久保建英、セルヒオ・ラモスに引導を渡す 現地紙はチームプレーヤーとして軒並み高評価

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2023年11月27日 17:01  webスポルティーバ

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 試合終盤、時代の転換期を象徴する光景があった。

 久保建英(22歳、レアル・ソシエダ)は、セルヒオ・ラモスによって味方のパスをカットされるも、それを即時奪回し、相手ひとりを外して際どいシュートを放っている。その5分後、久保は自陣奥深くでタッチラインからボールを出さずに残し、味方の連係からカウンターに入ったところ、入れ替わられかけたセルヒオ・ラモスにファウルを受け、イエローカードを誘発した。さらにその1分後、セルヒオ・ラモスのビルドアップでのパスを誘い、コースを読んで奪い返すと、カウンターで置き去りにした。左足で打ったシュートは最後、わずかにパワーが足りなかったが......。

 37歳になるセルヒオ・ラモスは、現役センターバックとして比類のない経歴を誇る。レアル・マドリード時代には5度のラ・リーガ優勝、4度のチャンピオンズリーグ優勝、4度のクラブワールドカップ優勝を経験し、UEFAの年間ベストイレブンを9度も受賞している。スペイン代表としても、EURO2008、EURO2012で欧州制覇に貢献し、2010年南アフリカW杯では世界王者に輝いた。

 ダイナミックでエネルギッシュな攻守は革命的だった。パワー、気合、老練さで相手を凌駕。マーキングだけでなく、カバーの集中力も優れ、ビルドアップでは強気にボールをつけることができた。何より、絶対的な勝者だった

 久保がそのセルヒオ・ラモスを手玉に取っていた――。

 11月26日、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は本拠地レアレ・アレーナで不調に喘ぐセビージャを迎え撃ち、2−1と勝利を収めている。

 3分、アンデル・バレネチェアがFKから空いていたニアサイドを目ざとく狙い、必死にカバーしたGKが自らの足でゴールに入れるオウンゴールになった。22分にはウマル・サディクが30メートル近い位置から豪快なロングシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。往年のジョージ・ウェアのようなアフリカンパワーだった。

 シリア戦後の調整がうまくいったようで、久保は先発で出場し、質の高いプレーを見せている。

【試合を通し相手を翻弄】

 序盤から戦術的なタスクを完ぺきに遂行。セビージャの攻撃の出どころであるセルヒオ・ラモスをプレッシングで封じていた。これがボディーブローのように響き、相手に攻撃で先手を取らせなかった。

 攻撃では右サイドで左サイドバック、アドリア・ペドラサに悪夢を見せている。食いつかせてからの電撃的スルーパス。飛び込ませて奪わせたかと思わせて、再び取り返し、鋭く切り込む。さらにオフ・ザ・ボールの動きで一瞬背後を取ってスルーパスを受けると、あえて追いつかせた後でセルヒオ・ラモスと並べ、その間からシュートを打った。

 左アタッカーのルーカス・オカンポスがペドラサの援護でプレスバックしてきたが、これによって相手の攻撃を手薄にした。

 ゴール、アシストはなかったが、久保に対する評価が高いのは当然だろう。

「ブライス(・メンデス)、(アマリ・)トラオレとはピッタリと調和していた。サディクを見つけ、深いパスも通していた。カットインする動きで、バックラインを破壊。すべていいプレーだった、Descabelloを除いては......」

 スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』は、久保のプレーにそう寸評を付けている。「Descabello」は闘牛用語で、第一頸椎と第二頸椎の間の急所を剣で突き刺し即死させる技、もしくはその刀剣を指す。つまり、とどめを刺せなかったということだ。

 スペイン大手スポーツ紙『アス』も、「相手守備陣のバランスを崩していた」、『マルカ』も、「久保、バレネチェアが両サイドでスペースを得ることでカウンターの脅威を与え、相手の攻撃を難しくしていた」とチームプレーヤーとしての貢献を高く評価していた。決定機を逃したことは指摘しつつも、星二つ(0〜3の4段階評価)で、チーム1、2を争う高評価だった。

 セルヒオ・ラモスを翻弄する姿は頼もしかったと言えるだろう。全盛期を過ぎたとは言え、錚々たるアタッカーを抑え込んできた歴戦の強者であることは間違いない。その番人を"制圧"する姿には、新時代の輝きがあった。

 欲を言えば、トップがサディクでなかったら、もっとコンビネーションは活発になっていただろう。パスのリターンが来ていたはずで(サディクはパワーがあり、スーパーゴールも決めたが、昨シーズンのアレクサンダー・セルロートのようなポストワークはできない)、セルヒオ・ラモスをもっとわかりやすくKOできていただろう。ミケル・オヤルサバルが代わりに入ってからの数分で混乱を与えていたのは、その証左だ。

 久保は1試合1試合、着実に評価を高めている。本人は数字もほしいだろうが、やり抜くことで結果もついてくる。試合を通してやり込められていたセルヒオ・ラモスが、最後は退場を命じられた。

<セルヒオ・ラモスに引導を渡す>

 その抒情的光景に、サッカーの醍醐味があった。

 次の試合は11月29日。チャンピオンズリーグ第5節、レアレ・アレーナでザルツブルク戦だ。

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