「完乗」に認定機関やルールはあるのか? 鉄道ファンの憧れ、「全線完乗」のトリセツ

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2023年11月30日 21:51  All About

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乗り鉄がこぞって目指す目標といえば、全線完乗。特定の鉄道会社の路線全てを乗りつぶす全線完乗、JR全線完乗、そして日本の鉄道全線完乗とスケールは大きくなっていく。どのように目指すのがいいのだろうか。紹介しよう。
全線完乗という「乗り鉄」なら目指したい目標がある。特定の鉄道会社の路線全てを乗りつぶす全線完乗、JR全線完乗、そして日本の鉄道全線完乗とスケールは大きくなっていく。どのように目指すのか? 何かルールなどはあるのだろうか?

「全線完乗」とは

筆者がJR全線完乗を達成した時の路線図。苦労して乗ったのに、廃線になってしまって反映されていない路線が複数あるのは残念!

収集でもパーフェクトを目指すコレクターがいるのと同様、鉄道趣味のうち「乗り鉄」と呼ばれる人の目標の1つが全線完乗であろう。例えば、いつも通勤や通学で乗っている電車の行き先を見ていて、郊外の終点まで行ってみたいと思ったことはないだろうか?

特に関心がなければ、それはそれで「まとも」なのだが、用事はないけれど、一度くらいどんなところか訪れてみたいと思うならば、少しは「鉄分」があるといえるかもしれない。そして、それを実行に移し、ある路線の起点から終点まで乗り通したなら、それは、その路線の「完乗」といえるのだ。

「完乗」に味を占め、用もないのに特定の鉄道会社の全路線を乗りつぶしてみようと思うなら、これは立派な「乗り鉄」といえるだろう。東京メトロ、東急電鉄、西武鉄道など手頃な鉄道から「完乗」を目指すのがいいかもしれない。

まずは、JR全線完乗を目指そう

それでは満足できず、もっとスケールの大きなことをしたくなったら、まずはJR全線完乗を目指そう。日本の鉄道の全てを乗りつぶすのは、かなりハードルが高いので、とりあえずはJR全線完乗を目標としたい。

とはいっても、北海道から四国、九州まで全線で2万キロに若干満たないくらいの距離なので、それなりに大変でやりがいはあると思う。幸いJRの旅客鉄道は6社あるので、JR北海道、JR東海、JR四国といった、距離がそれほど多くないところから乗りつぶしていくのがいいかもしれない。

国鉄・JR全線完乗の先駆者たち

国鉄全線完乗までの過程を記した不朽の名著『時刻表2万キロ』

JRの前身である国鉄時代、全線完乗を成し遂げた人は何人もいるけれど、世間で一躍有名になったのが『時刻表2万キロ』という著書を出し、国鉄全線完乗を成し遂げるまでのプロセスを書いた宮脇俊三氏であろう。

彼は、出版社の取締役という要職にありながら、文字通り寸暇を惜しんで完乗を目指した。そして、1977年、国鉄足尾線(現・わたらせ渓谷鉄道)の末端区間である足尾〜間藤を走破して、国鉄全線完乗2万800キロを達成したのである。

この本はベストセラーとなり、「全線完乗」という趣味が世間の注目を集めた。これにあやかって、国鉄は「いい旅チャレンジ20000km」というキャンペーンを始め、それは10年ほど続いた。賞品もあったので、多くの人がチャレンジし、10年間で1500人ほどが完乗を達成したとのことである。
関口知宏氏がJR全線完乗を達成した根室駅

2005年には、タレントの関口知宏氏がNHK-BSの番組「列島縦断 鉄道乗りつくしの旅〜JR20000km全線走破〜」で、前年の「列島縦断 鉄道12000キロの旅 〜最長片道切符でゆく42日〜」と合わせてJR全線完乗を達成した。春と秋合わせて3カ月ほど連日放送していたので、JR全線完乗が広く知れわたったと思われる。

全線完乗に認定機関やルールはあるのか?

ところで、全線完乗にはどのようなルールがあり、どのように認定されるのだろうか?

実を言うと、全線完乗認定委員会のような公的な機関は一切ないし、公式ルールなるものもない。したがって、JR全線完乗を達成したからといって、JR各社から表彰されたり、賞品、賞金がもらえるなどということは一切ない。あくまで、自己満足のための活動なのだ。

JR各線を丹念に起点から終点まで乗りつぶし、それを全線にわたって行えば完乗となるのだ。

証拠はどうするのか? 「いい旅チャレンジ20000キロ」のときは、起点駅と終着駅の駅名標をバックに挑戦者が自分の姿を入れた写真を撮って事務局に送付して認定を受けていたが、これだって全線を確実に走破した証拠とはならないだろう。

前述した宮脇俊三著『時刻表2万キロ』にこんな一節がある。

「証拠になるものはとってあるの?」と聞かれた。
「証拠ってなんですか」
「写真とか切符とか」
「そんなものはありませんよ」
「ないのですか」
「自分自身のためですから」
「なるほどね」

その通り、お金でも名誉のためでもなく、あくまで自己満足なのだ。それゆえ、乗っていないのに乗ったなどと嘘をついてもしょうがないだろう。

車窓が見えない夜間の乗車は、どうする?

夜間の乗車をどうするか?

特にルールはないけれど、「サンライズ瀬戸・出雲」のような夜行列車に乗って寝ているうちに目的地に着いてしまったとか、車窓が見えない夜間に通過するのはカウントしないという人は多い。夜明けから日没までというルールを課している人もいる。

もっとも厳密なものではないので、多少のことは本人次第だ。上越線の水上〜越後湯沢のように上下線で車窓がはなはだ異なる区間(上り線にのみループ線が2カ所ある)については、上下線両方に乗ると決めている人もいる。

中には、全駅を認識するために各駅停車にしか乗らないという人もいるけれど、現在では、普通列車が極めて少なく特急列車ばかり走っている区間もあるので、各自のルールでいいのではないだろうか。

手始めに首都圏の路線から乗ってみる

JR山手線は一周しなくても全線完乗できる!?

全線完乗の手始めに、身近な路線から乗ってみよう。首都圏在住の人だったら、まず山手線を一周してみる。そして、JRすべての営業路線名とその区間、営業キロが掲載されている一覧表に乗車実績を記入する(国土交通省監修の「鉄道要覧」に基づいた資料)。すると、山手線の全区間は一周していないことに気づくだろう。

「山手線 品川〜渋谷〜新宿〜池袋〜田端 20.6キロ」となっているのだ。

では、あとの半周はどうするのか?

「東海道本線 東京〜品川 6.8キロ」
「東北本線 東京〜田端 7.1キロ」

このように分けて記録するのが正解だ。

次に、京浜東北線の大宮から横浜まで乗る。ところが、一覧表には、京浜東北線という文字はない。京浜東北線はあくまで電車の系統の通称であって、正式の路線名ではないからだ。

これは「東北本線 田端〜大宮 23.2キロ」「東海道本線 品川〜横浜 22.0キロ」、このように計上する。田端〜東京〜品川は、すでに山手線として乗っているから、未乗ではない。

ところで、京浜東北線と並走する上野東京ラインでは、上野を出ると京浜東北線とは離れて尾久駅を経由する。これは、東北本線(尾久経由)の別線として「東北本線(尾久経由) 日暮里〜尾久〜赤羽 7.6キロ」として新たに計上する。何だかたくさん乗った割には報われないような気がするが、「鉄道要覧」に基づく完乗の決まりごとである。

東京駅の地下から横須賀線の電車に乗るとどうなるか?

品川までは地下の別線を走っているけれど、この区間は東海道本線ということで、すでに乗車した区間と見なす。品川からは東海道新幹線に沿って走る。

この区間は、もともと品鶴線という貨物線だった。途中に西大井、武蔵小杉、新川崎という東海道本線にはない駅を通っていくので、東北本線(尾久経由)同様、「東海道本線(品鶴線) 品川〜鶴見 17.8キロ」として新たに追加。

「東海道本線 鶴見〜横浜」は、京浜東北線乗車ですでに計上しているので記入しない(横須賀線の電車は鶴見駅には停車しないけれど、区間のくぎりとしては、便宜上、鶴見駅で分けている)。

「東海道本線 横浜〜大船 17.7キロ」「横須賀線 大船〜久里浜 23.9キロ」、この2つを新たに追加する。本来の横須賀線とは、大船から久里浜までに過ぎないのだ。

駅などで、一般に呼ばれている路線名と鉄道要覧に記されている区間とは異なっていることが多々あることに注意したい。まだまだあるけれど、とりあえずはこのあたりでやめておこう。

乗車記録は、アナログからデジタルの時代へ

乗りつぶし集計サイトでは、自動的に一覧表を作成してくれる

乗りつぶした区間を記録するには、かつては鉄道路線図を用意して、乗車区間を赤線でなぞり、乗車日、乗車距離を表にして電卓で計算するという作業を行っていた。その後、乗車距離はエクセルで計算できるようになり、計算ミスは激減した。

現在では「乗りつぶしオンライン」のようなサイトがあるので、登録しておいて、各線の乗車後すみやかに記載すれば、乗車距離の合計や走破率などを瞬時に計算してくれるので便利だ。

「全線完乗」とがどんなものか興味が湧いたのなら、試しにこれまで旅行や出張、帰省、法事などで乗車した距離を計算してみると現状が分かって意欲が湧くであろう。あるいは意外に乗っていないから完乗を目指すのはやめようとか、あと2000キロくらいなので頑張ってチャレンジしてみようとか全線完乗についてのスタンスが定まるかもしれない。

個人的なJR全線完乗の報告

筆者がJR全線完乗を達成した日南線の志布志駅

筆者は、2023年11月15日に、日南線の終点・志布志駅(鹿児島県志布志市志布志町志布志)に降り立った瞬間にJR全線完乗を達成した。しかし、これで終わりではない。2024年3月に北陸新幹線(金沢〜敦賀)が延伸開業するのでタイトル防衛のためには、開業後すみやかに乗らなくてはならない。

さらに、JR以外の私鉄、第3セクター鉄道、路面電車、ケーブルカーなどに未乗区間が少なからずある。次の目標は、日本全国の鉄道全線完乗なのだ。まさに、「線路は続くよ、どこまでも」。「乗り鉄」趣味に終わりはない。
線路は続くよ、どこまでも(宗谷本線)


野田 隆プロフィール

名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。All About 鉄道ガイド。
(文:野田 隆(旅行作家))

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