横浜FCは本当に「弱かったから」降格したのか 報いを受けた「弱者の兵法」

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2023年12月04日 11:01  webスポルティーバ

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 12月3日、鹿島。横浜FCは敵地に乗り込んで鹿島アントラーズと戦い、力及ばず2−1と敗れている。すでに実質的には最下位での降格は決まっていた(勝利し、得失点差12をひっくり返さないと柏レイソルを逆転できなかった)わけだが、来季のJ2が決定した。

<J2からの昇格チームで、戦力的に非力だった。開幕後にJ2得点王のエース、小川航基の移籍もダメ押しに......>

 横浜FCの降格は、そう言って片づけられるのだろう。下馬評も低かった。開幕前から降格の最有力候補に挙げられ、そのとおりになっただけとも言える。

 しかし、横浜FCは予算的にJ1最下位クラブではない。たしかに下位ではあるが、卑屈になるほどではなかった。今年6月に小川を失ったのは痛手だが、戦績だけで言えば、それ以降のほうが勝ち点を稼いでいる。

 本当に彼らは「弱かったから」降格することになったのか。

 今年5月、筆者はこんなタイトルの記事を書いている。

「横浜FC、森保ジャパンスタイルで降格圏脱出 開幕10戦勝ちなしで生まれた『背水の覚悟』とは?」

 10戦勝ち星がなかった横浜FCは、第11節にアルビレックス新潟を下し、ようやく勝ち星を挙げた。そこから急速に挽回。第14節、本拠地ニッパツで強豪、川崎フロンターレを2−1と下した試合の後の記事だ。

 横浜FCは開幕以来、主体的にパスを回して優位に試合を進める戦いを目指していたが、布陣もコンセプトも変更していた。実質5−4−1の人海戦術で、守備を分厚くしたカウンター戦法に切り替えた。前線からのプレッシングよりも、うしろでブロックを作り、受け身で守りながら相手のミスを誘い、勝機を探る"弱者の兵法"だった。

「いつか点が入る」

 川崎戦がそうだったが、敵のそうした甘さに付け込むのだ。

 構造・概念自体は、カタールW杯で森保一監督率いる日本代表がドイツ代表、スペイン代表という強豪から金星を挙げた戦い方と酷似していた。5−4−1で人垣を作って守りを固めてじっと耐えながら、ウイングバックで奇襲を仕掛け、前線のアタッカーに一撃を託す。ドイツ、スペイン戦では、三笘薫、堂安律が決定的仕事をやってのけた。圧倒的に攻める敵の油断を突いた形だ。

【勝てる相手に勝てなくなった】

 それはひとつの戦い方と言える。だが、"必勝の仕組み"にはならない。あくまで相手のミス次第という偶発性が強く、森保ジャパンが格下と見られるコスタリカに呆気なく敗れたのは、その証左だ。

 つまり、勝てるべき相手に勝てなくなる。短期決戦のチャレンジャーだったら、その魔法で乗りきれるかもしれない。しかし、リーグ戦という長期戦では必ずぼろが出る。

 横浜FCは攻められる展開になるほど、"弱者の強さ"を発揮した。第22節のヴィッセル神戸戦は、約3割のボール支配率で2−0と勝利。第25節の横浜F・マリノス戦は、先制点を浴び、圧倒的に攻められながらも、なんと4−1と逆転で勝った。第30節のFC東京戦、第32節のサガン鳥栖戦も展開は同じだ。

 一方、互角の相手には、"弱者の兵法"が通じなかった。ボールを持たされてしまい、むしろ苦しんでいるように映る。ボールを握って、つなげる強度が単純に低い。たとえば天王山と言われた前節の湘南ベルマーレ戦も、リードされたあとに慌てて反撃に出ようとして、ビルドアップをたびたびひっかけられ、危機に陥っていた。パワープレーしか活路がなく、なすすべなく敗れたのだ。

"弱者の兵法"は劇薬である。一定の効果は望めるが、それに拘泥していくことで、根源的なサッカーの力は弱まる。よほど監督に求心力があるか、もしくはチームとしてのスタイルでなかったら、ポゼッションを半ば放棄することは「報いを受ける」ことになる。サッカーボールを蹴ることは、そのものが選手にとってはエネルギーの元であり、それを手放すことになるのだ。

 たとえばアトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネ監督のように、鉄の意志で「勝つだけが正義」に突っ走れるなら、違うフェーズの戦術になる。徹底的なリアクション戦術と猛攻を仕掛ける時のスイッチを切り分け、そのために戦闘力の高い選手を集める。それによって、堅固なディフェンスと斧のようなカウンターを武器(森保ジャパンに三笘がいたように)に"弱者の兵法"は"強者の軍略"となるのだが......。

 苦肉の策だった"弱者の兵法"でも、横浜FCが残留できた可能性はあった。「あそこで引き分けていれば」「あそこで勝っていれば」と、いくらでも"たら・れば"は成り立つ。僅差での勝負だったのは間違いない。

 しかし、前述したように"弱者の兵法"は湘南との天王山で限界を示した。湘南が非力ながら敵陣でプレーしようとしたのとは対照的で、必然の敗北だった。京都サンガ、ガンバ大阪、柏レイソルなど、残留争いの直接ライバルとの試合でも、同じ土俵に引きずり込まれると劣勢に立って、勝ち点を稼ぐことができなかったのだ。

 最下位での降格。例年だったら、もっと早くに"審判"は下されていたはずだ。"弱者の兵法"は彼らを弱くしたのだ。

 横浜FCは来季、J2をどのように戦うのだろうか。

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