「な、なんだってーーーーー!!?」のひみつ マンガに「専用フォント」が必要な理由

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2023年12月04日 18:01  ITmedia NEWS

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マンガでお馴染みの「な、なんだってーーーーー!!?」

 11月16日に開催された「Adobe MAX Japan 2023」にて、新しい日本語フォント「貂明朝アンチック」が公開された。Adobe IDがあれば、だれでも無料で利用できる。


【詳細はこちら】アドビが公開した「マンガ専用フォント」とその使い方(画像14枚)


 当日は記者向けの説明会で、このフォントを開発したAdobe Type プリンシパルデザイナーの西塚涼子氏自ら、このフォント開発の経緯などが説明された。筆者もPC歴はそこそこ長いが、フォントを開発したという人にお目にかかるのは初めてである。


 元々の「貂明朝」は、明朝体の新しいスタイルとして2017年にリリースされている。翌年には貂明朝をベースに、長文でも読みやすいフォントとして「貂明朝テキスト」をリリースした。そして今年登場した「貂明朝アンチック」は、マンガのセリフに特化した新フォントとして3たびのリリースとなった。


 なぜマンガ専用のフォントが必要なのか。その理由を明らかにしてみたい。


●なぜマンガ専用のフォントが必要なのか


 我々日本人にとっては馴染み深いマンガなだけに、フォントに特別注意を払ってこなかったが、よくよく見ると、ひらがなとカタカナは明朝体、漢字だけはゴシック体で構成されている。皆さんもお手持ちのマンガを、今一度ご覧になっていただきたい。これに気がついていない人は多いと思う。


 マンガのセリフで、いったいいつ頃からこうした明朝とゴシックの交ぜ書きが行なわれるようになったのかは定かではないそうだが、かつて活字を拾ってセリフを切り貼りしていた時代からすでに行なわれていた表現手法だという。恐らく漢字の視認性の良さや、当時の印刷技術と紙質では、明朝体の漢字特有の細い横線の刷りに不安があったからだろうと思われる。


 現在ではこうしたマンガ独自の表現手法のために、モリサワなどから専用フォントが出ている。このため、貂明朝アンチックの登場によって既存のワークフローまで変わることはないだろうと予想される。Adobeでは、商業誌に掲載されているプロの漫画家以外のクリエイター、昨今はSNSにマンガを投稿するアマチュアも多いが、そういう人のために無償で利用できるマンガ向けフォントとして開発した。ゆくゆくはこういうクリエイターが商業誌デビューした際にも、スムーズに移行できるだろう。


 貂明朝アンチックを利用するには、Adobe Creative Cloudのホームから「Adobe Fonts」を選択するか、Adobe Fontsのサイトへ行って貂明朝アンチックを検索する。「ファミリーを追加」をクリックすると、貂明朝アンチックの6ウェイトがアクティベートされる。


 Adobe製品以外でも使いたい場合は、Adobe Creative Cloudの「アプリ」からリソースリンクの「フォントを管理」をクリック。クラウドダウンロードのアイコンをクリックして、OSにインストールする。


 Adobeでフォントが扱えるツールならどれでも使えるが、他社のアプリから使用するためには一度アプリやOSを再起動して、フォントのデータベースを更新させたほうがいいだろう。


 貂明朝アンチックは漫画用ということで、横書きにも縦書きにも対応する。全部で6ウェイトもあるのは、フォントファミリーとしてはかなり多い。Heavyまで用意されているので、書籍の表紙などにも利用できるだろう。


 無料デザインツール「Adobe Express」と合わせてご紹介しようと思ったが、調べてみるとAdobe Expressは縦書きをサポートしていないようだ。そこで今回はAdobe Photoshopで試してみる。


●「な、なんだってーーーーー!!?」のひみつ


 貂明朝アンチックは、普通に文字をタイプして入力するだけで、自動的にかなは明朝体で、漢字はゴシック体に変換される。ただ、マンガには独特の文字表現がある。例えば「あ」に濁点を追加した「あ゛あ゛ッ」といったセリフだ。通常は「あ」と「゛」を入力し、その間をカーニングで詰めて1文字であるかのように表現することになるだろう。


 一方で貂明朝アンチックには、こうした表現を行なう為の濁点と半濁点文字がデザインされている。日本語キーボードを使ってかな入力している方は、「あ」と入力したあとに「゛」をタイプすると、1文字としてデザインされた「あ゛」が入力できるはずだ。


 あいにく筆者は英語キーボードでローマ字入力なので、別の方法をご紹介しておく。MacOSの話で恐縮だが、メニューバー右上にある日本語入力アイコンをクリックして、「絵文字と記号を表示」を選択する。すると「文字ビューア」というウインドウが開くはずだ。これは入力ツールがApple純正でもATOKなどのサードパーティツールでも共通で使える。


 このウィンドウの左上の「…」をクリックして、「リストをカスタマイズ」を選択。現われたウィンドウから「コード表」を展開し、「Unicode」にチェックを付けて「完了」をクリックする。


 すると左側の文字一覧の一番下に、「Unicode」が追加されているはずだ。これをクリックするとUnicodeの文字が表組みで表示されるので、左の数字「3090」行の9に「゛」が、同じ行のAに「゜」が登録されている。これらをクリックすると、右側のプレビュー欄に「お気に入りに追加」というボタンがあるので、これを押してお気に入りに追加しておく。


 あとは利用したいアプリの文字入力時に、「あ」と入力したあと、「文字ビューア」の「お気に入り」に登録された「゛」と「゜」をダブルクリックすると、「あ゛」が入力される。


 ポイントは、「あ゛」全体で1文字になったフォントが変わって入力されるということだ。濁点だけ消そうとしても文字全部が消えるだけなので、ご注意願いたい。頻繁にこれらの文字を入力したいという人は、出てきた「あ゛」をコピペして、「あてんてん」などとして単語登録しておくと良いだろう。


 ほかにもマンガ特有の表現で、長い音引きがある。「な、なんだってーーーーー!!?」みたいなヤツだ。一般のフォントでは、音引きをいくつ追加しても切れ切れの破線になってしまうわけだが、貂明朝アンチックでこれを入力すると、1本に繋がった長い音引きとなる。


 これは、最初の1文字は書き出しの部分に「飾り」があるが、連続で入力した2つめ以降は前後に飾りのない音引きが入力される。最後の音引きは、先頭は飾りなし、末尾のみ飾りありのフォントが入力されるので、全体で繋がった1本の音引きに見えるというわけである。これは音引きだけでなく、波線でも同様の処理が行なわれる。


 もう1つマンガ特有の表現に、「!」や「?」マークの連続という表現がある。これも一般のフォントで連続すると幅がどんどん広くなってしまうだけだが、貂明朝アンチックで連続入力すると、複数が1文字となったフォントに変換される。ただし!や?は全角入力になっている必要がある。


 どんなバリエーションがあるかは、Photoshopではメニューの「書式」- 「パネル」 -「字形パネル」を開き、「全ての異体字」を選択して一番下までスクロールすると、このバリエーションを確認する事ができる。


 マンガ特有の表現は、一般的な日本語表記から外れるところが多いが、それがゆえに非日常を表現することが可能なのであり、こうした言葉の「遊び」が奥行きのある文化を形成するエンジンとなる。これまでは個別に文字のカーニング等で時間を変えて形成していたものが、フォントを選び変えるだけで可能になるということで、相当な省力化になることだろう。またフォント自体も美しく、読みやすいものに仕上がっている。


 マンガという文化から生まれた貂明朝アンチックだが、これからは「文化のゆりかご」として長く使われることだろう。


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