【漫画】奇怪な因習といびつな兄妹愛ーーSNSで公開された創作漫画『キツネツキ』にゾワリ

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2023年12月01日 09:21  リアルサウンド

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漫画『キツネツキ』より

 古い慣習が残った地域を舞台にした“因習村系”の作品は、文学においても漫画においても多くのファンを抱えている。11月上旬にX(旧Twitter)に投稿された創作漫画『キツネツキ』は、部外者が見れば奇怪な因習のある「信田家」を舞台にした、いびつな兄妹愛が胸をザワつかせる物語だ。


(参考:漫画『キツネツキ』を読む


 信田家に嫁いできた楓は、ある日、夫の陽平が「こやーん」と鳴くことしかできない動物のようになってしまったことに困惑する。楓は病院に連れて行こうとするが、家族たちは信田家に言い伝えられる「キツネツキ様」だとして、血縁のものだけで世話をするという。疲弊した楓が家を出ていくなか、陽平の妹・葉子は兄の頭を撫でてーー。


 普段はWebサイトやアプリのデザイナーとして働きながら、仕事の合間に漫画制作に取り組んでいるという作者のめそめそさん(@mesomesopom)。もともとイラストレーターのサイトを見て回ることが好きで、20歳ごろにペンタブを購入して自分もイラストや漫画を描き始めたと振り返る。そんなめそめそさんに、いい意味で後味が悪い本作を描いた経緯など、話を聞いた。(望月悠木)


■創作に苦戦していた時期に描いた作品


――なぜ『キツネツキ』を制作しようと思ったのですか?


めそめそ:実は5年ぐらい前に描いた作品なんです。当時は商業作家を目指して何人かの編集さんと一緒に漫画を作っていました。ただ、どれもあまりうまくいかず、何年もずっと悩みながら漫画を描いていました。


――苦悩が続いていた時期だったのですね。


めそめそ:「商業だから読者は共感しやすいかったり、わかりやすい感情だったりを描かないといけない」という思い込みがあり、それっぽい内容のものを背伸びして描いていました。今思えば「あまり向いてなかったんだろうな」と感じています。そんな中、「一旦そういうものから離れて、自分の好きなものだけで漫画を描いてみよう」と思って描いた作品になります。


――古い慣習が根付いている家・地域が舞台の作品でした。


めそめそ:もともと古い日本的な世界観が好きだったのでそこから膨らませていきました。家族構成や関係図については川上弘美さんの短編小説『蛇を踏む』(文春文庫)内の『消える』というお話からの影響が大きいです。その話では兄がある日消えて、家の中に存在はしているが見えない存在になってしまいます。ただ、他の家族は特に気にしておらず、妹は時々姿が見えるようになる兄と会話をします。同作のように兄と妹の関係を軸に話を組み立てていきました。


■「何かを犠牲にしても独占したい」


――“キツネツキ”の言い伝えは、どのようにして考え着いたのですか?


めそめそ:参考にした特定の物語があるわけではありません。ただ、日本の昔話などはモチーフとして好きなので時々本で調べています。動物が人に恩を返したり、人と動物の交流したりなどの話が結構多く、特に動物が人に化けて出る話は一番好きです。“キツネツキ”はその辺りの影響が大きいのかもしれません。


――「こやーん」と泣くことしかできないなど、どこか不気味な症状でした。


めそめそ:こっくりさんなどの狐憑きのイメージからが大きいと思います。“兄が自分の意思では何もできなくなり、妹にとって優位性がある状態”という関係性が描きたかったの症状を練るうえで意識しました。


――“陽子が大好きだった兄を奪い取ることに成功した”というヤンデレ的なラストでした。


めそめそ:陽子目線で言えばハッピーエンドです。しかし、倫理観や相手の気持ちを抜きにして、妹目線ではある意味征服欲みたいなものを満たすことができ、とても達成感がある終わり方にしました。気持ち悪いラストですが、私の中にも「何かを犠牲にしても好きなものを独り占めしたい」という願望があるのかもしれません。ちなみに、兄が妹の膝の上で涎を垂らして泣くシーンがありますが、ここは「最初から描いてみたいシーン」としてイメージがありました。


――最後に漫画制作における目標など教えてください。


めそめそ:仕事があるため作品を出すペースが遅いことに悩んでいます。もう少しページ数が少ない漫画を描いたりなどして公開のペースを上げたいです。また、『コミティア』などの即売会に参加していく予定なので、年2回ぐらいは出展したいです。


(取材・文=望月悠木)


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