで起こり得る著作権侵害の問題

――Ixy先生は率直に、生成AIについてどう思いますか。


Ixy:僕は、生成AI自体に手放しで賛成しているわけではありません。ただ、生成AIの技術はできてしまった以上は止められませんから、これからも進化は続くと思います。僕のイラストの作風によく似せたAIイラストも出回っているようですが、それを見て、「もうIxyは要らないじゃないか」と言っている人もいます。イラストレーターが雑念を考えたりすると創作に影響が出るのですが、進化があると受け入れたうえで、作業しなければといけないと覚悟しています。


――実際、Ixy先生の絵柄に似たイラストだけでなく、京都アニメーション風とか、『ラブライブ!』風のAIイラストもネット上に出回っていますよね。これらは公式の絵と見分けがつかないものも少なくありません。


Ixy:生成AIは僕がイラストを描く前に、僕と同じようなイラストを出力することができます。これは、重大な著作権侵害に発展しかねないと思います。仮に、生成AIによって万単位で大量にイラストが生成された後、僕が何も知らずに、その一つに似たイメージのイラストを発表したとします。もし、僕の発表前にAIイラストに著作権が認められていたら、どうでしょう。僕が後から真似したと、突っ込まれたりする可能性がありますよね。こうした事態だけは絶対に避けないといけません。


――AIイラストに関する問題は今後相次いで生まれそうですが、著作権関連の問題は間違いなく起こり得ますね。


Ixy:漫画を制作する際に、生成AIを使ってキャラクターデザインのヒントにしたり、背景を制作するなど、創作過程の一部に生成AIを使い、作品として発表するのはありでしょう。しかし、AIイラストの場合は、パッと出力されてしまうのです。これに著作権を認められてはさすがに困ります。漫画とイラストはよく同一視されるのですが、使い方にここまで違いがあるのですから、一緒くたにするのはさすがに暴論だと思います。


クリエイターの“なりすまし”が出現する可能性も

――今のまま放置しておくと、深刻な著作権侵害が起こりそうです。といいますか、現に起こっているようですが、対策は後手に回っている印象を受けます。


Ixy:繰り返すようですが、生成AIの技術が凄いことは、嫌でも認めないといけないんですよ。言葉を入力したら、それなりのものが出てくる技術は純粋に凄いですから。ただ、繰り返すようですが、生成AIが出力したイラストに著作権を与えるとなれば、話が変わってきます。絵柄のアイデンティティーは、クリエイターにとってもっとも重要なものでしょう。それをコピーしたものが瞬時に作成できるなら、例えばIxy風のAIイラストを使って「これはIxyが描いた作品ですよ」と偽り、悪用される可能性もあります。ネット上だと、作家のなりすましなども出現しそうで、心配です。


――イラストレーターや漫画家のなりすましは、Xでも以前から問題になっていますね。ただ、これまでのなりすましは既存のイラストを使ってそれっぽく振る舞うパターンが多かったのですが、AIを使えばまったく新しいイラストを使って偽装できる。これは社会問題になりそうです。


Ixy:僕は、このまま生成AIのユーザーが、法で規制されていないからといってめちゃくちゃなことをしていくと、ゆくゆくは使用禁止になるかもしれないと思っています。ハリウッドで議論になったディープフェイクの技術や、岸田総理に似せたAI動画は世間を騒がせていますよね。AIイラストも誰かが大問題を起こしそうで、不安なのです。


――もちろん全員ではありませんが、AIイラストを出力している人のXを見ると、クリエイターを煽るポストをしている人も目立ちます。


Ixy:こういったマナーが悪い人のせいで、既に、SkebではAIイラストの投稿は禁止されています。それなのに、そのSkebでのAI検閲を突破できるという記事も某所で出ていて、いたちごっこのような状態が続いています。また、DLsiteでは、AIイラストを使ったCG集などは出せなくなっているんですよ。


マナーが悪いユーザーのせいで規制される可能性も

――企業側がAIイラストについて、自主規制を行うようになったわけですね。


Ixy:さすがに、これは規制されても仕方ない行動だし、現にそうしたトラブルが起こっているわけです。このままだと、生成AIの使用そのものが禁止される可能性もあるので、ユーザーのマナーの是正は必要だと思います。「法的に問題ないのだから何が悪いんだ」と頭ごなしに怒るのではなく、現行のクリエイターの活動を阻害せず、住み分けができる使い方の話に注力したほうがいいのではないのかと。とにかく、対立を煽るコメントをするのは双方にとって良くないと思います。


――問題が山積みですね。Ixy先生は、今後、AIイラストをどう扱っていくべきだと考えますか。


Ixy:生成AIで大量生成したものには、著作権はつけない。または、一時的に認めるけれども、人が描いたものならば、後から似たものが発表されても著作権を認める。自分が思いつくのは、このくらいでしょうか。とにかく、生成AIのスピードで大量にイラストが出力され、それぞれに著作権があるとなってしまうと、クリエイターの創作への影響が深刻になってしまいます。


――おっしゃる通りだと思いますし、Ixy先生がイラストレーターの業界全体の行く末を、不安視されていることがわかります。


Ixy:一部の過激な生成AIユーザーのせいで、生成AIを創作の一部に使いたいという人にも、迷惑が掛かっているのではないのでしょうか。一方で、生成AI反対派にも極論過ぎる人もいますし、今のXって、極論が横行して暴力的な人ばかりになっている気がします。僕のもとにも様々な意見が寄せられますが、こういうポストに反論したり、引用リポストをすると火の粉が降り注ぐので、沈黙が最適解なのかもしれません。ただ、現状のマナーの悪さを見ていると、言わずにはいられませんでした。


――Ixy先生が今回のポストに込めた思いが伝わってきます。


Ixy:黙っていると、なし崩し的に便利なツールが使えなくなったり、著作権侵害が起こって規制が入ったりしそうですから。ただ、僕は今後、こういう声明を出すことはないと思います。ですが、生成AIとAIイラストの動向は注視していくつもりです。


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